「フルMVNO」だからこそできること IIJ大内氏が技術面から徹底解説:IIJmio meeting 19(3/3 ページ)
IIJは、4月14日にファンミーティング「IIJmio meeting 19」を開催。エンジニアの大内宗徳氏が、フルMVNOで可能になった新たな機能を技術的から解説した。
キャリア名を変更できる
フルMVNO版JTSでは、ピクトエリアなどのキャリア名に「IIJ」と表示されて話題となった。これもフルMVNOで可能になった機能だ。ユーザーにとっては興味深い機能だが、「それほど意味はない」と大内氏は冷静だ。
これを実現するには2つの方法がある。1つはドコモのネットワークの機能を利用するもの。VLRやSGSN、MMEといった端末が接続するノードに、IIJのIMSIで始まるSIMが接続された場合に、ドコモのネットワークから送られるMM/GMM/EMM Informationと呼ばれる信号に含まれるキャリア名情報を、通常は「ドコモ」のところ、「IIJ」に変更する機能を使う。
ネットワークの機能を使ってキャリア名を変更する手順。Attach Requestのときに、IIJのSIMが入っている場合、データ接続のセッションの最後、EMM Informationというところで、IIJと表示するような実装を行っている。なお、EMM Informationは時刻の同期にも使われている
もう1つは、SIM内の情報をキャリア名として表示する機能を利用するもの。SIMの中にはデータを保存するファイルがある。ファイル名は「EF_○○」のようになっていて、それらの一部を制御するとキャリア名を変更することができる。しかし、Wi-Fiルーターなどの一部には、端末依存でキャリア名の表示変更が効かないものもあるという。
EF_○○のファイルや、ネットワークから送られるEMM Infoの情報の組み合わせによって、キャリア名の表示パターンが決まる(写真の「キャリア名Android」「キャリア名iPhone」の欄)。IIJでは、キャリア名を適切に表示できる黄色い帯の設定をSIM内に入れ込んでいる
ちなみにドコモの場合、ネットワークから送られるキャリア名は大文字のNTT DOCOMOという文字列だが、iPhoneではドコモのSIMを挿すと小文字の「docomo」に変更するという設定があるようで、ネットワークから来る文字列を無視するようになっているそうだ。
OTAによるSIMの書き換えができる
フルMVNOになったことで、SIMの電話番号やキャリア名を変更することができるようになった。現在は電話番号の書き換えでこの機能を利用している。
方法は2種類あり、1つが、SMSを使って書き換えるもの。もう1つが、SIMが直接IP通信をして、OTAシステムと連携して書き換えるもの。現状のIIJはSMSによる書き換えに対応しており、IPを使った方法は開発中。IPを使ったものに関しては今後提供予定で、データ通信専用SIMに対して利用するケースを想定している。
SMSによる書き換えは、加入者サービスに関わる処理を制御したり、加入者情報を管理したりするBSSが実行を制御している。BSSがOTAシステムに対して、ユーザーの電話番号を書き換えたいというリクエストを出すと、OTAがSIMの中身を書き変えるメッセージを組み立て、IIJの「SMSC」(SMSを端末に送信するシステム)にSMSを送る。SMSCから端末がSMSを受け取ると、それを端末がSIMに中継し、SIMは認証を行い、正しければSIMの内容を書き換えるコマンドを発行してSIMの中身を書き換える。
この時点で、SIMの中身は書き換わるが、端末自体はSIMの中身を起動時に読み込むだけなので、再読込が行われないと、端末上に表示される電話番号は変わらない。SIM書き換えの手順を行った後に、端末はSIMの中身を再読込するが、ここでネットワーク接続が切れて、もう一度接続する。この時点で、やっと端末に表示される電話番号が変わる。
会場ではキャリア名変更のデモが行われた。写真はNexus 5Xの画面を拡大したもの。「IIJ」と表示されているが、一度ネットワーク接続が切れた後、IIJ-IIJmioという表示になったり、「IIJ25周年-IIJmio」という表示に書き換わったりした
今後の展開として、大内氏は、フルMVNOを活用して、個人向けのIoTサービスや海外ローミングサービスを充実させたいと意気込んだ。また、現状のSIMではできない、SIMを挿さなくてもIIJのサービスを使えるようなコンシューマー仕様eUICC(埋め込みSIM)サービスや、車載向けのチップSIMを提供できないか、現在検討、準備していると語った。ライトMVNOではできなかったようなサービスの展開を期待したい。
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