ランキング大好きな日本人が、金融商品を選ぶ決め手:お金もセンス(1/4 ページ)
「みんなが選ぶ金融商品はコレ」「豊かな老後を送るには1億円が必要」といった売り文句を聞いたり、目にしたことがある人も多いのでは。しかし、こうした広告に、筆者の森永氏は「注意しなければいけない」という。その理由は……。
著者プロフィール:
森永賢治(もりなが・けんじ)
1992年、ADKに入社。通信、食品、化粧品、ファッション関連商品のマーケティング・ディレクターを経て、1999年、「金融プロジェクト」リーダーに就任。現在、ストラテジック・プランニング本部長(金融カテゴリーチーム・リーダー兼務)。JMAマーケティングマイスター。
2014年10月に書籍『「お金と心理」の正体』(共著)を刊行。同書籍では、上記金融カテゴリーチームに蓄積された金融コミュニケーションのノウハウ・分析を8つの章に分けて紹介している。
みなさんは「グロソブ」という投資信託をご存じだろうか? 正式名称は「グローバル・ソブリン」(国際投信投資顧問)。かなり以前に新聞広告で「同期のあいつも始めたらしい」というキャッチコピーが話題になったことがある。
グロソブは日本ナンバーワンの投資信託で、当時、団塊世代をコアターゲットにして積極的にアプローチしていた。かなり人気を集めたが、次第に頭打ち感が出てきていた。そこで、それまで商品特性や運用実績を謳(うた)い上げていたのをピタリと止め、商品特性とはまったく関係のない、「同期のあいつも……」とやり始めたのだ。
結果は大成功、グロソブへの関心を再度高めた。実は、この「グロソブ」の広告は、日本人の特に団塊世代における「横並び意識」をうまく活用した代表的な例として有名である。
また、この広告は、とりわけその意識が強い団塊世代に向けてタイミングよく広告展開ができた。というのもこの世代は年功序列の最後の世代。出世によってボーナスには差が出ても、給料はほぼ横並びにもらってきた年代だ。
その人たちが一斉に「老後」の入り口にさしかかる、そんな時期にこの広告が展開された。まさにその当時、団塊世代の人たちは、お金の使い方、運用の仕方に対して極めて切実な関心を寄せていた。
退職後はこれまでとは違い、今まで稼いできたインカムをどう使うか、運用するかによって「素敵な老後か、不幸な老後か」が決定的に違ってくる。そうした危機感を抱えながら日々を過ごしていたわけだ。
会社によって守られていた立場から、急に「白己責任」という荒波に放り込まれるようなものだから、その不安の大きさはいかばかりか、想像がつくだろう。しかも、年金の支給額も減らされそうという社会の流れの中で「みんなはそろそろ老後の手当てをしているのではないか」ということがいよいよ気になってくる。
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