Mobile:NEWS 2002年8月30日 07:10 PM 更新

携帯“ムービー”に注力するKDDI〜mobidec

KDDIコンテンツビジネス部の高橋部長が講演を行い、ムービーへの期待と意気込みを語った

 KDDIは“ムービー”にやる気だ。8月26日に、初のムービーメール対応機「A5301T」を発表したばかりだが(8月26日の記事参照)、今後もムービーをキラーコンテンツとして位置づけ、普及拡大を狙う。

 KDDIのコンテンツビジネス部 部長である高橋誠氏が8月30日、「mobidec 2002」で講演し、「(KDDIにとって)ムービーは一過性のものではなく、重要な位置づけだ」と語った。

ムービー普及に必要なのは、コスト低下と端末数

 高橋氏は、「(これまで)ムービーのビジネスが成り立たないといわれるのは料金の問題があったからだ」と語る。

 KDDIのezmovie──いわゆる動画配信サービスの提供サイトは既に119を数えるが、まだ普及しているとは言えないのが現状。動画対応端末の利用者も40万程度で、これからの市場であることが分かる。

 KDDIでは主に料金面から動画の普及を目指す方針だ。先日発表された通り、有料化する予定だった高速パケット通信オプションを無料に据え置き、新たなパケット料金割引オプション「パケット割」も導入する(8月26日の記事参照)。続いて2003年にはデータ専用の通信方式である「CDMA2000 1x EV-DO」の導入によって、さらなるパケット料金の低廉化を図る(7月19日の記事参照)。

 「EV-DOで、真のブロードバンドが携帯に入ってくる。高速データ通信にはコストが伴わなくてはならない。EV-DOが始まって、cdmaOne導入のシナリオが完結する」(高橋氏)。

 もう1つ、ムービー普及のために欠かせないのがプラットフォームである端末の増加。高橋氏は「ムービー対応機種の拡充、普及を宣言させていただく」と高らかに語った。

 高橋氏は次機種の数やタイミングを明言しなかったが、既に日立製作所や三洋電機はau向け端末としてムービー対応の端末を展示済み(2001年9月の記事参照5月21日の記事参照)。冬に向けて開発が進んでいるものと思われる。

 しかし、ムービーメール対応端末の開発は簡単ではなかったようだ。「(A5301Tも)本当は夏に出したかったが、開発が難航した」(高橋氏)。動画の再生には、専用のチップかアプリケーションプロセッサを端末に組み込む必要がある。コストを重視するKDDIとしても、悩みどころ。

端末戦略から見た、CDMA2000 1x成功の理由

 “端末のコスト重視”は、cdmaOne導入時の苦い経験からKDDIが学んだことでもあった。当時KDDIはPDCネットワークからcdmaOneネットワークへの切り替えを進めていたが、なかなかユーザーが乗り換えてくれない。その一番大きな理由は、わずかにcdmaOneの端末価格が高かったことだと高橋氏は言う。

 その経験から、CDMA2000 1x導入時は従来のcdmaOne端末とCDMA2000 1x端末で価格差がないように工夫した。「1x導入時、(アプリケーションプロセッサを入れて)マルチチップにし(7月12日の記事参照)、Javaが高速に動作するような高機能な端末を作ることも考えた。しかしそうすると価格が上がってしまう」(高橋氏)。

 価格に対するKDDIのシビアさは、GPSケータイにも現れている。高橋氏は「GPS機能は、端末の価格を引き上げていない」と説明する。特別なコストのアップなく音声端末に機能を搭載できたことから、インセンティブを付けて低価格で販売することも可能になった。通常ならば6-7万円するGPS端末が、携帯電話と組み合わせることで1万数千円で購入できるようになる……。こんなところも「GPS関係のソリューションに、多くの引き合いが来ている」(高橋氏)ことにつながっていると言う。

1人当たりのコンテンツ利用料金はiモードより上

 高橋氏は、EZwebの有料コンテンツ市場規模も明らかにした。iモードが月間約80億円(KDDI推定)なのに対して、EZwebは月間約30億円。絶対額こそ少ないが、ユーザー1人当たりに換算すると、iモードの約230円に対して、EZwebは約280円となる。


高橋氏によると、1ユーザーあたりの情報料は、EZwebがiモードの20%増しだという

 iモードよりも有料コンテンツを多く使ってくれるEZwebユーザーだが、そうなった理由は必ずしも望ましいものではなかった。「最初の段階でコンテンツが少なかった。そのためにいいコンテンツを選別して揃えることができた」と高橋氏。もう1つの理由は、「最初、勝手サイトが少なかった。そのため、ユーザーはゲートウェイを介したコンテンツ(公式コンテンツ)を買ってくれた」(同氏)というものだ。

 とはいえ、現在のKDDIはコンテンツの充実に積極的。iモードの記述言語と互換性のあるWAP2.0を導入したり(2001年11月の記事参照)、課金代行サービスの敷居を下げたりと(6月20日の記事参照)、オープンな方針で進んでいる。高橋氏は、オープン化への意気込みを語りながらも、「オープン化によってコンテンツが荒れる可能性もある。ここを乱し始めると墓穴を掘ることになる」と、慎重に取り組む姿勢を示した。



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関連リンク
▼ mobidec 2002

[斎藤健二, ITmedia]

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