PDAとしてのVGAザウルスは買いか?(2/2)
いいこと尽くめにすら思える本製品だが、PDAとしてみたときにネガティブな要素もないわけではない。借りたのが試作機ということもあるのかもしれないが、たとえば複数の機能、特にブラウザとほかの機能を並行して動作させるとメモリ不足に陥りやすく、機能の終了を促してくる。こうした状態は通常のPDAではあまり見られない挙動で(Pocket PCではメモリ不足はあり得るが)、本来あるべきものではない。
これは複数の機能を並行して実行できるがゆえの問題ではある。たとえば「機能を呼び出して利用し、終了して次の機能を」という使い方ならメモリ不足はそうそう発生しない。しかしカレンダーやアドレス帳、メーラーなどを専用キーから起動すれば、自然と複数の機能が並行して実行されることになる。「SL-C700」のマニアックな側面に惹かれて勝った層はともかく、VGA液晶に引かれて購入する普通のビジネスユーザーに、メモリ不足というエラーが受け入れられるとは考えにくい。 このメモリの問題に連動するのが高速起動の問題だ。PIMを中心に一部の機能には「高速起動」という起動オプションが存在し、これを利用しないと各機能の起動はお世辞にも早くない。カレンダーを起動するだけで4〜5秒はかかるのだから、頻繁に利用する機能は高速起動を有効にしないと使い勝手は大幅に低下する。
しかし高速起動を有効にするとその機能の分のプログラムがメモリに常駐し、メモリ不足を起こしやすくなる。つまりユーザーは利用スタイルに応じてどの機能を高速起動に設定しておけば、普段の使い方でメモリ不足が発生せず必要な機能を素早く呼び出せるか見極める必要があるのだ。こういった部分まで、ある意味PCライクなのは、あまり褒められたことではないかもしれない。試作機から製品になったときにはこのあたりが改善されていることを期待したい。 起動時間にも触れておこう。通常の電源オフでは動作状態を保持しているので、電源オンでは瞬時に起動する。しかしバッテリー交換時などのOSからの起動には数分の時間を要する。Pocket PCでもリセット動作時には多少起動の時間がかかるが、その比ではない。つまり予備バッテリーさえ持っていればバッテリー交換して即座に利用を再開できるわけではない。 シャープお得意の手書き入力は、文字の認識率、認識スピードとも高速で、この点は明らかにPocket PCに勝っている。反面、キーボード利用時のカナ漢字変換は辞書の構成が今ひとつの感がある。キーボードが魅力の製品であるだけに、さらなる機能の向上が望まれる。
今や高機能PDAの定番機能になりつつあるマルチメディアプレイヤー機能もMPEG-1/2の動画再生、MP3の音楽再生に対応している。ただし動画再生はMPEG-4といったモバイル利用にふさわしいコーデックへの対応が望まれるだろう。さすがにWindowsMediaVideo/Audioへの対応は難しいと思うが……。
本製品では標準でLinuxのコンソールが利用でき、telnet、ftpといった機能も標準で利用できる。先行した「SL-A300」のおかげでLinux端末として利用するための情報もインターネットで広く公開されている。
純然たるPDAとしてみるとネガティブな部分も見え隠れする本製品だが、既に紹介しているとおり、VGA液晶、親指入力に適したキーボード、インターネット接続周りの配慮など魅力的な部分が多く、従来のPDAの枠を超えてPCライクに使えるPDAであることは間違いない。 余談になるが、既にいくつかの量販店では予約が殺到して年内の入手は困難になっているとのことだ。 関連記事 VGAザウルス「SL-C700」は、「PCのように使える」か VGA液晶を搭載したザウルス「SL-C700」が目指すのは、従来のPDAでは成しえなかった「パームサイズでありながらノートPCの代替になる」というニーズに応えること。果たしてどこまで「PCライクに」使えるのだろうか 写真で見るVGAザウルス「SL-C700」 シャープからパームサイズにキーボードとVGA液晶を詰め込んだ「SL-C700」が登場する。今回量産試作品を入手したので、まずは写真で見ていこう VGA液晶+キーボードの「ザウルス」正式発表 シャープは、PDA「ザウルス」の新製品2機種を発表した。両製品ともLinuxを採用。それぞれ12月14日に発売する 「これでもノートパソコンを持ち歩きますか?」〜シャープ、新ザウルスに自信 640×480ピクセルと、PC並の解像度を実現した新ザウルス「SL-C700」。もう出張にPCはいらない──と言わんばかりの発言も飛び出し、シャープの自信のほどがうかがえる シャープ、VGA液晶のザウルスを参考展示 シャープが力を入れるCGシリコン液晶を使った次期ザウルスが展示された。VGAサイズの液晶とキーボードを備え、Linux OSを搭載。「ザウルスショット」や「ザウルスドライブ」機能も利用できる 今度はターンスタイルで登場〜年内発売予定のVGA液晶ザウルス CEATEC JAPAN 2002で初披露されたVGA液晶ザウルスが、今度はターンスタイルでお目見えした。説明員によれば、年内発売予定だという コンテンツビューワとしての新しいザウルス〜シャープ、Linuxザウルスを語る シャープは、プロセッサにIntel製XScale PXA210/200MHzを搭載、LinuxベースのOSを採用した新しいザウルス「SL-A300」を発表した。PCの情報をいつでもどこでも閲覧できるコンテンツビューワという位置づけだ 関連リンク SL-C700のニュースリリース SL-B500のニュースリリース [坪山博貴, ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. 前のページ | 2/2 | 最初のページ モバイルショップ
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