2018年度中にQRコード決済市場に参入 KDDIが「au WALLET」で“次”を目指す理由:モバイル決済の裏側を聞く(2/3 ページ)
KDDIは2014年に「au WALLET構想」を掲げ、「au WALLETカード(プリペイド)」を提供。後にはクレジットカードの発行も開始し、同社のビジネスの軸の1つとなりつつある。2018年度中にはQRコード決済も提供予定。そんな同社の決済戦略を聞いた。
au WALLETプリペイドカード2000万枚で見えてきたもの
約2000万口座に到達したことで見えてくるのは事業規模拡大だけでなく、そこでの利用傾向など、別のデータもある。現金至上主義といわれる日本だが、どの世代でどの程度利用が進んでいるのかというデータも当然把握しており、例えばプリペイドサービスでは40代女性の利用率が高いことが分かっている。
これにより、利用の厚い層に向けたキャンペーンを打ったり、利用の少ない層を取り込むための施策を練ったりする際の参考となる。Apple PayのユーザーはApple Payにこだわらず、通常のカードを介しての利用も多いという傾向が見えており、一概に同じ決済手段に依存しているというわけではないようだ。つまり、こうしたユーザーはキャッシュレス全般の比率が高いことも意味している。
WALLETポイントとの連携も重要だ。ポイントからWALLETへのチャージももちろんだが、“出口”が増えたことでポイントの使われ方も変化しつつある。au WALLET開始以前までは、その利用のほとんどが機種変時の端末代金に充当させるものだったという。それが4年をかけて大きく変わり、現在では半数程度が別の使われ方になっているようだ。
WALLETへのチャージに限らず、ポイント充当が可能な商材が増えているという背景もあり、ポイント経済圏が拡大して循環しつつある。ポイントはある意味で“囲い込み”の材料でもあり、その活用手段としてau WALLETは今後も拡張していくだろう。
現在はauユーザーのみを対象に提供されるWALLETサービスだが、いずれ“頭打ち”となるタイミングがやってくる。2018年3月時点でのauの加入数は5228万で、プリペイドで約2000万口座となった今、遠からず限界が見えてくる。
これはKDDI側でも認めており、質から量への転換で、今後はより既存ユーザーを活性化するための施策が重要になってくるという。資産運用サービスなどはその典型で、これまでは単に「チャージしてお小遣い的に使う」感覚だったものを、「増やす」という新しいサービスでバーチャル口座の活用手段を増やす。
一方でWALLETサービスを外部ユーザーに提供するという「アカウントのオープン化」には否定的で、まずはauユーザー向けの施策を強化していくことを優先するという。
リアルタイムチャージと一緒に発表された「個人間送金」と「出金」にも注目したい。これらはau WALLETとじぶん銀行口座を結び付けることで利用可能になるもので、特に個人間送金は電話番号と氏名(かな2文字)を指定するだけで相手のau WALLET口座に簡単に送金できる。
じぶん銀行の登録情報を使って本人確認をすることで、本来この手の個人間送金サービス開始で要求される「個人認証プロセス」をスキップできる点でハードルが低いのが特徴だ。ただ、モバイル端末を使った送金文化がまだ日本で根付いていないからか、普及にはまだ時間がかかると中井氏は説明する。
さらなる個人間送金普及にはLINEなどを含む外部サービスとの接続や、先日も+メッセージ(プラスメッセージ)が発表された際に「将来的にはRCSのインタフェースを使ってキャリアをまたいだ送金サービスなども検討している」と説明されていたように、相互連携が重要となる。これについては「KDDIだけで対応できる部分もあるが、そうでない部分もあり、すぐには難しい」(中井氏)と、やや否定的な見解を示している。
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