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「今までの延長線上では不可能」 ファスナーの雄・YKKが挑むビジネス変革:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(4/4 ページ)
世界約70カ国・地域に拠点を構えるYKKは、顧客の細かな要求・要望に対してスピーディーかつ高品質な商品を提供することで、現在の規模にまでビジネス成長してきた。しかし、将来を見据えたとき、取り組むべき事柄はまだまだ多いという。
ファストファッションへの対応が課題
ところが、今大きな課題認識として持っているのは、ファストファッションへの対応です。そこで求められる観点は、多様性、スピード、値ごろ感で、YKKがこれに対応できるかというと、これまで歩んできた道とは真反対なので苦労しています。特にスピードが追いついていません。顧客が求めるサイクルで、矢継ぎ早に違うファスナー商品を世界中で供給できるかというのは現状難しいです。
今まで以上に納期が早くなるわけで、これがYKKにとって大きな挑戦です。オペレーションシステムを変えなければならないなど足の長いプロジェクトですが、何とか次につなげていきたいです。
もう1つ問題なのは、ファストファッションにおいてYKKというブランドがどこまで重視されているのかということです。かつての縫製業界では、バイヤー、デザイナー、生産担当者それぞれが、ファスナーといえばYKKを思い浮かべ、高品質という固定観念を持ってもらっていました。しかし、ファストファッションの方々にはその固定観念はなく、スピードや低価格という基準ではYKKは選択肢に上ってきません。この認識を変え、やはりファスナーといえばYKKだと思ってもらうことがこれからのチャレンジです。
大薗: 本日はどうもありがとうございました。
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