訪日客が増えれば「儲かる」のに、なぜ日本はチカラを入れてこなかったのか:水曜インタビュー劇場(観光公演)(2/7 ページ)
数年前、政府は「観光立国」を掲げ、ようやく重い腰を上げた。外国人観光客が増えれば「儲かる」のに、なぜ日本はチカラを入れてこなかったのか。その理由について、『新・観光立国論』の著者に話を聞いた。
「観光業は“下”」と感じていた
土肥: 1980年代の後半、円高の影響を受けて海外旅行ブームがありました。それまでは「ハワイ5泊6日 30万円」くらいだったので「高いなあ」と感じていましたが、90年代前半には確か「10万円」くらいになって、私の周囲からも「安くなったなあ。ちょっと行ってみようか」といった声が聞こえてきました。
バブル経済の象徴のひとつとして、米国、欧州、香港などに行って買い物をする日本人の姿が、よくニュースで報じられていました。「日本で買うよりも安く手に入る」ので、高級ブランド品を“爆買”して。しかし、90年代後半には円安になったこともあって、海外旅行ブームが沈静化しましたよね。考えてみれば、このタイミングで「円安になったんだから、海外から外国人に来てもらおう」という動きがあってもよかったはずなのに、特になかった。自分たちが海外に行くのは積極的なのに、なぜか外国人が来ることには消極的でした。不思議ですね。
アトキンソン: なぜ消極的だったかというと、どこかで「観光業は“下”」と感じていたからではないでしょうか。
土肥: どういう意味でしょう?
アトキンソン: 例えば、タイは観光業にチカラを入れています。しかしタイは途上国なので、「観光業は途上国がやるもんだ」といったイメージをもっている人が多いと思うんですよ。クルマや家電などの製造業が“上”で、観光などのサービス業は“下”といった感じで。
土肥: 外国人が日本にやって来ると、「どーも、どーも」と頭を下げて、ゴマをすらなければいけません。そうした行為に抵抗を感じていたのでは。
アトキンソン: 先日、ある観光協会の会長はこのように言っていました。「(日本にやって来る)外国人に頭を下げるまで、日本の経済力や技術力は落ちていない」と。少数派の意見とはいえ、特に上の世代にはこのような考え方がありますね。
土肥: 小学生に、将来就きたい職業は何ですか? といったアンケートを行っても「観光」に関係する仕事は圏外ですね。
アトキンソン: 外国人に頭を下げてまで、日本に来てもらう必要はない。そこまでしなくても日本には“武器”がある。クルマ、バイク、テレビ、DVD……といった感じで。
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