サイゼリヤは“折りたたみスマホお断り”なのか? セルフ注文画面が話題、真意を実機で確かめた
サイゼリヤの注文システムと折りたたみスマホの小型タブレットに近い画面比率の相性の悪さがSNSで話題となった。端末を縦に持ってもシステムが横向きと誤判定しアクセスを制限する縦横デッドロック現象が原因とされる。利用者はカバーディスプレイの使用や画面分割機能を活用しこの珍しい仕様上の障壁を乗り越えようとしている。
5月上旬、SNSや話題をまとめるネット上において、「サイゼリヤ」が提供するスマートフォン向けセルフオーダーシステムと、「折りたたみスマートフォン」の相性の悪さが大きな話題となった。複数の折りたたみスマートフォンユーザーから同様の現象が報告されている。
そもそもサイゼリヤのスマートフォンを使った注文システムはタブレットを介さずに注文する仕組みだ。利用者は席に置かれた札のQRコードを読み取ってページを開き、人数を選んだ後、メニュー(テーブルに置かれたメニューブック)を見ながら商品番号をスマートフォンの注文画面に入力し、数量を入力して注文かごに追加するという流れだ。
国内で展開される「横開き型」折りたたみスマートフォンの特徴
そもそも、今回やり玉に挙がった折りたたみスマートフォンとはどのような構造を持つのか? まずは特徴やスペックを理解しておこう。国内市場では現在、主に「Google Pixel 10 Pro Fold」「Galaxy Z Fold7」「OPPO Find N6」という、いわゆるネット上に画像が上がっているような「横開きタイプ」の折りたたみスマートフォンが販売されている。
これらの最大の特徴は、本を開くように展開することで小型タブレットサイズの「インナーディスプレイ(メインディスプレイ)」を利用でき、閉じれば通常の1画面スマートフォンと同等のサイズ感になる「カバーディスプレイ(外側ディスプレイ)」を利用できるという構造を持つ。このうち、主に開いたときに利用できるインナーディスプレイでの挙動が今回指摘されたのだ。
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インナーディスプレイでの利用を阻む仕様とは ネットに「縦横デッドロック」とも
このように、各社の折りたたみスマートフォンは非常に高性能だが、共通しているのは「開いた状態のインナーディスプレイが8型前後であり、解像度の数値からも分かるようにアスペクト比(縦横比)が正方形に近い形状をしている」という点だ。
サイゼリヤのセルフオーダーシステムは、スマートフォンを横向きにした状態での利用を制限し、縦画面での利用を促す仕様になっている。スマートフォンの縦画面で利用することを想定し設計されているためだ。利用者が折りたたみスマートフォンを縦に持っていても、開いた状態ではインナーディスプレイが小型タブレットの比率に近いため、システムが画面の縦横比から「横画面だ」と誤判定してアクセスをブロックしてしまうのだ。
この現象はネット上で「縦横デッドロック」などと呼ばれ、多くの意見が交わされた。もともとサイゼリヤの注文システムは、UI(ユーザーインタフェース)設計が優れていると高く評価されていた。それだけに、今回の思わぬ落とし穴に対して「これはサイゼ側の完全敗北」と面白がる声や、開発エンジニアの苦労を推し量り「特殊な端末への対応は大変そうだ」と同情する声も上がっている。
技術に詳しい利用者からは、判定の仕組みに関する考察も寄せられた。具体的には「OSのAPI経由ではなく、画面の縦横比から直接計算して判定しているのではないか」といった推測や、かつての「BlackBerry」のような正方形に近い画面を考慮していない設計への指摘だ。また、Webサイトが横画面と判定した瞬間に全ての操作を封じる作りそのものに疑問を呈する意見も見受けられた。
カバーディスプレイを活用した有効な回避策もネット上に
では、これらの高価な最新デバイスを持つ利用者は、自前の端末からサイゼリヤで注文できないのか。これに対し、多くの利用者が「端末を閉じてカバーディスプレイを使えばよい」という有効な回避策を共有している。前述のスペックからも分かるように、Pixel 10 Pro FoldやFind N6、Galaxy Z Fold7の外側に搭載されたカバーディスプレイは、一般的な1画面のスマートフォンと同じ縦長のアスペクト比を持っている。
実際にGoogle Pixel 10 Pro Foldをサイゼリヤへ持参して挙動を確かめたところ、インナーディスプレイでは利用できなかった注文画面がカバーディスプレイでは利用できた。インナーディスプレイではなく、折りたたんだ状態でカバーディスプレイからアクセスすれば、システムに「横画面」とブロックされずに注文画面を利用できるわけだ。
実際、過去には「マクドナルド」のモバイルオーダーでも「開いた状態だと使えなかったが、折りたためば使えた」という同様の報告が挙がっていた。カバーディスプレイの使用は、折りたたみスマートフォン利用者にとって確実な防衛策となっているようだ。さらに、大画面のインナーディスプレイを開いたまま「ブラウザを分割表示にして表示領域を強制的に縦長にする」という、マルチタスク機能を生かした自己流のハックを披露する利用者も現れている。
特殊な画面比率やサイゼリヤの設計を総括 今回の件は極めて珍事
一方で、今回の騒動を受けて「いつか欲しいと思っていたが、こういう落とし穴があるのか」と落胆する声も散見された。各社が最新技術を詰め込んだ最先端のデバイスゆえの使いにくさが露呈した格好だが、横開きではなく縦に開く「Flip型」の折りたたみスマートフォンであれば、開いた状態でも縦長になるため問題なく使えるという指摘もある。デバイスの進化とWebシステムの設計がかみ合わずに起きた、折りたたみスマートフォンならではの極めて珍事といえる。1画面のスマートフォンではこうした話題は生まれないためだ。
このように、サイゼリヤの優れた注文システムと折りたたみスマートフォンの特殊な画面比率が、奇妙な形で衝突した結果、今回の話題が生まれたのだ。システム側の改修には時間がかかるかもしれないが、利用者はカバーディスプレイや画面分割機能を駆使して、この仕様をどうにかして乗り越えようとしていることがうかがえる。今後、さらに多様な形状の端末が登場する中で、Web設計の在り方が改めて問われる事例となりそうだ。
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