次世代EV-DO、ポイントは“放送モード”と“無線LAN”
cdmaOne、1x、1X EV-DOとこれまで後方互換性を維持しながらネットワークを拡張してきたKDDI。au無線アクセス技術部の渡辺文夫部長はEV-DOの拡張に言及、ポイントは“放送モード”と“無線LAN”だと話した。
auのネットワークは、「cdmaOne」を導入して以降、2002年4月に「CDMA2000 1x」、2003年11月には「CDMA2000 1X EV-DO」と進化してきた。
NTTアドバンステクノロジ主催のシンポジウムで3月19日に講演した、auの無線アクセス技術部の渡辺文夫部長は、「EV-DOのエリアもあと1年ほどでほぼ全国ベースで行き渡る。その上に、もう一枚重ねようかなと、ぼちぼち準備を始めている状況だ」と話した。
ポイントは“値段”と“エリア”
新しいシステムやサービスを考える上でのポイントの一つは“値段(パケット代)”だと渡辺氏。「インフラを作るときは、高速通信を作るのが目的ではなく、ビット単価が下がるかがポイント。下がるような方法を考える」と説明する。
もう一つはエリアだ。「ここはユーザーからのクレームが来るところ。一度、基地局を打ったからといって安心、というわけではない。トラフィックが増えたり変化すれば、全国津々浦々で直さなければならない」。
確かにcdmaOne、CDMA2000 1xへのネットワーク拡張は、後方互換性を保ちながら新しいシステムやサービスを導入する「連続的に薄皮を重ねていくような」アプローチ。カバーエリアを担保しやすく、新サービスへの移行もスムーズだった。
そして2003年12月に導入されたEV-DOでは、携帯電話のパケットプランでは初となる「定額制」を導入。「速度はコマーシャルスペック的なもの。ビット単価をいかに下げるかが重要」というように、導入の最大の目的は、コストメリットを打ち出すためだったことを強調した。
コストを下げられた要因の一つは、セクタースループットの効率化だ。一つの基地局に何台もの端末がアクセスしているとき、どのくらい伝送を効率化できるかが重要で、cdmaOneに比べて約3倍効率化できたことがコストを下げる原資になったという(2001年10月の記事参照)。「あとはネットワークをどれだけシンプルに作れるかが、コストを下げる原資になる」。
ダウンリンクオンリーではない、新マーケットを開拓
EV-DOの展開がある程度見えてきたことから、KDDIは次の拡張に着手している。これまでの電話機型マーケットメインという形から、ビデオ電話やIP電話などのコミュニケーション系サービスや監視カメラなどのビジネスソリューション、同報・放送サービスなどの新しいマーケットを創出したい考えだ。
そのために必要なシステム機能の強化点として挙げられたのは、「アップリンクの高速化」「無線QoS、end-to-endのQoS機能」「同報・放送無線機能」「IP伝送のさらなる高速化」など(2月13日の記事参照)。具体的な拡張のポイントとして示されたのは、“放送モード(Broadcast/Multicast service)”と“無線LAN”の2つだ。
放送モードは、現在ひとつひとつの端末に対して配信しているEZチャンネルのようなコンテンツを、同じコンテンツなら同報で配信してしまおうというもの(2月13日の記事参照)。
1キャリアあたりのスループットは200~300Kbpsを目指し、最大12番組を放送できるような仕組みを検討中。ストリーミング放送だけでなく、「全体のファイルをとにかく送って、足りない部分は移動体でチャンネルを張って補完する」というカルーセル伝送(一定周期で同じ内容のデータを送りつづける技術)を用いたファイル転送も可能だという。「こういう話は標準と表裏一体なので、標準化が終わってから──ということになるが、今、標準化がほぼ完了した段階」
もう一つは無線LANへのアプローチだ。cdmaOneの上に1X、その上に1x EV-DOが重ねられた上に、さらにワイヤレスブロードバンドが加えられた図を示し、「何らかのコンパチビリティやシームレス性を担保したようなものを作っていく」と説明した。「ぼちぼち準備を始めている状況」
ただし802.11b的なホットスポットを打っていくわけではなく、セルラーの基地局や、PHSの基地局を生かしたものになるようだ。「スループットはそこそこベストエフォートで落ちても仕方がない。ただ、全体の組み合わせとしてユーザーから見た使い勝手がレベルアップするような方式をとる」。
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