Wi-Fi Allianceが孫社長の主張に反論――「Wi-Fiがなければ、セルラーネットワークは破綻する」:石川温のスマホ業界新聞
Wi-Fi Allianceのケヴィン・ロビンソン氏が来日し、「Wi-Fi CERTIFIED Vantage」を始めとする取り組みを報道関係者に説明した。Wi-Fiといえば、ソフトバンクグループの孫正義社長が「無料Wi-Fiスポット不要論」を唱えて話題となったが……。
7月26日、無線LAN規格の業界団体であるWi-Fi Allianceが記者会見を開催した。新しい認定プログラム「Wi-Fi CERTIFIED Vantage」や5G時代におけるWi-Fiの役割について、説明が行われた。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年7月29日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
Wi-Fiといえば、先日、ソフトバンクの株主総会で株主から「2020年に向けてもっと無料Wi-Fiスポットを増やして欲しい」と孫社長に要望が出された。
しかし、孫社長は「やりましょう」と宣言するどころか、「無料Wi-Fiスポットは増やすべきではない。セキュリティ面を考えたら無料Wi-Fiスポットよりも、国際ローミング料金を安くするなどした方が得策」と一刀両断したのが話題となった。
孫社長の発言は一理あるとネット上でかなり支持されたのだが、実際、Wi-Fi Allianceとしてはどのような「反論」があるのか気になっていた。
ちなみに、ソフトバンクもWi-Fi Allianceに加盟している。つまり、加盟会社が率先して無料Wi-Fiスポットの存在価値を否定したのだから穏やかではない。
Wi-Fi Allianceのマーケティング担当ヴァイスプレジデント、ケヴィン・ロビンソン氏に「孫さんがあんなことを言っているけど、反論ある?」と率直に聞いてみた。
するとケヴィン氏は「我々が自信を持って言えるのは、Wi-Fiをこの世から排除したら、セルラーネットワークは破綻する。データトラフィックをセルラーネットワークだけで支えるのは不可能だ。アメリカのモバイル事業者のなかには、アンリミテッドのプランを提供しているところもあるが、ネットワークは劣化しはじめて耐えきれなくなっている。ほかのオペレーターのなかには80%のデータトラフィックをWi-Fiに流しているところもあるくらいだ」と語った。
実際のところ、世界中のインターネットトラフィックの約半分がWi-Fiを経由したものだという。固定やセルラー経由のトラフィックと比べると、いかにWi-Fiが役立っているかがよくわかる。
ソフトバンクも振り返ってみれば、iPhoneを導入したものの、エリアは狭く、さらに3Gのネットワークが劣化し始めていたこともあり、Wi-Fiスポットを積極的に敷設した。Wi-Fiスポットにお世話になっておきながら、さすがに孫社長のあの言い方ではWi-Fi関係者も黙っていないだろう。
ただ、街中にWi-Fiスポットが大量にあっても、勝手に接続しデータが流れない、セキュリティ面で不安があるなど、デメリットがあるのも事実だ。
そこでWi-Fi CERTIFIED Vantageが必要不可欠となってくるのだろう。Wi-Fi CERTIFIED Vantageでは、サービス事業者がネットワークを管理し、一つのアクセスポイントに接続し続ける機器を排除したり、映像や通話などのアプリが中断せずに利用できるようになるという。
ただ、無料Wi-Fiスポットは、現状、2020年に向けて増え続けているものの、ビジネスモデルが確立しておらず「とりあえず設置して完了」という状況になっている。新しい認定プログラムが出てきても、それらに対応した機器に置き換えていくメンテナンスの費用が出にくい状態にあると言われている。
このままでは、古い規格のWi-Fiスポットが何年もメンテナンスされずに放置されていく状況になりかねない。
ビジネスモデルと安全性を両立させる意味では、やはり孫社長の主張が正しいのかもしれない。
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