ビジネスケータイ後進国・日本を目覚めさせるのは誰だ?:神尾寿の時事日想・特別編(2/2 ページ)
携帯電話の普及が飽和する中、通信各社の成長を下支えしているのが法人携帯の需要だ。個人向けと違い、ほとんどが通話専用にしか使われていない法人向け携帯の使い方を変えるには、“らくらくホン的”アプローチが必要になってくるのではないだろうか。
熱く語りかけただけではない。孫氏はプレゼンテーションの最後に、イベント参加のお礼として1社あたり最大5台のiPhoneを3カ月間完全無料で貸与するモニターキャンペーンを実施すると発表。すでにソフトバンクグループの営業担当が付いていることが条件であるが、貸与中の3カ月間は基本料のみならず、通話料・通信料も一切取らず、「ビジネスでiPhone 3Gを使うと、どう世界が変わるのか。それを実機で体験してほしい」(孫氏)と強調した。
「ビジネス向けらくらくホン」になれるか
各キャリアの幹部や関係者と意見交換をすると、最近しばしば話題に上るのが、「法人市場向けのらくらくホン」の必要性だ。これは“シルバー世代向けの端末が必要”という意味ではない。らくらくホンは“最新の機能やサービスを誰にでも使いやすく”するというコンセプトで作られた優れたプロダクトであり、デジタル機器の操作に苦手意識を持っていたシルバー世代に対して、「電話」機能だけでなく、「メール」や「地図サービス」、「iチャネル (コンテンツ配信)」などデータサービスの利用促進にも成功した実績がある。コンシューマ市場とまったく異なる特性を持つ法人市場で、新たにデータサービス市場を立ち上げるには、“新しい機能やサービスを誰にも使いやすくする”という、らくらくホン的なコンセプトの利用環境が必要なのだ。
翻ってみると、今の法人向けモバイル市場は「電話」以外のデータサービスを、すべてのビジネスパーソンにとって使いやすくする試みの道半ばである。特に生産性の拡大に大きく寄与する、スマートフォンのビジネス活用では、この分野の「らくらくホン」と呼べるような優れたUIを持つ製品やサービスは登場していない。
iPhone 3Gも単体では“ビジネス向けらくらくホン”にはなりえないが、柔軟性の高いタッチパネルと、ソフトウェアおよびサービス連携の応用性の高さは注目に値する。今後のソフトバンクモバイルの努力や、パートナーとなるSIerがどれだけ増えるかにもよるが、うまくいけば“使いやすさ”で法人向けデータ市場に火をつける可能性があるだろう。
iPhone 3Gを軸に据えたソフトバンクモバイルの法人向けデータ市場創出の取り組みに対して、他キャリアの法人戦略ではどのように対応するのか。注目を持って見守りたい。
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