進化と拡大の中でのダウンサイジング――iPhone SEと新型iPad ProにAppleの原点を見た(2/3 ページ)
Apple本社の通称“キャンパス”のタウンホールで、同社の新商品発表会が開催された。このタウンホールで開催された最後のイベントで、iPhone SEと9.7型版iPad ProというAppleの原点を感じさせる製品が発表されたことに、同社の変わらぬ哲学を垣間見た気がした。
4型市場を着実に押さえる「iPhone SE」
そして今回の発表会の目玉といえるのが、「iPhone SE」である。これは以前からうわさされていた通り、4型のRetinaディスプレイを搭載した“コンパクトなiPhone”。スマートフォン市場全体が大画面シフトする中で、少なからず存在する「小さな電話を愛する人々向けのiPhone」(Apple プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのグレッグ・ジョズィアック氏)だ。
「iPhone SEは最もパワフルな4型スマートフォンとして設計されており、CPUに最新のA9チップを搭載。CPUやグラフィックスなど基本性能はiPhone 6sに引けを取らない。またカメラ機能も最新のものにアップグレードされて、Live Photoや4K動画撮影にも対応した」(ジョズィアック氏)
無論、サイズの制限があるため、全ての機能でiPhone 6s相当にまではなっていない。iPhone 6/6sの目玉機能である3D TouchやTaptic Engineの搭載は見送られており、インカメラのFaceTimeカメラはiPhone 5sと変わらず、LTE通信機能やTouch IDも一世代前の仕様だ。他方で、アウトカメラとなるiSightカメラは1200万画素の4K撮影およびLive Photos対応になり、日本ではいまだ利用環境が整っていないもののApple Pay機能も搭載している。また地味だが重要なポイントとして、バッテリー持続時間はiPhone 6sと同等以上になった。
全体的に見ると、iPhone SEは「一般ユーザーにとって重要な性能・機能はiPhone 6s相当にした上で、サイズとデザインはiPhone 5sと同じにしたもの」ということになる。技術やビジネスに明るい読者なら分かると思うが、これは簡単そうに見えて、実はすこぶる難しい。機能強化のポイントを適切に取捨選択し、変更できないパッケージデザインの中身だけ最新のデバイスに置き換えるというのは、まったくの新規で製品開発するよりも難易度が上がるのが常である。
グローバル市場全体で見れば、iPhoneの主流は4.7型のiPhone 6sになっている。しかし今回、iPhone SEを単なるラインアップの穴埋めや廉価モデルにすることなく、コンパクトモデルながら主力モデルに準じる機能を用意したところに、Appleの良心と真面目さが現れているといえるだろう。
iOS側もマイナーバージョンアップ
iPhone SEの発表にあわせて、iOSのアップデートも行われた。ジョズィアック氏が「小数点以下のマイナーバージョンアップとしては、過去最大のリリース」と話す今回のiOS 9.3では、複数の新機能が新たに搭載された。
その中でもジョズィアック氏がひときわアピールしたのが、Night Shiftモードだ。
「人間がよい眠りを得るためには、iPhoneなどデジタル機器のスクリーンが放つ明かりも暖かい色合いのものにしなければならない。Night Shiftでは夜になると自動的にスクリーンの色合いを変えるほか、ブルーライトも抑制して就寝を妨げないようにする」(ジョズィアック氏)
また、このNight Shiftモード以外には、メモアプリでTouch IDによる生体認証が使用できるようになったほか、Car Playの対応メーカーの増加とオーディオやナビゲーション連携の機能強化が発表された。
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