私たちのスマホはどのようにして届く? 物流の舞台裏に迫る:特集・ITで我慢をなくす「流通テック」(1/3 ページ)
私たちの生活に欠かせないスマホやケータイ。どこからどのようにして届くのか、考えたことがあるだろうか。届くまでに繰り広げられる「ドラマ」を取材した。
普段の生活に欠かせないスマホやケータイ。皆さんは“どこ”で“どうやって”購入しただろうか。
大手キャリア(MNO)は販売経路の「オムニチャネル」化を進めている。注文(予約)や購入も、ユーザーの都合に合わせて柔軟に選べるようになった。
「オムニチャネル化」とは?
ユーザーとの接点を増やす取り組みのこと。
販売におけるオムニチャネル化は同じ商品を複数の販路で注文・購入できるようにする、あるいはリアル店舗とWebサービスで相互に送客するといった取り組みが多い。
オムニチャネル化を進める上で、重要な鍵を握るのは「物流」だ。受け取る場所はどこであれ、誰かが届けてくれるからこそ、私たちの手元にケータイやスマホがあるのだ。
今回、NTTドコモとKDDIの協力を仰ぎ、スマホやケータイの流通の舞台裏を取材した。NTTドコモではオンラインショップを統括する販売部の西谷江雄(ただかつ)担当課長、中村滋担当主査と、物流を担当する資材部の栗原隆氏に、KDDIでは東日本エリアの物流を統括する砂川健一東日本物流センター長から主に話を伺った。
スマホやケータイが手元に届くまでに、どのようなドラマが繰り広げられているのだろうか。
配送回数を減らす工夫
キャリアがメーカーから納入したスマホ・ケータイ(以下まとめて「端末」)やオプション品などは、それぞれのキャリアの「物流センター」に納品される。
物流センターではこれらを「小分け」にして、キャリアショップや代理店の倉庫などに配送する。また物流センターではパンフレット、ポスター、看板やデモ用端末など、キャリアショップの店頭で用いる資材も取り扱う。さらに、一部の配送センターではオンラインショップで注文された商品の配送も担っている。
ドコモの物流センターは北海道、東京、大阪、福岡の4箇所にある。これらのうち、大阪の物流センターは、オンラインショップの配送機能も備えている。
一方、KDDIは東日本(相模原市緑区)と西日本(大阪府茨木市)に大規模な物流センターを設置し、そのいずれにもオンラインショップの配送機能を備えている。
ショップや代理店宛の端末、ショップ宛の資材、そしてオンラインショップの利用者の荷物――物流センターはありとあらゆる荷物を扱っている。これをバラバラと出荷していては、物流センターの負担は大きくなる。配送頻度が上がれば、ただでさえ人手不足が伝えられる運送業者もつらくなる。そして、多忙を極めるはずのショップは、荷受けと荷ほどきに時間を取られて、結果として負荷が高まってしまう。誰も「得」をしないのだ。
そこで、ドコモとKDDIでは特にショップ・代理店向けの荷物配送回数を削減する取り組みを行っている。
今回は取材の都合でオンラインショップにおける個人向けの荷物発送を例として取りあげるが、ショップ・代理店向けの荷物発送と共通の負荷軽減ポイントが大きく3つある。これらを見ていこう。
工程1:端末在庫の引き当て(ピックアップ)
端末の注文を受けると、まず物流センター内の在庫を引き当てる。これは一般的に「ピッキング」と呼ばれる。
物流センター内には端末や周辺機器、ショップ・代理店向けの資材をストックする「バックヤード」がある。人気端末の場合、ここにある程度の数量の在庫を「待機」させておくことがある。過不足が生じた場合は物流センター間で融通することもある。
「話題のスマホ」の発売時期は(例年9月ごろ)、在庫の引き当てや補充が頻繁に行われるという。また入学・就職シーズンでもある春商戦(1~3月ごろ)も注文数が若干増える傾向にあるが、これらの時期を除くと曜日による忙閑の差はそれほど大きくはないそうだ。
ドコモオンラインショップのバックヤード。この写真では「Xperia XZ2 Premium SO-04K」と「Xperia XZ2 Compact SO-05K」の在庫を多めに確保していることが分かる(写真提供:NTTドコモ)
在庫引き当ては、基本的に作業スタッフが手作業で行う。オンラインショップの注文品が中心となるが「小分け」の荷物はピッキングミスが起こりやすくなる。
そこで「システム」の出番だ。
KDDIでは、物流センターにヤマトロジスティクス(ヤマト運輸の兄弟会社)の「FRAPS(Free Rack Auto Pick System)」という物流システムを導入している。
このシステムの小分け荷物のピッキングでは、引き当てるべき在庫をシステムがスタッフにデジタル表示で「指示」するようになっている。引き当てるべき在庫を小分けコンテナに入れてボタンを押すと、自動的に次の工程に運ばれる。
このピッキングシステムは、スタッフが大きく移動しなくても済むことと、習熟度が低い新人でも表示に合わせて作業することでミスをなくせるというメリットがある。既存スタッフの負荷軽減はもちろんだが、人手不足で補充した人員も“即戦力”として活躍できるのだ。
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