ソフトバンク・孫社長が「国内通信事業の4割を配置転換」と発表――5G時代に向けて、通信事業に頼らない組織体制を目指す:石川温のスマホ業界新聞
世間を騒がし続けている菅義偉官房長官の「携帯電話料金を4割下げる」発言。ソフトバンクグループの孫正義社長は、それに“応える”手段として「国内通信事業の人員を4割削減する」と言いだした。ソフトバンクを通信事業に依存しない企業にしようとしている。
今週、スマホ業界を震撼したのがソフトバンク・孫社長による「国内通信事業の人員を4割削減する」という発言だ。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年11月10日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
当然のことながら、ソフトバンク社員には動揺が広がっている。 なかには「実家の家族から電話がかかってきてもおかしくない」と心配する社員もいるほどだ。
今回、孫社長は「4割の人員を削減する」と発言したが、実際は「4割の人員を配置転換する」というのが正しいことになる。孫社長は NTT ドコモの料金値下げに対抗しようと社内の組織体制をスリム化させると決断。国内通信事業の人員を4割削減する一方で、今後、成長が見込まれる新たな事業に人員を振り分けるとしたのだ。
これまで通信事業に携わっていた社員の皆さんがPayPayの加盟店開拓に振り分けられるのかもしれない。これから会うすべてのソフトバンク社員さんにはとりあえず「お世話になりました」とご挨拶しておきたい。
ソフトバンクとしては、国内通信事業会社が上場を控えていることもあり、人員を削減することで増益を確保できる体制の会社にしたいという思いもあるのだろう。
もちろん、将来的に昨今の値下げ圧力の影響も出てくるだろうし、そもそも、ワイモバイルを手がけていることで、多くのユーザーが機能やスペックよりも格安志向になっているのをソフトバンクとしては肌身に感じているはずだ。
スマホのデバイスにおいても、これからはあまり進化しないだろうし、サービス面においても、キャリア主導のコンテンツよりも、OTTプレイヤーのサービスをそのまま持ってくるビジネスモデルが加速するだろう。
ここ最近、携帯電話各社は通信事業から事業を拡大しようと保険やレンディングといった金融部門やインターネット通販などを拡大している。確かに通信事業以外で稼がなければならないという危機感があるなかで、今後成長が期待できる分野に人員を割り当てるというのは決して間違った話ではない。
ソフトバンク決算会見の翌日、KDDI ・高橋誠社長にインタビューする機会を得た。
「KDDIも人員を4割削減したりしないんですか」と聞いてみたところ、「4割削減なんて、孫さんだから言える。我が社のフィロソフィーとしては、そういったリストラからは最も遠い会社だ」としながらも「確かに、IRの場でも『3万人も社員が必要なのか』という議論が出た。モバイルの利益が高いからといって、モバイル事業にしがみついていてはダメだ。
世間ではデジタルトランスフォーメーションと言われているが、うちの会社こそ求められている。5G時代に向けて、ビジネスモデルが大きく変革する。面白いタイミングになっていると思う」と言っていた。
菅官房長官の「携帯電話料金は4割値下げできる余地がある」という発言をきっかけに、まさかキャリアのリストラ話までに発展するとは思わなかったが、ソフトバンクとしてみればこのタイミングはいいチャンスになるのではないか。
ただあまり人員を削減しすぎると、将来的に人件費が圧縮されて、また儲けすぎではないかと言うツッコミにつながりかねない。ソフトバンクとしてはこれ以上儲けすぎない範囲で配置転換をしていく必要があるだろう。
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