Mobile:NEWS 2003年7月17日 07:51 PM 更新

クアルコム、“EV-DO以降”の最新ロードマップ

クアルコムジャパンの松本社長がCDMA2000について、WIRELESS JAPANで講演。W-CDMA陣営がHSDPAを使った3.5G、4Gの話まで出ている中、“CDMA2000の先”はどのような技術になるのか。EV-DO以後のCDMA技術の進展について話した。

 7月17日に行われたWIRELESS JAPANの講演では、クアルコムジャパンの松本徹三社長が登壇。CDMA2000 1xを中心とした3G技術の次なる展開について話した。

 北米や韓国を中心に普及しているCDMA2000 1xは、国内でもKDDIが採用している第3世代(3G)の通信方式。そのチップのうち、Qualcommは約7割のシェアを持つリーダー企業だという。

 KDDIの通信方式の進化は、Qualcommチップのロードマップにほぼ沿っており、同社が次にどのような通信方式の進化を目指しているかが今後の指標となる。KDDIは現在CDMA2000 1xの普及を急ピッチで進めており(7月7日の記事参照)、既に契約者の半数以上が対応端末を利用している。今年の秋には、最大2.4Mbpsの通信速度を持つCDMA2000 1x EV-DOの導入を予定している(3月28日の記事参照)。

EV-DOの更なる進化〜無線LANよりEV-DO

 松本氏が「3Gでもまだやることが山積している」と話すように、EV-DOだけ見ても、まだ進化は止まらない。


 まずは超小型の基地局を利用した「ピコセルEV-DO」と呼ばれる技術だ。これは802.11bなどの無線LANの対抗技術で、「11bに類似したコストで類似した目的を達成する」(松本氏)もの。

 基地局は「ノートPCなみの大きさで、コストは無線LANの基地局より若干高い程度」。屋内で100メートル、屋外で500メートル程度のカバーエリアを持つ。こうした基地局を屋内などに設置し、ホットスポット的にEV-DO端末から利用する。

 「3Gを中心に、要所要所を無線LANでカバーするという考えはいいが、(802.11bが使う)2.4GHzは無免許なので(混信などの)トラブルがある。(802.11aが使う)5GHzは扱いにくいし電力を食う。それならば、同じCDMA技術を使って無線LANのように安い基地局ができないか」という発想が、ピコセルEV-DOを生み出した。

 メリットは、広いエリアも屋内も同じ通信方式で対応できることだ。3G+無線LANと異なり、端末をデュアルバンド化する必要がなくなる。「同じ端末で、同じ周波数で全部がこなせる。これが理想の姿」

 また、電波状況によってパフォーマンスが大きく変化するEV-DOの特性もカバーできる。屋内に設置したピコセルEV-DOであれば、最良の電波環境で利用できるほか、基地局一つあたりのユーザーが少なくなるため、通信速度の向上が見込めるからだ。

地上波デジタル放送より、EV-DO?

 松本氏は、TV放送もEV-DOネットワーク上で流すことが可能だと主張する。EV-DO技術を使ったブロードキャストにより、「(EV-DO用の帯域を)数チャンネル使えば、ソフトウェアの変更だけでTV放送が見られる。来年の秋くらいには実現できる」と言う。

 また、地上波デジタル放送受信機能の内蔵は(7月10日の記事参照)、「コスト的にいかがなものか」とも。

GSM/GPRSサポートは標準機能に

 国際ローミングの実現については、「将来の高機能のチップには、全部、GSM/GPRSの機能を入れていく方針(7月16日の記事参照)。使うかどうかはオペレータとメーカーが決めるが、チップとしては入れていく」と話した。

 国際ローミングといえば、ドコモや欧州勢が推すW-CDMAが話題に挙がることが多いが、「規格が2つか3つならば、1チップの中に両方入れてしまえばいい。国際会議で延々議論をするよりもそのほうが安上がり」だと揶揄。実際、CDMA2000とGSMの両方をサポートすれば、ほぼ世界全域でローミングが可能となる(2001年11月の記事参照)。

2x EV-DOも規格化済み。速度はさらに倍に

 さらに、1x EV-DOのチャンネル2本を束ねた2x EV-DOも、「2Xについてはデモもやったし規格化も進めている」と話す。W-CDMAが1チャンネル当たり5MHzという帯域を使うのに対し、1チャンネル1.25MHzのEV-DOであれば、複数チャンネルを束ねることで柔軟に速度を上げられると主張する。

 「2xは2つの効能がある。2チャンネルあるので、音声とデータを同時に使える。あるいは、両方データに使えば2倍のピークレートが得られる」(松本氏)

