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楽しみが広がったら我慢を強いられる――ソフトバンクが「動画・SNS放題」で変えたい“現状”(3/3 ページ)

大手キャリアとしては初めて、ソフトバンクが特定サービスのデータ通信量をカウントしないプランを発表した。その狙いはどこにあるのか。発表会の様子を見てみよう。

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菅官房長官の「発言」について

―― 菅(義偉)官房長官の「携帯料金を4割下げられる」発言が話題を集めている。今回発表したプランで政府の「期待」に応えられるのか。

榛葉副社長 今回に限らず、十数年前に(ボーダフォンを買収して)携帯電話事業に参入した頃から、私たちはプライスリーダーとしての自負を持って(値下げ)に取り組んできたし、(ウィルコムとイー・アクセスを源流に持つ)Y!mobileという廉価なサービスを提供するブランドも育ててきた。

 私たちソフトバンクはギガモンスター、ウルトラギガモンスター、そして今回のウルトラギガモンスター+とお客さまがおトクに使えるようなプランを(他社よりも)先進的にリードして作ってきた。今回発表した他のプログラム(ミニモンスター)も、それにマッチするものだと考えている。

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 ご質問いただいたので申し上げると、使い方による部分もあるが、ウルトラギガモンスター+は通信料金の部分では(ウルトラギガモンスターと比較して)25~30%超ぐらいディスカウント(割り引き)されると考えている。(通信料金を下げたいという政府の要望には)まさに応えているのではないか。

 この(25~30%超の割り引きという)数字は、昨年(2017年)私たちが努力して削減した(値引き)数字と比較している。この料金、ミニモンスターの料金、そしてY!mobileの料金と、全体的に見るとソフトバンクは(政府と)同じ方を向いているのではないかと思う。


ウルトラギガモンスター+の「データ定額 50GBプラス」の月額料金は、ウルトラギガモンスターの「パケット定額 50GB」(写真)から1020円引き。“データ料金”同士を単純比較すると、確かに値下げされてはいる

―― 先ほどの質問と一部重複するが、菅官房長官の発言を含めて、携帯電話事業者は政府から料金の値下げ圧力を掛けられた状態にあると思う。このことについて、どう受け止めているか。

榛葉副社長 私たちは監督省庁である総務省から指導を受けつつ、会話をしながら事業に当たっているが、今回の(菅官房長官の)発言を含めて、政府視点では日本国民のことを考えて発言しているのだと思う。一方で、私たちはキャリアとしてユーザーの声に基づいていろいろな判断をしている。

 表現や具体的な数字は別として、私たちと政府は最終的には同じ「ユーザー(国民)」という「ゴール」を見ているのではないかと思う。私たちとしては(政府の声も)検討に入れつつ、それでもユーザーの声を一番大切にしたい。

 より一層、ユーザーの声を真摯(しんし)に受け止めて、できることを1つずつやっていきたいと考えている。

―― 今回のプランは「4割値引き」とまではいえないと思うが、今後さらなる値引きを検討することはないのか。

榛葉副社長 先ほども(25~30%超の値引き効果を見込んでいると)数字を出して話をしたが、議論をする上で「Apple-to-Apple」(※)は非常に重要なことだと思う。

※Apple(s)-to-Apple(s):直訳すると「リンゴとリンゴ」。意訳すると「同一条件での比較」という意味で、ビジネス上の英会話では比較的よく出てくるフレーズ

 「4割下げられる」というが、その根拠が本当にApple to Appleなのか、同じ土俵の上で比較しないと議論がおかしなことになってしまう。キャリア事業はプライスはもちろんだが、クオリティも重要な要素であり、両者のバランスをどうするのかという問題もある。

 海外に行くと、通信でストレスを抱えることがある。(モバイル通信環境が比較的良好であるとされる)ヨーロッパでも、ちょっと(市街地から)外れるとなかなかサクサク使えないというようなことが多い。日本では、現在の通信料金収入の中で4G(LTE)で全国をほぼカバーし、(一定水準の)クオリティを保ちつつ、いろいろなサービスも提供している。

 「(値下げ額が)4割に行っているかどうか」という数字も大切かもしれないが(クオリティやサービスといった)トータルで判断し議論するということも大切だ。

―― プライスリーダーを自負するソフトバンクが、最近政府から「(料金が)高すぎる」「4割下げろ」という指摘を受けることについてどう思うか。

榛葉副社長 繰り返しにはなるが、私たちとしては(政府の反応を)注視しつつ検討は進めていくが、最終的には「ユーザーの声に応えて」ということになる。

 ただ「安かろう悪かろう」では困る。今回のウルトラギガモンスター+のようにスマホライフをもっと楽しみたいという人向けのプランを充実しつつ、「もっと廉価に」という人にはY!mobileの中から思い切ったものを提供したり、ソフトバンクブランドが良いというのであればミニモンスターを用意したりしている。サービスラインアップを強化し、お客さまの声を大切にしていきたい。

 ただ、(大切なのは)価格だけではない。スマホは生活必需品になっているので、トータル的な面を考えつつベストなソリューションを提供していきたい。

ギガノーカウントの「懸念点」

―― ギガノーカウントの実現に当たって、データはどのように取り扱うのか教えてほしい。

 例えばネットワーク内で(動画や静止画の)再圧縮や解像度の変換といった処理を行っているのか。

榛葉副社長 この点については、私たちの重要な点(差別化要素)なので具体的なコメントは控えたいと思う。

―― ギガノーカウントは対象サービスを(ユーザー側で)選べない。そうなると「ネットワーク中立性」に関して問題が生じると思われる(参考記事)。

 どのような議論を経て、今回のプランの導入に至ったのか。

榛葉副社長 ネットワーク中立性に関して、私たちは“オープン”という立場を取っている。

 今回対応を発表した8サービスについては、提供事業者と(個別に)話をさせていただき、賛同していただいて合意に至った。私たちの技術的要件とのマッチングが必要ではあるが、(他の)提供事業者さんとは是非に(話し合いをさせていただきたい)と思っている。

 提供に当たっては、総務省に事前に確認して「この形態であれば問題ない」ということで、相談しつつ進めている。


ギガノーカウントの対応サービスは、提供事業者と個別交渉して合意を得た上で加えているという

―― ギガノーカウントにおける通信内容の識別はどうやっているのか。DPI(※)をしているのか。

※DPI(Deep Packet Inspection):「パケットフィルタリング」の一種で、ネットワーク側でデータ通信の内容を検査すること(参考記事)。データ料金減免サービスをしているMVNOサービスでは、この方法で通信内容を判断していることが多い

榛葉副社長 各サービス(アプリ)の“識別子”を見て判定している。それ以上は勘弁いただきたい。

―― 今回、ギガノーカウントを50GBプランのみに提供する形となるが、より容量の低いプランに提供する予定はないのか。

榛葉副社長 現時点ではこのプラン(データ定額 50GBプラス)でのみ提供する。

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