Flashより優れた画面カスタマイズ技術? Qualcommの「uiOne」:BREW 2006 Conference
携帯のユーザーインタフェースを切り替える方法として、例えばFlashがある。しかしQualcommがこれにとって変わる技術としてアピールするのが「uiOne」だ。
BREWプラットフォームの開発元である米Qualcommは、ユーザーインタフェースのカスタマイズ技術「uiOne」の開発者キット、「uiOne Software Development Kit(SDK) 1.2」の配布を開始した。まずはBREWの認可済み開発者向けに、BREW Extranetを通して配布される。バージョンこそ1.2だが、同技術のSDKが一般に配布されるのはこれがはじめて。
uiOneは昨年の「BREW 2005 Conference」で発表されていた技術(2005年6月3日の記事参照)。これを使うことで、開発側はメニュー画面の外観(テーマ)を簡単に切り替えられる。例えば携帯のメニュー画面にそのキャリアのブランドイメージを反映させたり、企業で社員用に配る携帯に会社のロゴマークを入れたり……といったことが可能だ。ちょうど着信音を変えるように、ユーザーが気分にあわせて画面の外観を変えることもできる。
Flash対応携帯でも、UIのカスタマイズは行える。だがuiOneの強みはBREWプラットフォームの基盤に深く組み込まれていることだ。uiOneはQualcommが買収した英Trigenixの技術がベースになっているが、かつてTrigenixが提供していた画面カスタマイズツールは、Flash同様に画面の見た目の部分など表層をカスタマイズするだけのツールだった。しかし、Qualcommは同社を買収するとこのカスタマイズ技術をBREWプラットフォームのもっと根底部分からサポートするように組み入れた。
これによって、より柔軟な操作のカスタマイズが可能になった。例えばuiOneを使って特定企業の社員用に携帯電話をカスタマイズするようなケースで、ただ外観を変えるだけでなく、トップレベルのメニューに、その企業で使っているカスタムアプリケーションを組み込んだり、不要なメニュー項目を別の画面に移動したり削除したりできる。
キットにはカスタムUIの開発、シミュレーション、実行に必要なツールに加え、開発したアプリケーションをPC上でテスト実行するためのツールやサンプルのソースコードも含まれている。ソースコードは、uiOneによって実現可能なさまざまなカスタマイズ例を提示したもので、開発者はこのソースコードを出発点として独自のインタフェースを開発できる。
パーソナライゼーションのツール
uiOneには画面のカスタマイズに加え、携帯を個々のユーザーの趣向にあわせてパーソナライズするための機能も用意されている。例えば“天気予報”“ニュース速報”などの単機能アプリケーションを追加する機能もある。
「これはPCでいうとYahoo!ウィジェットやWindows Vistaのガジェット、Mac OS Xのダッシュボードウィジェットのようなものだ」と、Qualcomm Internet Services(QIS)のグローバルキャリアリレーションズ担当、アービン・チャンダー副社長は話す。「携帯はPCに比べて画面が小さいため、1度に表示できる情報は1つだけ。それを上下左右にスクロールさせて表示することになるが、ユーザーは自分の趣向にあった情報アプリケーションを追加して携帯をカスタマイズできる」
uiOneの仕様では、こうしたウィジェットを販売するmShopというオンラインショップも提案されている。
現在は5社がuiOneの採用を発表しており、米SprintとニュージーランドのTelecom New Zealand(TNZ)は既に本サービスを始めている。英O2も年内にサービスを開始予定だ。なお、日本でBREWの技術を積極的に活用し続けているauは、uiOneの採用については今のところ何の発表も行っていない。
QISでキャリアリレーションズを担当するスティーブン・ブラウン副社長は「現在、Sprintは、ダウンロード可能なカスタマイズ用テーマの販売に注力している」と話す。TNZも同様だ。一方英O2は、uiOneを同キャリアのブランドを広めるためのツールとして捉えているようだ。欧州の端末はキャリアよりも“携帯メーカー色”が色濃く反映されている。
「uiOneを使えば、同じキャリアの携帯ならメーカーに関わらず同じような画面デザインやメニュー構成にすることもできる」とブラウン氏。「キャリアが自らのクリエイティビティーを活かして、これをもっといろいろ面白いビジネスに活用してくれることを期待している。例えば(米国のMVNO事業者である)Amp'd Mobileのようなことは、uiOneを用いることでもっと簡単にできるはずだ」
Amp'd Mobileは10代後半から20代のヤングアダルト層をターゲットに、彼らのライフスタイルにあった携帯端末やコンテンツを提供するとうたっている。同社は携帯のデザインからメニュー画面、番組コンテンツ、本社の建物の外観にいたるまで一貫して「かっこよさ」を追求した統一された世界観を貫いているという。
「今回、uiOne SDKをモバイル出版社、開発者そしてクリエイティブコミュニティーに提供できたことは、カスタムUIを広めていく上で重要なステップだ。uiOne SDK version 1.2がカスタムUIを広める触媒になると同時に、カスタムUIに対する要求の度合いを高めるきっかけになると期待している」(QISのミッチ・オリバー副社長)
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