楽天G三木谷氏「(モバイル)ユーザーに迷惑かけない」――KDDI側も理解 気になる2社ローミングの行方は
楽天グループは5月14日の決算説明会で、KDDIとのローミング契約に関する見解を表明した。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、2026年9月に期限を迎える契約について、KDDIへの感謝と共にユーザー利便性を最優先する姿勢を強調した。10月以降の具体的な運用やトラフィック管理について両社は現在も協議を継続。
楽天グループは5月14日、2026年度第1四半期の決算説明会を開催した。この中で楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、競合他社であるKDDIとのローミング契約に関する今後の見解を述べた。12日には、KDDIの松田浩路社長が決算説明会の場でローミングの期間満了に伴う方針に言及していた。これの受け止めを問われた三木谷氏は、両社の協力関係やユーザーへの影響について持論を明かした形だ。
三木谷氏は、これまで多大な協力を受けてきたKDDIに対して深い感謝の意を表明した。「KDDI様の多大なるご協力には本当に感謝している」(三木谷氏)
それに続けて次のように述べた。「通信サービスは国民の財産である周波数を(われわれ通信事業者がお借りする形で)使用して提供するものであり、何よりもユーザーの利便性を最優先に構築されるべきだ」という信念を同氏は語った。「やはり国民に対するワイヤレスコネクティビティ、いわゆる通信サービスというのは、国の財産である周波数をお借りして提供していくもの」(三木谷氏)
「海外などであれば、この周波数に対して何兆円、時には何十兆円というオークションフィーを払って使用することもある。一方で我が国の場合は、エンドユーザーという観点から、基本的には海外に比べればそれほどの周波数使用料を払わず、国民向けのサービスとして行っている。各種法律に関しても、『一番はユーザーに迷惑をかけないこと』をベースに構築されており、われわれ(楽天モバイル)もそのような関係でKDDIさんと一緒にやってきたと考えている」(三木谷氏)
三木谷氏はこの共通認識をKDDI側も十分に理解しているとの信頼感を強く示した。ここで気になるのが「ユーザーに迷惑をかけない」という表現だ。実はこれ、楽天モバイルが2019年に参入した際にも用いられていた。三木谷氏はネットワークが「借りたものであり、ユーザーのためにある」という点を強調し、大義名分を再び語ったわけだ。
2026年10月以降のローミング運用体制は不透明
一方のKDDI側では、松田社長が楽天モバイルとのローミング協定が開始から7年を経過し、2026年9月に1つの区切りを迎える点に触れていた。楽天モバイルの自社エリアが全国的に拡大している現状を鑑み、ローミング提供が当初担っていた役割はすでに終えたとの認識を松田氏は示している。KDDIは次期中期経営計画において、楽天モバイルからのローミング収入による増収分をあえて見込んでおらず、収益構造の変化を織り込んでいる。
2026年10月以降のローミング運用体制について、松田氏は一部のトラフィックハンドリングなどでどのような協力体制を構築できるか、(2026年5月)現在も協議を継続していると説明した。同社は自社のauユーザーの通信品質維持を大前提に掲げている。混雑が予想されるエリアについては、十分な猶予期間を設けて楽天モバイル側へ通知した上で、ローミング提供を順次終了させているという。これにより自社網への過度な負荷を避け、安定した通信環境を維持する方針だ。
松田氏は、現在のローミング利用状況について、サービススペックの影響で想定以上のトラフィックが自社網に流入していると指摘した。KDDIはあくまでauのお客さまに影響がない形で提供を進めてきた。将来的に楽天モバイルの自社エリア構築が進むことで、KDDIが得られるローミング収入は減少していく見通しだ。松田氏は、この変化を「協調と競争」という関係性に沿った自然な流れだと捉え、次なるステップへの準備を急いでいる。
楽天モバイルのサービス内容は、月額3278円でデータ通信が実質使い放題となる「Rakuten最強プラン」が主軸となっている。このプランは、安価で大容量の通信を求める若年層を中心に評価を得ており、実際に2025年4月にはひと月に2.4TB(テラバイト)もの大容量データを使用するユーザーがいることがSNSで話題になった。
しかし、KDDI側からすれば「いや、当初の話とは違うじゃないか……」というのが本音。もともとはKDDI側のユーザーに迷惑がかからない形でのローミング協定だったためだ。あくまでも楽天モバイルの自社回線の補完という建て付けだ。
松田氏は5月12日の決算説明会で「これまでも申し上げている通り、サービススペックによって、当社網へのトラフィックは想定以上になっている。もともとauのお客さまには影響がない形で進めているため、そうなりかねない混雑エリアについては、十分な期間を持ってお伝えして終了しているところだ」と話した。
両社の協議の行方に今後も注視
モバイルユーザーにとっては、自身が利用するサービスの品質が維持されるかどうかが最大の関心事だ。三木谷氏の「ユーザーに迷惑をかけない」という発言、楽天モバイルの既存契約者にとって1つの安心材料となるはずだが、10月以降の進展が具体的に見えてこない以上、現時点で安堵できる状況とは言いがたい。
両社の協議の行方と具体的な運用形態がどう落ち着くのか――今後の動きに目が離せない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
楽天モバイル、2026年は「ネットワーク強化の年」に 2000億円超を投じ、都市部や地下鉄の“5G化・増強”を加速
楽天グループは2025年度通期決算を発表し、連結およびモバイルセグメントのEBITDA黒字化を達成した。モバイル事業は契約数1000万回線を突破し、今後は若年層に加えシニア層の獲得やARPU向上に注力する。2026年は「ネットワーク強化の年」と位置付け、2000億円超の投資で都市部や地下鉄の通信品質を改善する。
楽天モバイルのネットワーク改善戦略 都内地下鉄は7月に対策完了へ、「つながりやすさでもNo.1を目指す」と矢澤社長
楽天モバイルが2月2日、「つながりやすさ強化宣言2026」と題して、ネットワーク改善の見通しについて説明した。繁華街や混雑する場所では5G基地局を整備してトラフィックを分散している。都内の地下鉄は、2026年7月に電波対策が完了する見通しだ。
楽天モバイル、1000万回線突破も残る「通信品質」の課題 5G SAの早期導入とKDDIローミング再延長が焦点に
楽天モバイルは契約数1000万を突破し、三木谷氏は次なる目標として「早期に2000万」を掲げた。 ユーザー急増とデータ無制限プランにより一部で品質が低下しており、5G導入や地下鉄の帯域拡大を急ぐ。 2026年には5G SAの導入やKDDIローミングの終了を控え、通信品質とエリア維持の両立が急務だ。
「楽天モバイルだけが自然災害でもつながるのではないか」と三木谷氏 衛星とスマホの直接通信、2026年内に“できるだけ早く”開始
「楽天モバイルだけが自然災害でもつながるのではないか」――。楽天グループが2025年2月14日に開催した決算説明会で、三木谷浩史会長(楽天グループ社長を兼務)はこのように話した。「2026年のできるだけ早い段階で、衛星と携帯電話の直接通信サービスを開始したい」としている。
楽天モバイルは「お試し割」を諦めていない 実現を阻む要因は何か解説
楽天モバイルは2026年1月14日の総務省委員会にて、現行の「お試し割」に関する提言資料を提出した。制度が各社で実現せず形骸化している現状を指摘し、実効性のある改善策と具体的な制度運用を強く求めている。利用者が事前に通信品質を容易に確認できる環境を整え、形骸化を防ぐための抜本的な見直しを提言している。


