高速版W-CDMA「HSDPA」とは何か次世代のW-CDMAとして、高速パケット通信「HSDPA」という言葉がしばしば出てくるようになった。海外でHSDPAのデモを行ったノキアにHSDPA、およびW-CDMAとUMTSの違いなどを聞いた
無線通信の進化は止まらない。NTTドコモがW-CDMA方式で3Gサービス「FOMA」を開始して1年半。さらに高速な通信方式が実現間近だ。 HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)は、3GPPのRelease 5で標準化された新しい通信方式で、従来のW-CDMAの5倍以上の通信速度を実現する。 NTTドコモはHSDPAに積極的で、2004年の末のサービス開始を目指して開発を進めている(2月27日の記事参照)。 Nokiaは、米ルイジアナ州ニューオーリンズで3月17日−19日に開催された「CTIA Wireless 2003」で、HSDPAをデモ。ノキア・ジャパン ノキア・ネットワークス 美尾治生アカウント マネージャーは、「HSDPAは、2005年以降にはスタートするだろう」と話す。
現行、最大384KbpsであるW-CDMAの次のステップが、HSDPAだ。一般的に、下りの速度は最大14.4Mbps。「Nokiaのソリューションとしては、5MHzの帯域で16QAM変調をかけたとき、ピークレートで10Mbps」だと美尾氏は説明する。 無線通信の場合、最高速度だけでなく利用する周波数帯域幅が重要だ。例えば、「W-CDMAの最高速度は2Mbps」と言う場合、これは5MHzの帯域幅を複数束ねて実現する。周波数帯域幅をいくらでも使ってよければ理論的な通信速度はもっと上がる。HSDPAは、現行のW-CDMAと同じ5MHz幅で高速通信を実現するところがカギとなる。 通信キャリアが新しい通信方式を導入する背景には“周波数の利用効率”が念頭にある。通信速度が上がることは同時に、1ビット送るのに必要な周波数帯域が減少することを意味する。つまり、新方式にすればパケット単価を下げられる、あるいは通信料を下げることができるわけだ。 HSDPAがどうやって通信速度を上げるのかというと、基本的には変調方式の変更によると美尾氏。変調は、耐雑音特性を向上させるために行うもので、方式によって伝送できる情報量や耐雑音特性が変わる。受信状態が良いところでは情報量を多く取れる変調方式を使い、受信状態が悪いところでは耐雑音特性を優先する。Nokiaが出した“ピークレート10Mbps”を実現する16QAMは、次世代PHSやxDSLでも採用されている変調方式でもある。 「イーサネットもメディアは一緒だが、どんどんスピードが上がってきた。これはプロトコルを若干変えている部分もあるが、変調方式を変えているのが大きい。当時はできなかったが、今は十分なスピードのCPUやDSPがあるので、もっと複雑な変調をさせることが可能になった」(美尾氏)。
![]() 3GPPのロードマップ。Release 4は早々に決まり、Release 5は2004年の目処だという。Release 99移行は後方互換性を保ちながら、Release 5以降はオールIP化を図っていく
音声中心からIPデータ通信へ趨勢が移行しつつあるのは、無線通信も同じ。CDMA2000 1xに対しCDMA2000 1x EV-DOがデータに特化しているように(3月28日の記事参照)、HSDPAも基本的にパケット通信に対応した通信方式だ。 ただし、HSPDAが標準化されたRelease 5(R5)という仕様は、コアネットワークのオールIP化を導入する仕様でもある。 「最終的にはオールIPというソリューションがある。この状態になれば音声もデータも関係ない。現行の2G方式でも、音声はコーデックされてデータとして流れている。では、(音声とデータと)何が違うのかというと、QoS(Quality of Service、用語)をサポートするかどうかだ」(美尾氏)。W-CDMAでは、QoSを実現する規格が当初から用意されているという。 ただし「現在、サービスとしてはQoSが取れるサービスは行われていない。実際にQoSが使われるだろうと言われているのが、Release 4、Release 5の頃。オールIPのちょっと手前くらいになれば、必須となる」(美尾氏)。
![]() Nokiaが想定する2005年時のオールIPネットワーク構成図。音声やデータを「ユーザープレーン」、信号系統を「コントロールプレーン」と分け、それぞれIPネットワーク上に流す。現行では、信号系統と音声・データとどちらのトラフィックが増えても交換機の増設などが必要になるが、IPネットワークではスケーラビリティが上がり、設計の自由度が高まるという
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