功を訴えるキャリア、罪を問う構成員──SIMロックの是非をめぐる認識のずれ:「モバイルビジネス研究会」第2回会合(2/2 ページ)
総務省がSIMロック解除やインセンティブモデル廃止など、これからのモバイルビジネスのあり方を検討する「モバイルビジネス研究会」の第2回会合を開催。研究会構成員とキャリア間で議論は平行線をたどり、認識のズレが浮き彫りになった。
SIMロックの是非、構成員とキャリア間で議論は平行線
3者のプレゼンテーション終了後には、自由討議の時間が設けられた。構成員からはSIMロック解除に対する質問が集中した。
座長である齋藤忠夫氏(東京大学名誉教授)は「このプレゼンテーションの内容ではSIMロックを正当化する理由にはなってない」と冒頭から厳しい指摘。「1つのキャリアでしか使えない端末だから、価格が高くなってしまっている。マルチモードとしてさまざまなキャリアを使える端末もあるのだから、SIMロック解除を検討すべきだ」と意見を述べた。
さらに「音声とSMSしか使えない端末でも、ニーズはあるのではないか。SIMロックを解除しても影響ないはず」(泉水文雄・神戸大学法学部教授)、「掃除機のゴミパックもメーカー純正品は高い。しかし、最近ではどのメーカーでもマルチに使えるものもあり、とても安い。携帯電話もSIMロックを外して、マルチに使える可能性を探すことが重要なのではないか」(高橋伸子・生活経済ジャーナリスト)といった質問が飛んだ。
NTTドコモの伊東氏は「SIMロックを外すメリットもある。しかし、音声のみ利用できればいいとは言っても、その端末が5万円では売れないと思う。ドコモとしてもSIMロックを外すビジネスモデルも考えてはいるが、いい代案が見つからない。今のビジネスモデルがバランスがとれていると考えている」と反論する。
座長の齋藤氏は「固定網ではすでにネットワークを解放しているが、携帯電話ではそれができていない。なぜなのか。キャリアは周波数を割り当てられているなどの特権を持っている。これまで設備投資をしてきたのは立派なことだが、反面、国内で世界的にまだ普及していない3G化を積極的に推進し、高機能路線を追求したために、それにつきあわされたメーカーの国際競争力は大きく落ちたのが実態ではないのか」と指摘した。
これに対し、ドコモの伊東氏は「固定網と移動通信網では生い立ちが違う。固定網は設備投資の競争はなかったが、移動通信網は、競争関係にあるために、設備投資をしながらネットワークを解放するというのは正直、しんどい。国際競争力という面では、W-CDMAは成功しつつあり、世界でも広まりつつある。またiモードの海外展開も失敗したと言われてはいるが、すでに世界で700万契約を超えており、アジアでもアライアンスにより、さらに広がりを見せている。まだ可能性は充分にあると思っている」と対抗した。
このように後半の約1時間は、“構成員たちの質問や意見に対し、懸命に現在のビジネスモデルを理解してもらおうと説明するキャリア”といった構図のやりとりが展開された。
モバイルビジネス研究会の第3回会合は2月15日に開催される予定で、KDDI、CIAJ、インデックスがプレゼンテーションを行う予定となっている。
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