ソフトバンク、イー・アクセス、ウィルコムが合同防災訓練を実施――気球基地局などを公開
ソフトバンク、イー・アクセス、ウィルコムのグループ3社は、合同の災害対策訓練を実施し、基地局車や気球を使った空中基地局などが公開した。3社そろっての訓練開催は今回が初めて。
ソフトバンクグループのソフトバンクモバイル、イー・アクセス、ウィルコムの3社は2月27日、合同の災害対策訓練を実施した。各社はこれまで単独で訓練を実施しており、グループ3社が参加する訓練は今回が初めてだという。
訓練は大規模災害で基地局が被災した場合を想定したもので、移動基地局車や可搬型基地局、係留気球を使用した臨時基地局などを使って通信サービスの復旧手段を確認した。
気球基地局は、最大高度約100メートルで半径5キロメートルのエリアをカバーする災害時用の装備。車載基地局よりも広いエリアをカバーでき、少ない人数で簡単に立ち上げられるものとして開発された。全国のネットワークセンターに配備が進んでおり、被災地到着後は最低4人の人員で数時間程度で展開できるという。
気球は風など気流の影響を受けにくくするため扁平型で、さらに空中の姿勢を安定させる”スクープ”と呼ばれる幕が付いている。また雨が降っても下ろすことなく利用できる。
ソフトバンクモバイルが所有している移動基地局車は現在100台で、可搬型基地局200台も全国に配備。イー・アクセスも2台の基地局車と8台の可搬局を備えている。ソフトバンクの基地局車は東日本大震災の発生前に全国で15台しかなかったが、この約3年で大幅に増強された。支援用に、電源車と燃料用のタンクローリーも自前で用意している。
最も大型の基地局車はトラックタイプと呼ばれるもので、3GとLTEに対応し2GHz帯と900MHz帯の周波数帯をサポート。基地局とバックボーンをつなぐエントランス回線は衛星通信が使われるが、光ファイバー網に接続して収容回線を増やすこともできる。このほか市街地でも迅速に展開できる中型のワンボックスタイプとミニバンタイプもあり、カバーするエリアの規模や地形に応じて使い分けている。中型タイプは3G(2GHz帯)に加えてウィルコムのPHS網も提供可能だ。基地局が停波した地域でも連絡が取れるよう、すべての移動基地局車には作業用の衛星携帯電話が装備されている。
イー・アクセスの基地局車はワンボックスタイプ。衛星通信のほか、マイクロ波エントランスと光ファイバー網にも対応する。今回はマイクロ波アンテナを使い、付近の生き残った基地局と通信する想定で訓練が行なわれた。
可搬局は地面に据え置いて使うだけでなく、ワゴン車やトラックなどに搭載して簡易的な基地局車にすることも可能だ。訓練ではレンタカーに搭載するなど、柔軟な使い方をデモしていた。また道路が寸断されて車両が入れない被災地でも、可搬局と発電機を空輸して通信エリアを確保できるという。
基地局車や可搬基地局は被災地で通信エリアを復旧するだけでなく、スマートフォンや携帯電話の充電サービスも提供する。訓練では他社の携帯電話やスマートフォンにも対応した非常用の充電ボックスも展示。さらに、ソフトバンクの衛星携帯電話「201TH」とiPhone用の衛星電話アダプター「201TH」(どちらもThurayaの衛星電話サービスを利用している)、乾電池で駆動するウィルコムの「イエデンワ」も紹介された。これらの端末は被災地への貸し出しなども行なっている。
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