化粧品メーカーには真似できないアイスタイル独自のデータ戦略:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(5/5 ページ)
国内最大のコスメ情報サイト「@cosme」を運営するアイスタイルが、ユーザーである消費者のみならず、顧客企業である化粧品メーカーからも支持を集める理由――。それは創業以来築き上げてきた独自のデータベースにあるのだ。
海外に勝機
大薗: 今後の中長期の事業戦略に「ビューティープラットフォーム戦略」を掲げています。これによって目指すものは何でしょうか。
吉松: ビューティプラットフォームでは、当社のこれまでのサイトのようにユーザーがクチコミを投稿するだけではなく、メーカー、サロン経営者など美容のビジネスにかかわる側もIDを持って情報発信をしていけるようになります。美容に携わる全ての人が出会い、コミュニケーションできる場です。これを1社だけですべてやっている会社はほかにありません。
大薗: 海外戦略についてはどうでしょうか。
吉松: 中国でのビジネスを10年ほどやってきましたが、中国ではローカル企業がプラットフォームを作ってしまったので、当社ができるのはコンテンツか商品を運ぶことです。ただし、中国市場のボリュームは依然として大きく成長しています。よく卸は儲からないと思われますが、中国は市場規模が大きいので卸が儲かるのです。
また、海外事業を始めて気付いたのは、日本のメーカー各社が多言語対応していないということです。アイスタイルは現在、英語や中国語など4つの言語に対応しているため、化粧品という独特のニュアンスをもった市場の翻訳会社としてナンバーワンになれるのです。さらに、どの国のユーザーからアクセスがあり、彼らがどの商品に興味を持っているかがすべてデータとして取得できています。この点からもメーカーの海外事業のサポートが可能です。
このように、日本のほとんどの化粧品メーカーはまだ十分に商品を輸出できていないのが現状です。そこで当社が海外でオリジナルブランドを販売することはグローバル戦略として可能性があるかもしれません。海外の消費者にどういった商品が人気なのかも分かっていますし、ビジネスとして十分にやっていけるのではと思います。
関連記事
- ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略:カカクコムの徹底した「ユーザー本位」、その鍵は情熱ある“オタク社員”にあった
価格比較サイトの先駆けとして90年代末に登場した「価格.com」は、いまや月間8億7000万ページビューという巨大サービスに成長した。その成長の裏側には一体何があったのだろうか。カカクコム・田中社長が語った。 - ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略:初志を貫く! 広告で収益を上げない東京糸井重里事務所
Web広告収入という選択をせずに、主にオリジナル商品の販売で年間28億円の売り上げを達成している東京糸井重里事務所。その事業戦略について、同社CFOの篠田氏と一橋大学大学院の大薗教授が対談した。 - ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略:お客様本位――これこそがユナイテッドアローズの原理原則
日本のセレクトショップとしてトップレベルの売り上げを誇るユナイテッドアローズ。その強さの源泉は何か。同社のコアコンピタンスについて、同社上席執行役員の佐川氏と一橋大学大学院の大薗教授が対談した。 - ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略:4000人のルート営業はすべて正社員 茶産業育成を支援する伊藤園
原材料が高い自然素材を中心とした清涼飲料に特化してビジネスを展開する伊藤園は、なぜ飲料業界平均よりも高い収益性を実現しているのだろうか。同社の競争戦略の核心を聞く。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.