なぜ、日本でiPhoneは売れるのか。:神尾寿の時事日想(4/5 ページ)
この秋に新モデル登場と噂されるiPhone。2007年に初代が発売されて以来、iPhoneはスマートフォン市場のけん引役であり続けた。よりハイスペックなAndroid端末も登場する中、iPhoneが売れ続けているのはなぜか? 改めて考えてみよう。
手離れがよく、売りやすい。販売面でのメリット
そして、もう一つ。ユーザーとは別の視座で、iPhoneの強みが存在する。それはiPhoneが「販売店にとって手離れがよくて、売りやすい」という点だ。
先述のとおり、現在の市場の中心は「ケータイからスマートフォンに買い換える一般ユーザー層」になっている。彼らは黎明期の先進層や高感度層に比べると、スマートフォンに対して豊富な知識を持つわけではない。そのため販売時の説明や購入時サポートの手間は増えており、接客時間が長引くことが販売店の大きな負担になっている。そのような中で、"iPhoneの売りやすさ"を評価する声が多くある。
「iPhoneは認知度が高く、指名買いのお客様が大半。商品説明から入らなくていいので、接客時間が短くて済みます。しかも製品の販売サイクルが長いので、販売員も慣れやすい。とにかく手離れがいいのです。もちろん、利益率という点では様々なオプションサービスを付けられるAndroidスマートフォンの方が魅力的です。しかし週末や繁忙期の売り場で、契約数を取らないといけないような場面では、短時間で数がさばけるiPhoneは売りやすくて助かります」(大手販売店幹部)
利益の確保と接客時間の短縮は、スマートフォン販売現場における大きな課題である。iPhoneは様々なキャリアサービスのプリインストールと端末購入時契約の獲得ができないため利益拡大という面での貢献は薄いが、接客時間はAndroidスマートフォンより短くてすむ。この傾向は、スマートフォンに詳しくないユーザー層だとより顕著になるという。またiPhoneの課題である利益拡大においても、大手家電量販店などでは「iPhone用のケースや周辺機器コーナーを充実させて、(利益率の高い)周辺機器販売でカバーしている」(大手家電量販店関係者)という。
手離れのよさでケータイからの買い換えユーザーを効率的かつ大量にさばき、周辺機器の販売で利益を積み増していく。この販売メリットの確立もあって、iPhoneは店頭でも“積極的に売られる”ようになっているのである。
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