Mobile:NEWS 2002年12月3日 03:42 AM 更新

PDAとしてのVGAザウルスは買いか?(2/2)


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メモリ不足は気になる部分

 いいこと尽くめにすら思える本製品だが、PDAとしてみたときにネガティブな要素もないわけではない。借りたのが試作機ということもあるのかもしれないが、たとえば複数の機能、特にブラウザとほかの機能を並行して動作させるとメモリ不足に陥りやすく、機能の終了を促してくる。こうした状態は通常のPDAではあまり見られない挙動で(Pocket PCではメモリ不足はあり得るが)、本来あるべきものではない。


このように複数の機能を同時に起動してメモリ不足になると使用しない機能の終了を促される。これはまだいいが、強制終了や再起動の要求はPDAとして疑問を感じる。試作機だけの問題であればいいのだが……

 これは複数の機能を並行して実行できるがゆえの問題ではある。たとえば「機能を呼び出して利用し、終了して次の機能を」という使い方ならメモリ不足はそうそう発生しない。しかしカレンダーやアドレス帳、メーラーなどを専用キーから起動すれば、自然と複数の機能が並行して実行されることになる。「SL-C700」のマニアックな側面に惹かれて勝った層はともかく、VGA液晶に引かれて購入する普通のビジネスユーザーに、メモリ不足というエラーが受け入れられるとは考えにくい。

 このメモリの問題に連動するのが高速起動の問題だ。PIMを中心に一部の機能には「高速起動」という起動オプションが存在し、これを利用しないと各機能の起動はお世辞にも早くない。カレンダーを起動するだけで4〜5秒はかかるのだから、頻繁に利用する機能は高速起動を有効にしないと使い勝手は大幅に低下する。


メニューでアイコンを長押しすることで高速起動の設定ができる。有効にすると非常にテキパキと起動するが、メモリ不足の原因にもなる

 しかし高速起動を有効にするとその機能の分のプログラムがメモリに常駐し、メモリ不足を起こしやすくなる。つまりユーザーは利用スタイルに応じてどの機能を高速起動に設定しておけば、普段の使い方でメモリ不足が発生せず必要な機能を素早く呼び出せるか見極める必要があるのだ。こういった部分まで、ある意味PCライクなのは、あまり褒められたことではないかもしれない。試作機から製品になったときにはこのあたりが改善されていることを期待したい。

 起動時間にも触れておこう。通常の電源オフでは動作状態を保持しているので、電源オンでは瞬時に起動する。しかしバッテリー交換時などのOSからの起動には数分の時間を要する。Pocket PCでもリセット動作時には多少起動の時間がかかるが、その比ではない。つまり予備バッテリーさえ持っていればバッテリー交換して即座に利用を再開できるわけではない。

 シャープお得意の手書き入力は、文字の認識率、認識スピードとも高速で、この点は明らかにPocket PCに勝っている。反面、キーボード利用時のカナ漢字変換は辞書の構成が今ひとつの感がある。キーボードが魅力の製品であるだけに、さらなる機能の向上が望まれる。

それでも魅力はつきない

 今や高機能PDAの定番機能になりつつあるマルチメディアプレイヤー機能もMPEG-1/2の動画再生、MP3の音楽再生に対応している。ただし動画再生はMPEG-4といったモバイル利用にふさわしいコーデックへの対応が望まれるだろう。さすがにWindowsMediaVideo/Audioへの対応は難しいと思うが……。


これがメディアプレイヤー。192Kbpsといった高ビットレート、可変ビットレートのMP3ファイルも難なく再生した。音楽再生時には右下のボタンで画面表示を明示的にOFFすることも

 本製品では標準でLinuxのコンソールが利用でき、telnet、ftpといった機能も標準で利用できる。先行した「SL-A300」のおかげでLinux端末として利用するための情報もインターネットで広く公開されている。


ターミナルを起動するとLinuxのコンソールが現れる。多くのLinuxのコマンドを実行でき、Telnetやftpなども実行可能で、ちょっとしたサーバメンテナンスなどもこなせる。なおTelnetは残念ながら日本語表示には対応していない

 純然たるPDAとしてみるとネガティブな部分も見え隠れする本製品だが、既に紹介しているとおり、VGA液晶、親指入力に適したキーボード、インターネット接続周りの配慮など魅力的な部分が多く、従来のPDAの枠を超えてPCライクに使えるPDAであることは間違いない。

 余談になるが、既にいくつかの量販店では予約が殺到して年内の入手は困難になっているとのことだ。



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関連リンク
▼ SL-C700のニュースリリース
▼ SL-B500のニュースリリース

[坪山博貴, ITmedia]

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