Mobile:NEWS 2003年7月23日 08:19 PM 更新

数字で読み解く“携帯”(3/4)


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 こうした値下げのほかに、広い層に携帯電話が広まったことも、音声ARPU減少の一因と言われる。つまり、初期のユーザーがどうしても携帯が必要だったのに対し、最近購入するユーザーは“あまり使わないけど買っておく”という、あまり利用頻度の高くないユーザーだというわけだ。これが平均を押し下げる。

 さらに、ユーザーはあまり通話をしなくなってきている。MOU(Minutes Of Usage)──ユーザーが1カ月に何分通話をするかという指標を見ると、2002年3月に178分だったのが2003年3月に168分と減っている(ドコモの場合)。

※ARPUが減っている……とはいっても、日本のARPUは世界で見たらびっくりするくらいに高い。米国のオペレータ、例えばシェアトップのVerizon WirelessのARPUは49ドル(6月9日の記事参照)。ガートナージャパンによると、西ヨーロッパは何と1900円に過ぎない(プリペイド契約が多いことが平均を下げている)という

 減少を続ける音声ARPUは、上昇させるのが難しいと言われる。通話品質の向上などにも取り組んでいるものの、なかなか成果は出ていない。

データARPUはどこまで増えるか

 契約者数の伸びが止まり、音声ARPUの低下が避けられない以上、伸び盛りの“データ通信”に力が入る。ドコモはARPUのうち2割をデータ通信が占めており、立川敬二社長は2010年にはデータの比率を7割以上に上げると目標を掲げている。

 データARPUの伸ばし方は各社各様だが、だいたい共通しているのはデータを扱いやすい端末とネットワークを開発して、さらにデータを使いたくなるサービスを提供するということだ。

 メールや着メロ、液晶カラー化に伴う壁紙などが、端末機能とサービスが合わせて進化したいい例。そしてJavaはデータARPUの増加に大きく貢献した。ドコモの50xシリーズと2xxシリーズの大きな違いはJavaのあるなしだが、データARPUは倍近く違う(2002年8月の記事参照)。

 カメラも一応そんな機能の一つに位置づけられる。J-フォンやauの場合、撮影した画像をメールに添付して送受信するため、カメラの内蔵は確実にデータARPU向上に役立った。そして不思議なことに、ドコモの場合でもカメラ付き端末のほうがデータARPUが高い(記事の写真参照)。

※ドコモの場合、iショット送信の通信料金は音声ARPUとして数えられる。ちなみにFOMAのテレビ電話も音声ARPUに算入される。それなのにカメラ付き端末のデータARPUが高い理由はよく分からない

 ガートナージャパンは、国内のARPUは音声ARPUは減少を続けるものの減少幅は緩やかになり、代わりにデータARPUが増加し続けることで、2007年前後では総合ARPUは7000円あたりで推移すると予想している。

新端末開発で喜ぶのは?

 データARPU増加を目指して作られる新端末だが、ここには大きなジレンマがある。

 買い換え時にキャリアが支払う、販売補助金──インセンティブコストだ。ドコモの売り上げ4兆円少々のうち、約1兆円はインセンティブとして使われている(2月6日の記事参照)。1台あたり、だいたい4万円だ。このコストはバカにならない。

 だから、端末に新機能を入れるとき、“データARPUの増加に結びつくかどうか”をキャリアはまず考えるという。データARPUが上がらなければ、多大なインセンティブを支払って端末を買い換えてもらっても意味がない。ここが、単に端末が売れればいい端末メーカーと利害が異なる部分になる。

※逆に、データARPUの増加が見込める新サービスを立ち上げるときは、対応端末に一気に乗り換えてもらったほうがいい。だから、505iシリーズの本当のウリはファイルサイズが230Kバイトに増えた(つまりデータ通信料が増えた)iアプリや20Kバイトのデータ量を持つFlashであって、メガピクセルカメラはそうした端末に買い換えてもらうための“おまけ”とも考えられる

 キャリアによっては、「新機能を入れないで通話料を多少値下げしたほうがいい」という判断をするところもある。ARPUが多少下がっても、インセンティブコストが減ったほうが利益が出るという判断だ。

 ただし新端末にはもう1つの要素がある。契約者のつなぎ止めだ。例えARPU増加に至らなくても、魅力的な端末を出すことで、契約者が増えたり、他キャリアへの乗り換えが減るなら、効果は大きい。

※カメラを搭載したことで大きくユーザーを増やしたJ-フォンは、そのいい例。単にカメラを付けただけでなく「写メール」を打ち出してメールのトラフィックも増えた

 その一つの例が、メガピクセルカメラになるだろう。各社とも、メールで送信できるのはVGAサイズまで。つまりSXGAが撮れるメガピクセルカメラを付けても、直接のARPU向上は見込めそうにない。外部データカードもそうだ。これを付けたからといって、データ通信料が増えることは考えにくい。

[斎藤健二, ITmedia]

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