高市早苗総務相に「ケータイ料金値下げ」の疑問を直撃――総務省タスクフォースは「机上の空論」ではないのか:石川温のスマホ業界新聞
頻繁に携帯電話を買い換える人と、そうでない人の料金面での不公平さが指摘されている。総務省の携帯電話料金に関するタスクフォースで料金見直しの方向性の議論が進んでいる中、BS番組で高市早苗総務大臣から直接話を聞く機会を得た。
11月6日、BSフジ「プライムニュース」に出演する機会を得た。テーマは「高市早苗総務相に問う ケータイ値下げへの道」。文字通り、高市早苗総務相が出演するので、現在、行われている総務省・タスクフォースについて、2時間、たっぷりと聞くという役割を与えられた。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2015年11月7日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。
議論の内容は2年縛りからキャッシュバック、実質価格0円販売、MVNOの普及など、多岐に渡ったが、高市総務相が特に疑問視していたのが、端末価格の大幅な値引きについてだったように思う。
長年、同じ端末を使い続けている人が損をして、頻繁に機種変更やMNPを行っている人が、端末の大幅な値引きを受けているのは不公平だということを繰り返して語っていた。
高市総務相はシルバーウィーク中にケータイ業界のことを熱心に勉強されたようだが、端末と通信料金の分離については、「誰かさんから相当、入れ知恵されたかな」と疑いたくなるほどだった。
確かに長年、同じ端末を使っている人は、端末の値引きを受けていないという不公平感を抱くのは仕方ない。
しかし、端末に興味のない人は、端末をあまり使っていない人なわけで、キャリアから見れば、通信料収入も決して高くはないのかも知れない。
一方、頻繁に機種変更する人というのは、新しい端末が好きで、スマホを積極的に使う人と言えるかも知れない。つまり、端末価格は値引きされているかも知れないが、端末を長く使い続けている人に比べて、毎月の通信料金は高く支払っている可能性だって充分にあるのではないか。
また、ソフトバンクの参入以来、端末代金を割賦にし、毎月、端末代金から割引をするという売り方が一般的になっている。このように端末と通信料金を分離したことで、一般ユーザーにとっては「わかりにくい」と感じているのは事実だろう。
一方で、昨年春にイオンスマホが、端末代金(Nexus4)と通信料金をセットにして月額2980円で売り出したことで、格安スマホは一気に普及した。これは端末と通信料金をセットにして、わかりやすい料金にしたことが背景にある。
最近では、ワイモバイルが、端末代、通話定額、データ定額をコミコミにして月額2980円というプランを訴求している。
つまり、端末代金と通信料金をセットにしても、充分に一般ユーザーに伝わる料金プランを作ることは可能であり、両者を分離することが必ずしも正義ではないはずなのだ。
また、高市総務相は「1GB以下のライトユーザー向けプラン」の必要性も説いていた。その説明をする際、現状、多くのユーザーは7GBプランを契約しているものの、実態は1GB以下のユーザーが多いというグラフも提示していた。
ただ、7GBプランが多いというのは、スマホ初期から昨年中頃までのプランが7GBまでの使い放題プランが中心だったからに他ならない。そのころは、スマホを買っても、どれくらいデータ通信を使うか想像ができないので、キャリアとしては誰もが到達しそうにない7GBというプランを設定していたのだった。
仮に政府の意向で1GBプランができたところで、今後、LTEがさらに高速化され、IoT時代になれば、1GBなんて誰もがあっという間に使い切ってしまう容量になってしまう。1GBのライトユーザーなんて数年で絶滅するのは目に見えているはずだ。
スマホが普及し、自分がどれだけ使うかを理解できるようになった2014年、NTTドコモが新しい料金プランを作ったことで、他社も追随。ようやく、ユーザーの利用実態に合わせて料金プランを選べるタイミングになったと言えるのだ。
プライムニュースでも高市総務相に指摘したが、これまで総務省がSIMロック解除や2年縛りの見直しなどの議論を進めてきて、ようやくMVNOが盛り上がりを見せているのに、何故このタイミングで政府がいきなり値下げを求めるのか、理解に苦しんでしまう。
ただ、高市総務相は自分が書いた日経のコラムも読んでくれていたようで、グーグルのMVNOサービスである「Project Fi」にはかなり関心を持っていたようだ。
高市総務相もこの業界については勉強をはじめたばかりのようだけに、今後、様々な議論を勧めていく中で、結論も違った方向に進んでいく可能性もありそうだ。
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