人工衛星で写真が撮れるんですよ。えっ、それだけ? “営業活動”は苦労の連続:仕事をしたら“宇宙”に飛んだ(後編)(4/4 ページ)
大学発のベンチャー企業「アクセルスペース」が、民間企業としては世界初となる商用の小型衛星を打ち上げた。しかし、そこに至るまでの“営業活動”は苦労の連続。どんなことがあったのか、同社の中村友哉CEOに話を聞いたところ……。
誰もが気軽に使える場所
中村: 「で、これってどうやって使えばいいの?」という質問には、本当に困っていました。力強く「宇宙から写真を撮れるんですよ!」と説明しても、お客さんには響きませんでした。
ベンチャー支援制度で助成金を受けられる期間は、2年間と決まっていました。なので2年間やって受注できなかったら、会社を創業するのをあきらめるしかないと思っていました。
その間、何十社も回りました。「宇宙から写真を撮れるんですよ」と説明して。それでも、色よい返事をもらえなかったので、やっぱりダメか……とあきらめかけていたころに、超小型衛星の利用に興味を持っていただいたウェザーニューズさんに話を聞いていただきました。
地球温暖化の影響で、北極海に浮かんでいる流氷が減ってきている。海運会社からすれば、北極海を利用することができれば燃料費を大幅に削減できるということでした。そこで白羽の矢がたったのが、小型の人工衛星。大型の人工衛星は北極海だけを観測しているわけではないので、欲しいときに、欲しい情報を得ることが難しい。海運会社からのニーズを受け、ウェザーニューズさんと弊社が人工衛星の開発に携わることに。2013年に打ち上げられた衛星は、その後の一部機能の故障によりミッションを変更しましたが、機能をより高度化した2号機を開発中で、今年中に打ち上げられる予定です。
土肥: 起業されたのは2008年。それから7年が経ちました。
中村: 創業当時は「本当に小型の人工衛星を開発・製造するビジネスを続けていくことができるのかなあ」と不安を感じていました。宇宙ビジネスの環境が整っていなかったので、方向性が間違っていたのかなあと。でも、いまではその環境が整ってきたので、自分が選んだ道は間違っていなかったと思っています。
あと、お客さんの話を聞いていると、人工衛星ってさまざまな使い道があるのではないかと。動画は撮れないの? こういう通信ができない? といった感じで、その会社でしか使えないニーズがあるんですよね。でも、そうした課題を解決できる可能性がある。柔軟に対応することで、新たなビジネスが生まれてくると思っているんですよ。
土肥: 中村さんにとって宇宙ってどんな存在なのですか?
中村: いまよりも誰もが気軽に使える場所……にしたいですね。
(終わり)
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