 また、複数のアンテナを利用するアンテナダイバーシティは、「来年には提供できる予定。CDMA2000 1xのキャパシティが1.5倍に増加する」。

※クアルコムではアンテナダイバーシティと呼ぶが、複数のアンテナを用意して感度の良い方を使う、一般的なダイバーシティとは異なる。複数のアンテナ両方で受信したデータをベクトル加算してS/N比を上げる技術だという。受信のみに利用される(7月24日付記)

 移動しないで利用することを前提とした1x EV-DOイコライザーも進めている。「ソフトを変えることで20%くらいの効率アップは目処が立っている。これも来年の夏くらいには実現していきたい」

※CDMAはマルチパスを利用できるがデータ通信が高速になるにつれ拡散率が上がり処理が大変になる。静止時ならマルチパスの波形を一度解析してしまえば、その後ある程度予想がつく。これがイコライザーだ。ただしハードウェアの変更も必要となるため、来年中は難しいとクアルコムから追加の説明があった(7月24日付記)

 なお、音声とデータの両方を扱える1x EV-DV(EV-DO Rev.D)については、効率からいえばデータと音声は分離したほうがいいと話し、「日本では必要ない。トラフィックが少なく、周波数も限られた地域向け」だとした(2001年の記事参照)。

BREWをOSとして、豊富な機能を持った端末を安く提供

 通信方式とは別に、Qualcommが推し進めるのがアプリケーション実行環境であるBREW。現在のところはゲームなどのアプリケーションが中心のため、Javaとの比較で語られることが多いが、「これはOSと考えていただいていい」と松本氏(2002年3月の記事参照)。


Qualcommは、ほとんどの機能がBREW上で動く世界を目指す。現在はAPIであるBREWだが、実際にはOSに等しい役割を果たすという

 BREWの目的は、留まることを知らない端末の高機能化に当たり、「どうしたら、メーカーが開発期間を短縮して高機能なものを安価に作れるか」という要望に応えることだ。Javaのように独立したアプリケーションを追加するためではなく、メールや通話機能など携帯電話の基幹となる機能をBREWアプリとして搭載することで、ソフトウェアの共用化、開発効率のアップを目指す。

 「メーカーはBREWさえサポートしておけば、いろいろなソフトをサポートする必要はない。この考えで行くと、BREWがOS。ある程度セキュリティも考慮しなくてはいけないし、マルチタスクもこなさなければならない。しかしPCのようなOSにはならない。このOSはPCのために作られたOSではなく、相当軽いリアルタイムOSでなくてはならない」

ツインCPU+汎用OSか、ハードロジック+RTOSか

 松本氏は、さらに携帯電話のアーキテクチャーに関するQualcommの方向性も語った。

 端末の高機能化に当たり、ドコモやNokiaなど多くは高速なCPUを搭載し、Symbian OS(6月26日の記事参照)やMobile Linuxなど高機能な汎用OSを積むという方向性を採っている。ドコモは「FOMA F2051」などで、アプリケーションCPUとしてTIの「OMAP」を、OSとしてSymbian OSを搭載している。

 しかし松本氏は“携帯のPC化”には否定的だ。必須機能はハードウェア回路として搭載し、“何でもできるCPU”を携帯に載せる必要はないと説く。「そんなにCPUをアップしない。できるだけハードロジックで処理する。いろんな多様性を必要とするものはサーバシステムで処理する。これがモバイル環境のあるべき姿ではないか」

 理由の1つは消費電力だ。「ツインCPUはいかがなものか。モバイルの世界はパワーマネジメントとメモリマネジメントが命。我々はワンチップソリューションに邁進する。PC並の多様性を必要とするものもあるので、この場合は2CPUを1チップにまとめる(5月23日の記事参照)」

 もちろん、Qualcommチップにさまざまな回路をハードウェアで搭載することで、端末メーカーの自由度は大幅に下がる。これまでメーカーは独自の部品を使って開発することで独自性を出してきたが、お仕着せのチップ上にOSとしてBREWを搭載するという道を進めば、“基本部分はどれも同じ”端末が増えていくだろう。また、MicrosoftとIntelを例に出すまでもなく、携帯のCPUとOSに当たる部分を1社が独占するという懸念もある。

 松本氏は、世界にはドコモやNokiaなど大きな勢力がありQualcommの独占はあり得ないと、まず話す。メーカーの独自性についても、「開発者から見ると自由に作りたいというのがあるだろうが、実際のビジネスで見ると規模のメリットがないと結局開発倒れになる。2年前には、『ここで2ミリワット稼いでるんです。ここが我々の強みです』と言っていたメーカーが、だんだん変わってきた。自分で特徴を出すところは絞って、あとは(Qualcommに)お任せしたいとなってきた」と言う。

 「独占寡占の弊害と効率性のバランスをどう見るか。いずれにしてもキャリアのサービスと連携して一気通関にやることがいいものを早く出せる道ではないか」



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▼ 米Qualcomm

[斎藤健二, ITmedia]

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