Mobile:NEWS 2002年5月20日 03:56 PM 更新

Bluetoothチップ大手のCSR、次はPCを狙う

英CSRは、Microsoftと共にBluetoothのデスクトップPCへの組み込みを狙う。同社のチップBlueCoreは2世代目の生産が開始され、従来よりも消費電力が半分、価格も大幅に低下した。今年夏以降、Bluetoothは普及に向かって突き進むことになる。

 Bluetoothチップ最大手の英CSR(Cambridge Silicon Radio)は、Bluetoothチップを含むデスクトップPC用パッケージ「BlueCore2-PC」を発表した。Bluetoothチップのほか、Windows用のホストソフトウェアなどが含まれており、PCメーカーがデスクトップPCにBluetooth機能を組み込むことを容易にしている。

 これまで組み込み向けを中心に語られることが多かったBluetoothだが、CSRがPC向けへフォーカスするのはMicrosoftがBluetoothに再度目を向けたからだ(4月19日の記事参照)。Microsoftは、Bluetooth搭載キーボードとマウスにCSRのチップを採用(5月1日の記事参照)。今後、PCの世界でもBluetoothがメジャーになる可能性が出てきた。

今年後半は、価格も消費電力も大幅削減

 1999年4月に英国で設立されたCSRは、CMOSプロセスを使ったBluetoothのシングルチップソリューションを他社に先駆けて開発した。通常、無線チップは高価だが高周波に適したGaAsプロセスなどで製造される。CSRでは、CPUやメモリなどに使われる最も一般的なCMOSプロセスでの開発に成功。「多くの方が不可能だと言ったが、我々は(Bluetoothの)2.4GHzで実現した」(英CSRの共同創立者兼マネージングディレクターPhil O'Donovan氏)

 安価なCMOSプロセスを利用することで、低価格と大量生産を可能とした。「携帯電話などハイボリューム市場の場合、外付けメモリを使うBlueCore2-Externalではチップ価格5ドル以下、マスクROMのBlueCore2-ROMでは3ドル以下を実現している」(同社日本法人であるシーエスアールの塚越明義社長)

 現在、IBMやソニー、コンパックがノートPCに採用しているほか、PDAでもソニー、富士通、コンパックが採用。また携帯電話でも、ソニーやシャープの端末に内蔵されており、「シェア50%を超えている」(O'Donovan氏)。


auのBluetooth搭載端末「C413S」やNTTドコモのBluetooth内蔵PHS「パルディオ633S」にもCSRのBluetoothチップが使われている

 これまでは、第1世代のBluetoothチップ「BlueCore01」を提供していたが、4月からは台湾TSMCの0.18μmプロセスで製造した「BlueCore2」の出荷を開始した。「この夏くらいには、BlueCore2を搭載した製品が出てくるだろう」(塚越氏)

 Bluetoothは、“高価”“消費電力が大きい”ことが普及の妨げと言われ続けてきた。BlueCore2は、BlueCore01と比較して消費電力が2分の1、ダイサイズも2分の1になる。Bluetoothの消費電力はチップだけでなく、周辺回路も含めたモジュールとして見るべきだが、BlueCore2が市場に出回る今年後半からは“常時待ち受け”が可能になった製品が増えてきてもおかしくない。

 さらに2003年には、0.13μmにシュリンクしたBlueCore3が登場する予定だ。具体的な価格や性能向上点については明らかになっていないが、Bluetoothがより身近になる時代が迫っている。

2003年、802.11aにも参入

 Bluetoothの次の段階として、CSRは2003年にも5GHz帯の802.11aチップにも進出する予定だ。「近い将来、市場はBluetoothと802.11aの両方を求めるようになる」とO'Donovan氏。802.11aでも「シングルチップのデバイスを作るのが目的だ」(同氏)と意気込む。

 なかなか立ち上がらないBluetoothに対しては、当初の熱狂はどこかにいってしまい、最近は悲観論ばかりが目立つ。「今年がラストチャンス」と語る関係者も多い。しかしBluetoothの認定製品は安定して増え続け、チップの出荷量も爆発的に伸びている。

 IMSやGartnerなど調査機関の調べをまとめると、2001年のチップの出荷量が700万〜800万個だったのに対し、2002年は3000万〜4500万個となる見通し。CSRでは、2003年には1億8000万個に達すると予測している。

 国内の携帯電話に赤外線通信機能が盛り込まれようとしているのも、Bluetoothにとっては明るいニュースかもしれない(5月8日の記事参照)。というのも、赤外線とBluetoothはプロトコルスタックの多くを共用しており、物理層であるハードウェアの部分を赤外線からBluetoothに交換するだけで、容易に同じアプリケーションが利用できるからだ。今でこそ携帯電話業界は赤外線を選択しているが、関係者によるとその理由は「Bluetoothに比べて成熟しており、モジュールが安価だから」。

 CSRではBlueCore2の生産が安定すれば、Bluetoothモジュールの価格も10ドル程度まで下がるのではないかと見ている。赤外線通信モジュールの5ドルという価格に比べるとまだまだ高いが、今後さらに価格が下がる目処も立ってきた。

 「赤外線が道を開き、Bluetoothがそこで大きく花開く──」。携帯電話に向けても、そんなシナリオが描けるかもしれない。

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▼ CSR

[斎藤健二, ITmedia]

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