ファーストリテイリングは売上高5兆円を達成できるのか:巨大アパレルの強さ(後編)(2/3 ページ)
ユニクロなどを展開するファーストリテイリングは、2020年度に売上高5兆円の目標を掲げている。ハードルの高い数字に思えるが、実現する可能性はあるのか。流通コンサルタントの齊藤孝浩氏に話を聞いた。
売上高5兆円は達成できるのか
――ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、2020年度に売上高5兆円という目標を掲げています。2014年8月期の売り上げは1兆3829万円となっていますが、その達成は現実的といえるのでしょうか?
齊藤: 正直言うと、私はかなり難しいと思っています。5兆円という規模を達成するということは、世界一のアパレル企業、ファッション専門店になるということ。それを実現するためには、2020年度までに毎年海外で500店舗を出店しなければならない。資金面で出店することは可能ですが、利益を出せるところに出店することができるか。
さらに店舗を運営できる店長を育てることができて、初めて名実ともに達成できるのではないでしょうか。これまでのペースで、年間500店舗の人の育成は難しいでしょう。
――振り返ると、柳井氏は「2010年度までに売上1兆円」という目標を打ち出して、期限までには実現できなかったものの、2013年度には達成しています。
齊藤: 売上高1兆円という数字に関しては、日本でもその規模の小売業はいくつもあるので、それほど難しい話でないと思っていました。ですが、売上5兆円のファッションチェーンは現在世の中に存在しないので、前人未到の目標。例えばZARA、GAP、H&Mを買収すればいける。それくらいハードルが高い。ただ、10年や20年といったスパンで考えると、できないことではないのではないかと思います。
――期限を2020年度と区切らなければ、5兆円という数字も夢ではない、と?
齊藤: 誰もが着ることができるベーシックなインナーウェアを展開しているユニクロは、トレンド商品が中心のファストファッションチェーンとの比較でどこの国に行ってもマーケットに一番ポテンシャルがあるはずです。2020年度で切らずに、例えば2030年になれば世界一のアパレル企業になっているかもしれません。一定の成長を維持しながら、焦らずに世界一を目指すというのが現実的なのではないか、と思います。
関連記事
- アバクロが衰退した原因はどこにあるのか
米国アパレルブランドのアバクロンビー&フィッチが苦境に立たされている。2010年以降、米国内では既に200店舗以上を閉鎖していて、今年も60店舗を閉じる予定だ。かつて若者に絶大な人気を誇ったブランドは、なぜ衰退してしまったのか。 - なぜ男性ファッション誌『smart』は売れているのか
男性向けの雑誌が苦戦している。しかし逆風が吹き荒れる中でも、売れている雑誌がある。それが男性ファッション誌の『smart』だ。販売部数を伸ばしている理由、そして若い男性の心をつかむ秘けつなどを、太田智之編集長に聞いた。 - ユニクロとZARAの違いは? そして世界トップ企業の特徴
ベーシックカジュアルに強みを持つユニクロと、トレンドファッションを全世界で展開しているZARA。街中を歩いていると、両社の看板を目にする機会は多いが、どんな違いがあるのだろうか。流通コンサルタントの齊藤孝浩氏に話を聞いた。 - こんなモノを身につけてはいけない? 男性のNGグッズとは
夫婦間ではどのようなことを言ってはいけないのだろうか。NGキーワードについて聞いたところ、男性に対しては「安月給・出世しない」、女性には「ほか(昔)の女性と比べた発言」がそれぞれトップだった。オーネット調べ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.