携帯料金見直しに対して反論も――3キャリアの決算会見を振り返る:石野純也のMobile Eye(10月26日〜11月6日)(1/2 ページ)
3キャリアの2015年度第2四半期決算は、各社とも増収増益となった。今回の決算会見では、安倍首相の発言を発端とした携帯料金見直しについても、各社のトップがコメントした。各社の会見を振り返っていこう。
3キャリアの2015年度第2四半期決算が出そろった。結果は、各社とも増収増益。もともと業績は好調だったKDDI、ソフトバンクに加えて、カケホーダイの導入で収益を大きく落としていたNTTドコモも、スマートライフ事業やコスト削減が功を奏し、回復基調に乗っている。
一方で、決算会見では、今後の収益に影響を与える可能性のある政策の動きにどう対処していくのかという点も、話題に上った。安倍晋三総理大臣の命を受け、総務省では、各社の料金値下げについてのタスクフォースが開催されている。この中で議論になっているが、より安価なプランを設定してユーザーの選択肢を広げること。端末と通信料の分離についても、検討が進められている。
3社のトップは、こうした動きにどう対応していくのか。決算のハイライトをまとめるとともに、それぞれのトップの発言から、今後の展開を占っていきたい。
ドコモの業績は回復基調、タスクフォースの議論は「行方を見ながら考えたい」
「新料金プランの収支は確実に改善している」――。こう語るのは、ドコモの加藤薫社長。カケホーダイの導入により、大きく低下したARPUが底を打ち、反転の兆しを見せている。新料金プランは10月7日に2400万契約を突破。鍵となるデータ通信料収入については、「(月額5000円で5Gバイトまで利用できる)データMパック以上の選択率は8割まで拡大し、1Gバイトの追加データ購入も約4割に上がっている」(同)という。
また、スマートライフ事業として展開している、上位レイヤーのサービスも好調で、「こちらも増収増益」(加藤氏)となった。スマートライフ領域に関しては、「年間の目標利益を700億円に修正したい」と、もともとの500億円から200億円を積み上げた。dビデオやdマガジンをはじめとするコンテンツや、金融・決済サービスなどが好調の要因だ。コスト削減も含め、年間の営業利益予想は7100億円に上方修正している。
純増数については大場に増加し、MNPでの流出も止まりかけている。純増数は190万で、前年度比1.6倍。MNPは4万の転出超過にまで数が減っている。その理由を、加藤氏は次のように分析する。
「端末のラインアップが評価された。不健全なキャッシュバックをしない決意をしながら、それがお客様に理解していただけている。キャンペーンでお得感を演出しながら、ここまで縮小できたのではないか。ここで油断することなく、さらにご要望に応えていきたい」
ただし、純増数については、ドコモの回線を利用するMVNOの影響も、無視できない規模になっている。加藤氏によると、純増数の中にMVNOが占める割合は「大体半分ぐらい」。大ざっぱに計算すると、ドコモ単体での純増数は、95万前後ということになる。MVNOについては、「サービスの多様性に寄与している」(同)と評価。一方では、ドコモにとっての競争相手でもあるため、「お客様の選択肢が広がるところを見ながら、競争、協調していきたい」と語っている。
タスクフォースの議論に対しては、慎重な見方を示している。低容量のプランがないという指摘には、「議論の行方を見ながら考えていきたい」(加藤氏)。端末と通信料の分離についても、「どうするのかの考えはまだ持っていない」と話し、まだ会社としての方針が定まっていないことを明かす。ただし、端末価格と通信料が連動した仕組みについては「お客様からは分かりにくいというお話もお聞きしている」とも語っており、何らかの対策は考えていることがうかがえた。
すでに指針が示されている2年契約については、「いろいろなことを考えている」と述べるにとどまったが、「そんなに遠くない時期にはお話できる」とも話しており、間もなく結論が出るようだ。1年契約の導入など、新たな選択肢が加わるかもしれない。
「非常に健全な増益」のKDDI、政府の要望には「矛盾している」と困惑
KDDIは、「3期連続2桁成長を達成した」(田中孝司社長)と好調な業績を維持。「非常に健全な増益」と田中氏も胸を張る。売上高は2兆1518億円。営業利益は4514億円と、増収増益だ。業績をけん引したのは、端末数の増加と、それに伴う通信料収入。1人あたりの端末数は1.39台になり、通信ARPA(契約者あたりの月間売上高)は5700円に増加している。auスマートバリューも、モバイル側から見て、1000万契約を突破した。
好調な業績を示す一方で、不安材料もある。田中氏によると、付加価値収入の慎重が「若干計画より弱め。付加価値ARPAをもう少し伸ばしたいが、なかなか伸びていない」という。au WALLETについても、「どれくらいの額、何回使ってくれるかのKPIが、少し弱含みで出ている」という。
解約率の増加も、KDDIが懸念している点だ。田中氏はMVNOの影響が大きいことを認め、「価格志向のユーザーが流出している」と分析する。MVNOの多くは、先に挙げたようにドコモの回線を利用しているため、流出になっているというわけだ。
KDDIでは傘下のUQコミュニケーションズにUQ mobileの事業を統合しているが、まだ具体的な成果は出ていない。子会社のジュピターテレコムが開始した「J:COM MOBILE」のように、au系MVNOも増えてはいるが、ドコモに比べるとまだ数えるほどしかないのも事実。KDDI傘下ではない会社の参入も少ない。こうした状況に対して、KDDIがどのような手を打ってくるのかは、今後注目しておきたいところだ。
KDDIの決算会見では、タスクフォースへの「反論」にも時間が割かれた。田中氏は、auの料金プランをあらためて解説。基本となるLTEプランや「カケホとデジラ」に加えて、「利用状況に合わせたサービスラインアップを作り、年齢とデータ量に合わせて提供する、セグメント別のアプローチを取っている」と、「BASIO」や「miraie」の例を挙げて強調した。
現にBASIOやmiraieの契約者は「2桁万の数でいる」(田中氏)とのことで、狙い通りにすみ分けができているようだ。iPhone 6s、6s Plusに合わせて導入した「スーパーカケホ」についても、「2Gバイトが選べないじゃないかという声はあるが、他社が5Gバイトからの中で、がんばって3Gバイトからにした」と優位性を語った。既に低容量のプランも含めた選択肢は提示しており、政府主導で議論が進められていることに対しては「矛盾だらけでよく分からない」と否定的な見方を示している。タスクフォースは「見守りたいというスタンス」。何らかの方針を決めるのは、結論を待ってからになりそうだ。
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