放送エリアはどのくらいか?(1セグ&モバイル放送):1セグ放送&モバイル放送・徹底比較(最終回)(2/2 ページ)
最後は、移動体サービスとして重要な“提供エリア”を見てみたい。両陣営がお互いをどう見ているか、コメントも交えつつお届けしよう。
あくまで「補完放送」である1セグ放送
1セグ放送はというと、モバイル放送でいうギャップフィラーにあたるような地上系インフラはない。電波塔からの、UHF帯(470MHz~770MHz)を利用した放送波に頼ることになるが、これでエリアは十分なのだろうか。
これについては、日本テレビ放送網のメディア戦略局メディア戦略部 佐野徹氏が2003年の実験を元に、面白いコメントをしている。
「例えば(JR)新宿駅のホーム。全部受けられました。プラットフォームを結ぶ地下通路。階段など空が見えている場所なら受かる(=電波が受信できる)。渋谷ハチ公前のカラオケボックス。OKだった」(10月22日の記事参照)
「1セグは13セグメントのうちの真ん中を使う。1セグサービスに追加投資はほとんどいらない」(同氏)とも話しており、基本的に1セグ放送サービスはHD放送同様の全国サービスになる見込みだ(地上デジタルのエリアは下写真、もしくはこちらを参照)。
TBSのメディア推進局 デジタル放送企画部の井川泉氏も、「(1セグメント放送の実験では)八王子や横浜でも受信できた。そんなに心配していない」と話す。
東京タワーからの放送波が届く範囲は、固定テレビでの受信に比べると多少狭まるかもしれないと断りつつ、「ほぼカバーできる」という。このために、わざわざ地上系インフラを構築しなおすということもないようだ。
同氏はまた、言葉を選びつつ“エリアカバー率がすべて”でもないことに言及する。
「固定のテレビは、公共の電波を使っているのだからあまねく受信してもらう必要があるが、1セグ放送は『補完放送』(10月2日の記事参照)」。多額の投資をしてまで、エリアにこだわることはしない方針だ。
究極的には、モバイル放送と1セグ放送では「有料放送と無料放送」という大きな差がある。有料であるモバイル放送では、十分なエリア拡大を図らなければサービスに加入してもらえない。しかし1セグ放送は、「固定テレビのサイマル放送を、外でちょっと視聴できる――」という位置付けですむ。この点が、サービスの多くの性質にかかわってくるようだ。
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