「2月のプリペイド契約の数は異常」──KDDI 小野寺正社長
KDDIの小野寺正社長兼会長が、社長会見の席で昨今のプリペイド契約の急増についてコメントした。「異常なやり方は止めにかかっている」という。
KDDIは3月12日、定例社長会見を開催した。代表取締役社長兼会長の小野寺正氏、執行役員 ソリューション事業統轄本部 ICT事業本部長の石川雄三氏、理事 渉外・広報本部長の長尾毅氏らが出席して、ICT事業のグローバル展開について説明したあと、記者からの質問に答えた。
プリペイド契約数の大幅増、3月には沈静化へ
小野寺氏は社長会見の席上で、昨今のプリペイド契約の急増について「2月のプリペイド契約は異常に高い数字になった」と話した。「3月は少しまともな数字に戻る」(小野寺氏)という。
電気通信事業者協会(TCA)が3月7日に発表した、2月末時点でのKDDIの携帯電話契約の純増数は、auが24万9800、ツーカーが-4万8700で、KDDIトータルでは20万1200だった。しかしこの純増数の内訳を見ると、プリペイド契約が6万2900の純増(auが8万2100、ツーカーが-1万9200)となっており、他の事業者のプリペイド契約が純減しているのと比べ、明らかに不自然なところがある。
小野寺氏はこの問題について「ある時期から、プリペイドの契約数が不自然に増えているのに気づいて調べてきた。その結果、一部で異常な方法で販売していたところがあると分かり、それは止めにかかっている。“正常な契約数”がどういう数かといわれると明確な基準はないが、3月は少しまともな数字になると思う」と話した。
この間、一部のau販売代理店では、「社員紹介キャンペーン」「お試しキャンペーン」といった名目で、プリペイド携帯電話の端末代金や設定手数料を無料にして販売していたことが報じられている。KDDIは2008年3月末までに3000万契約の獲得を目標に掲げているが、さすがに“契約数の水増し”と受け止められてもしかたがない今回の端末の乱売は終息に向かうようだ。
とはいえ3月の端末販売状況は、2月に比べれば良好に推移しているという。「もともと3月は市場が一番活性化する時期なので、本当に好調なのかどうかは、最後に実際の数が出てこないと分からない」と小野寺氏は言うが、「誰でも割」と「家族割」を合わせて契約すると家族間通話を24時間無料とする新しい料金体系を3月1日から開始したこともあって、厳しかった販売の現場は「変わってきていると思う」(小野寺氏)と話した。
ちなみに3月1日からサービスを開始したディズニー・モバイルや、3月28日から音声サービスを開始予定のイー・モバイルについては「現状では直接的な影響を受けているといった報告はない」という。
現ツーカーユーザーの8割以上はプリペイド
3月31日でサービスを終了するツーカーには、まだ2月末の時点で27万6600件の契約があるが、小野寺氏は「ツーカーの巻き取りは時間をかけて行ってきた。今残っている契約の8割以上はプリペイド。おそらくプリペイドのユーザーはあまりauには移行しないのではないか」との見通しを示した。
au移行がないまま3月31日を迎えれば、3月末に27万6600件の純減が発生するため、KDDIの純増数が一時的に大きく下がる可能性がある。しかしこの点については「しかたがない」と割り切っているようだ。
ドコモのムーバサービスの終了時期が取りざたされていることもあって、記者からは今後cdmaOneのサービスをどうしていくのか、という質問も上がった。小野寺氏はこれに対し「システム側は、1X端末(CDMA 1X端末)がcdmaOneの基地局にもアクセスできるよう上位互換にしてあるため何も問題はない。cdmaOneの端末はまだ残っているが、こちらはいずれ1XやWINに変えていただけると思っている。いずれにせよ特別な措置をしないといけないとは思っていない」と、特に巻き取り策などを展開して終息へ向かわせるような計画はないことを説明した。
いい端末を作ったメーカーはキャリアより強くなる
三菱電機の携帯端末事業からの撤退報道や、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズがドコモ向け端末の製品計画の見直しを行っているというニュースが流れたことから、キャリアと端末メーカーとの関係にも話が及んだ。
小野寺氏のスタンスは「今のキャリアと端末メーカーとの関係を変える必要はない」というもの。しかし、当然ながら「端末メーカーとはWIN-WINの関係を築かなくてはならない」(小野寺氏)ため、メーカーとはいろいろな取り組みを行っている。例えばメーカーと緊密に連絡を取り合って、海外キャリアにも納入できるような端末づくりに協力し、結果的にいい端末ができればKDDIにも納入してもらう、といったことも考えられるという。
「auとして、一定の機種数のラインアップはそろえたい。どういう品ぞろえにするかは、各メーカーとの相談の中で、メーカーにどんな機種を何機種作ってもらうかを決める作業になる。ただ、今までは新機能を搭載したさまざまな端末をどんどん投入してきたが、今後どうしていくかは見極めなければならない」(小野寺氏)
また小野寺氏は、米Appleの「iPhone」を引き合いに出し、「今まではキャリアから端末メーカーにいろいろなお願いをして端末を作っていただいてきたが、今後は本当にいいものを作ったメーカーがキャリアよりも強くなるのではないか」という考えを披露した。iPhoneのような魅力的な独自の端末を開発できれば、キャリアの方から納入を依頼するようになるので、今の日本市場のような“キャリアの下請け”的な立場とは変わってくるというわけだ。
フィルタリングは国民が納得できる方法を議論すべき
未成年者を対象とした携帯サイトのフィルタリングサービスでは、今までアクセスできていたサイトに接続できなくなるといった問題が発生し話題になっているが、KDDIとしては当面ホワイトリスト方式で提供していく考えだ。
「フィルタリングサービスの必要性は十分認めている。フィルタリングの内容は、公式サイトについては今後もKDDIの責任でやっていくが、それ以外の部分については我々はコントロールしないという前提ですべて考えている。ブラックリスト方式も検討は進めているが、どういうタイミング、どういう方法で導入していくかはまだ決めていない。
フィルタリングの是非についても、世の中の動きにブレがあるので、今具体的な方針を出すつもりはない。国民が納得できる方法をしっかり議論してもらい、合意ができればそれを採用することにしたい」(小野寺氏)
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