止めることはできなかったのか 女子プロレスで起きた“事件”:赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)
女子プロレスでぼっ発したケンカマッチが、マット界を揺らしている。王者の世IV虎(よしこ)が激しいパンチを浴びせ、挑戦者の安川惡斗(やすかわあくと)は重傷。プロレスでこうした“事件”がたびたび起きるが、なくすことはできないのだろうか。
プロレス界の境界線
だがやはり最も大事なのはケンカマッチのぼっ発の理由を明らかにさせることよりも、今回の出来事を教訓としてプロレス界全体がこうした惨劇の再発防止に務める積極的な姿勢であろう。スターダムは「拳での顔面攻撃を禁止」「リングドクターを本部席に置く」ことなどを善後策として発表したが、果たしてこれだけで防ぎきれるかという疑問は正直拭い切れない。
そもそも拳での攻撃はほとんどのプロレス団体で厳密に言えば禁止行為とされているものの「5カウント以内ならば反則行為もOK」という特有のルールの下でなし崩し的に黙認されているのが現状だ。顔面を1発殴ったからといって、即座に反則負けの裁定が下されるケースはほとんどない。天龍源一郎が「グーパンチ」、アントニオ猪木が「ナックルパート」「ナックルアロー」と呼ばれる拳による顔面攻撃を駆使したように、プロレス界では公然と技の1つとして黙認されてきた経緯もある。
ただ、ここでレフェリーから注意を受ける程度で済まされるケースが多いのはあくまでも手加減している“プロレス的な魅せる殴打”。世IV虎が安川に大ケガを負わせてしまったような“本気の殴打”となれば、やはり別問題である。しかしながら、その境界線もプロレスの戦いにおいてはものすごく不透明だ。
少々乱暴な言い方をするとルールがあってないような世界だから、ファンの目線から見れば時によっては目の前の戦いがシナリオ通りのものなのか、あるいはガチンコ(プロレス界で呼ばれる「ケンカマッチ」の隠語。他にも「シュートマッチ」「セメントマッチ」などがある)なのかの判別がつきにくい試合も出てくる。
そういう曖昧(あいまい)な部分が混在していることでプロレス界は、ケンカマッチがぼっ発する危険性が高い場所と言えるのかもしれない。某プロレス団体の幹部は、次のような分析もしている。
「たぶんひと昔前ならば、この世IV虎と安川のケンカマッチもここまで大きな問題にはならなかったと思う。とにかく今は『暴力』というものに世間が何かと厳しい反応を向ける世の中。世界的に見ても残忍なテロ集団『ISIS(イスラム国)』の存在がクローズアップされているし、日本でも凶悪犯罪や事件が断続的に発生していることからも、それを連想させるような凄惨な行為に対しては多くの人がナーバスになっている。だから今回のようにスポーツから明らかに大きく逸脱し、人を傷つけるための攻撃は糾弾されても仕方がないところがあるだろう」
関連記事
- ご存じ? 今「新日本プロレス」が盛り上がっている
「プロレス? 昔は好きだったけどなあ」という人も多いのでは。日本のプロレス界は長きに渡って低迷を続けているが、実は1社だけ“ひとり勝ち”をしている団体がある。「新日本プロレス」だ。 - 年俸21億円を捨てた黒田博樹とは、どんな人物なのか
ニューヨーク・ヤンキースからFAとなっていた黒田博樹投手が今シーズン、古巣の広島カープへ復帰することになった。メジャーリーグからの巨額オファーを蹴った「クロダ」という男は、海の向こうで一体どんな人物として周囲の目に映っていたのか。 - 横綱・白鵬は本当にヒールなのか “第二の朝青龍”にしてはいけない
横綱・白鵬の発言が世間をにぎわせている。初場所の優勝後に審判部を批判したことで、各メディアは猛バッシングを開始。審判批判を口にしたのは大きな問題だが、横綱は叩かれ過ぎではないだろうか。 - “ハンカチ王子”斎藤佑樹の人気はなぜ凋落したのか
かつて“ハンカチ王子”として脚光を浴びた日本ハム・斎藤佑樹投手の人気が凋落している。成績がパッとしないから仕方がない部分もあるが、なぜKYな言動を繰り返すのか。その裏にあるのは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.