フィルタリングサービスの原則適用化で、未成年向けモバイルコンテンツはどうなる? :神尾寿の時事日想
携帯3キャリアは、未成年者に対してフィルタリングサービスの原則適用化に踏み切った。携帯電話による不健全なサイトへのアクセスを防ぐ目的だが、大きな影響を受けそうなのが、モバゲータウンなどの“一般サイト”である。
多くの未成年者が、新たに携帯電話を手にする春商戦。それを前にして、携帯電話キャリア各社が、未成年ユーザーの「フィルタリングサービスの原則適用化」に踏み切った。
→NTTドコモ(参照記事)/KDDI(参照記事)/ソフトバンクモバイル(参照記事)
ここでフィルタリングサービスについて、少し解説しておこう。
携帯電話向けコンテンツには、各キャリアが用意する「公式サイト」のほかに、様々な企業・個人がインターネット上で公開した「一般サイト」がある。前者はキャリアが内容を審査し、それに合格したコンテンツしか登録できない。一方、後者は様々な企業・個人が自由に開設できるため、PC向けのインターネットサイトがそうであるように、内容に明らかな犯罪性がないかぎり公開は自由だ。よく言えば玉石混淆、悪く言えば無秩序な状態にある。
今回、注目されている「フィルタリングサービス」とは、その名のとおり、携帯電話からアクセスできるコンテンツを“ふるい(フィルタ)にかける”ものだ。アダルトサイトや出会い系サイト、アンダーグラウンドな掲示板、暴力・グロテスクなど不健全や利用者トラブルが起きやすい内容のコンテンツへの接続を排除し、未成年者がアクセスできないようにする狙いである(参照記事)。
未成年者の携帯利用トラブル増加が社会問題化
なぜ今、各キャリアが一斉にフィルタリングサービス導入に動いたのか。
未成年者向けのフィルタリングサービスは、実は以前から携帯電話キャリア各社が用意していた。しかし、これまでは保護者による「選択制のサービス」だったことと、保護者がフィルタリングサービスの必要性を十分に理解していなかったことから、この機能の利用があまり進んでいなかったのが実情だ。結果として、多くの未成年ユーザーが、一般サイトに自由にアクセスできる環境のまま、携帯電話を利用している。
しかし近年になって、携帯電話を使った未成年者の不健全コンテンツへのアクセスや、出会い系サイトやプロフサイト(※)、SNSの利用を通じたトラブルが増加。さらには子ども同士が掲示板を通じてネットいじめやプライバシーの侵害、誹謗中傷をするケースも顕在化してきている。携帯電話は子どもたちにとって“手軽・身近な情報ツール”である反面、一般サイト接続機能によって“無制限にネットにつながってしまう”問題が続出してしまったのだ。
未成年者の携帯電話利用トラブル増加を受けて、総務省は昨年12月、青少年が使用する携帯・PHS端末におけるフィルタリングサービス利用促進を指示。業界団体を通じて各キャリアに対策強化を呼びかけた。今回のキャリア各社の動きはこれに呼応したものであり、1月9日にソフトバンクモバイル、1月15日にはNTTドコモとKDDI (au)が、未成年ユーザーは「フィルタリングサービスを原則、適用化」する方針を発表(※)。親権者が解除手続きをしない限りは、新規加入者はもちろん、既存の未成年ユーザーにもフィルタリングサービスが適用されることになる。
モバゲータウンなどには“強い逆風”
未成年者の携帯電話利用トラブルが存在する以上は、コンテンツ・サービス利用の健全化に向けた取り組みは必要だ。今回、携帯キャリア各社がフィルタリングサービスの「原則、適用化」に踏み切ったことは正しい選択であり、むしろ遅すぎたくらいだ。フィルタリングサービスは、“ケータイにとってのシートベルト”といえる。今後は、“親名義で契約した携帯電話を子どもが使う”ケースを想定し、契約者と使用者をキャリアが把握・管理した上で、フィルタリングサービスの適用に漏れが出ないような仕組みも必要になるだろう。
一方で、今回の未成年者のフィルタリングサービス適用化が“逆風”になるケースも出てくるだろう。
例えば、中高生に人気のモバゲータウンは、今回のフィルタリングサービス適用後は全キャリアともに未成年者の利用ができなくなる。
「(例えば)モバゲータウンは出会い目的の利用を禁止し、コンテンツのチェック体制を敷いていますが、実際の出会いが100%防ぎ切れているかというと、そうではない。隠語でのやりとりなど、(出会い利用の)抜け道を完全に防ぎ切れていない状況と認識しています。
これはモバゲーだけに限りませんが、少しでもリスクがある以上、(フィルタリングサービスでは)SNSや掲示板、アバターなど、コミュニケーション系コンテンツは、未成年者の利用を一律で制限していくしかないでしょう」(キャリア幹部)
これ以外にも、若年層向けに一般サイトで運営していたサービスは、「キャリアの公式サイトになる」道か、「未成年者を利用対象にしないビジネスモデル」への転換を迫られるだろう。
現在のモバイルビジネス全体に求められている「社会的責任」を鑑みれば、未成年者に対するフィルタリングサービスの原則適用化は必然的な流れだ。その中で迅速な舵取りをし、成長のチャンスをつかむのはどこか。今年の春商戦は、モバイルコンテンツ分野の動きにも注目しておく必要がありそうだ。
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