“王道”の戦略で国内外のシェアを高めるHuawei 課題は米国市場の攻略:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
トリプルカメラ搭載の「Mate 20 Pro」を日本で発売したファーウェイ。グローバルでハイエンドモデルの拡販に力を入れているファーウェイだが、日本でも、その成果が徐々に出始めているようだ。市場動向や同社の戦略を解説していく。
フラグシップの比率も向上、グローバルでは米国市場も課題に
そのフラグシップモデルも、販売は好調だという。徐氏によると、先行して海外で発売となったMate 20シリーズは「1世代前のMate 10シリーズと比べて、販売台数が大きく増加している」という。徐氏は「海外の多くの国で、3倍から5倍のペースで伸びている」として、累計で1000万台に届くとの見方を示した。P20シリーズも含めたフラグシップモデルは、「前年同期比で2倍になっており、ブランドの認知が上がったことで、ミドルレンジやローエンドの販売もけん引した」(同)。
フラグシップモデルは利益率も高いため、この販売が上向くことは、ブランド力向上はもちろん、収益性を高める効果もありそうだ。日本では、まだその比率は低いとみられるが、ドコモやソフトバンクなどの大手キャリアがフラグシップモデルを取り扱うことで、徐々に存在感を高めている。
ただし、現状でも「消費者のニーズをきちんと満たしているかといえば、まだ課題もある」(徐氏)という。例えば、カメラ性能は他社の追随を許さないレベルに達したが、「手軽に編集したり、管理、共有したり、PCと迅速にデータをやりとりしたりといったとこは、まだ改善の余地がある」(同)。スマートフォン以外の機器と連携するような機能についても、「HiLinkという仕組みを用意しているが、まだ日本では展開できていない」(同)。
グローバルでみると、Appleを抜き、世界シェア2位に躍り出たファーウェイだが、シェア1位のサムスンとは、まだ距離がある。市場規模の大きな米国を攻略できていないのも、同社にとっての向かい風といえそうだ。さらに米国は、5Gのネットワークからファーウェイを排除する動きも強まっており、同盟国にもこの動きに呼応するよう、呼びかけを行っているという。
これはネットワーク事業の話だが、端末事業も無関係ではない。米国では、Mate 10シリーズをAT&Tなどのキャリアに納入し、市場を拡大する予定だったが、直前で発売がキャンセルされる事態にも見舞われた。2018年1月に米ネバダ州・ラスベガスで開催されたCESでは、端末部門のCEO、余承東(Richard Yu)氏が基調講演に登壇し、「これは消費者にとっても大きな損失になる」と悔しさをにじませたが、その状況は依然として変わっていない。
先の徐氏も「一部の国ではまだ製品を販売できていない」と認めながら、「われわれは一貫して、消費者のために最もよい製品や経験、サービスを提供するだけだ」と語っていたが、国家間の政治の駆け引きや安全保障問題が絡み合ってくる話であるだけに、一筋縄にはいかないだろう。
徐氏は「われわれは製品を170の国や地域で提供しており、トップ500に入る大企業が顧客になっている。また、3億人の消費者に対して製品を提供している」と信頼感をアピールするが、対立する国のネガティブキャンペーンが悪影響を及ぼす可能性もある。日本では勢力を増す一方のファーウェイだが、米国発のニュースを耳にした一部のユーザーからは、不安の声も聞こえてくる。海外の風評が事実無根だとしても、企業として、信頼性や透明性を高める取り組みは、今まで以上に重要になりそうだ。
関連記事
分離プランはHuaweiには追い風に? グローバル端末にFeliCaを載せる計画も
ファーウェイ・ジャパンが「HUAWEI Mate 20 Pro」を発売する。日本に導入する狙いや、総務省からの要請が強まっている分離プランの影響などについて、呉波氏がグループインタビューで語った。新AIチップと超広角カメラを搭載 「HUAWEI Mate 20 Pro」が11月30日発売 約11万円【更新】
ファーウェイ・ジャパンが、11月30日に「HUAWEI Mate 20 Pro」を発売する。価格は11万11880円(税別)。最新プロセッサ「Kirin 980」とLeicaと開発したトリプルカメラを搭載する。超広角カメラって楽しい! 「HUAWEI Mate 20 Pro」の進化したAIカメラを試す
Huaweiのフラグシップスマートフォン「Mate 20 Pro」が日本に上陸する。従来のモノクロカメラの代わりに超広角カメラを搭載したわけだが、どんなものか撮って試すことにした。なぜモノクロセンサー廃止に? NMカードの狙いは? 「HUAWEI Mate 20」シリーズの秘密を聞く
Huaweiの最新フラグシップスマホ「Mate 20」シリーズが発表された。カメラ、バッテリー、外部メモリなどで気になる部分が多い。そんなMate 20シリーズについて、Huawei本社でキーパーソンにインタビューする機会を得た。新型AIプロセッサ「Kirin 980」でより“インテリジェント”に――「HUAWEI Mate 20シリーズ」登場
Huaweiの「Pシリーズ」と並ぶハイエンドモデルシリーズがモデルチェンジ。新しい機械学習用プロセッサ(NPU)を搭載し、カメラ撮影機能などを大幅に強化した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.