au無制限プランの速度制限は「3日で6GBよりは緩い」 高橋社長が回答:2020年3月末までに「5G端末」を発売
KDDIが5月15日、2018年度(2019年3月期)の決算を発表。新料金プラン「auデータMAXプラン」で速度を制限する可能性の詳細について、高橋社長が言及した。5Gについては2019年9月にプレサービスを、2020年3月に正式サービスを開始することを予告した。
KDDIは5月15日、2018年度(2019年3月期)の決算を発表。同日に報道関係者向けの決算説明会を開き、2021年度(2022年3月期)まで3カ年の中期経営計画についても発表した。
2018年度の連結業績は売上高が5兆804億円、営業利益が1兆137億円の増収増益となり、営業利益は1兆円を突破した。au解約率は0.86%から0.76%に低下した一方、au契約数とMVNO契約数を合わせたモバイルID数は2695万へと1.8%の成長を遂げた。
auの料金値下げでも2019年度は増収増益を予想
決算説明会で注目を集めたのが、5月13日に「最大4割値下げ」を掲げて発表したauの新料金プランが業績に与える影響だ。新料金プランの影響が現れる2019年度の連結業績予想は売上高が5兆2000億円(2.4%増加)、営業利益が1兆200億円(0.6%増加)と、値下げの影響を感じさせない増収増益予想となっている。
その背景について高橋誠社長は「2017年に分離モデルを導入した後、1年半で3000億円強、利益への影響があった。これからの3年間で、あと1000億円の影響がある」と説明する。その中でも2019年度は新料金プランの影響があまり大きくなく、増収増益を達成できる見込みなのだという。
一方、2018年度の通信収入を振り返ってみると、1契約あたりの平均収入を表す通信ARPAは5860円(1.4%増加)、その合計である通信ARPA収入は4304億円(0.5%増加)といずれも伸びている。2016年度から2017年度にかけて落ち込んだものの、2018年度は第4四半期に前年同期比で「反転」したのだという。
その要因として毎月の利用料金から一定額を割り引く「毎月割」の存在がありそうだ。auは2017年に毎月割がない分離プランを導入しており、現在では1400万人が利用している。契約者全体では毎月割の終了が進んでおり、その分だけ通信収入を押し上げているというわけだ。
5G時代を先取りした無制限プラン、速度制限の目安とは
auの新料金プランにおいて、疑問の声が多かったのが「auデータMAXプラン」の注釈だ。毎月のデータ容量の上限がないプランにもかかわらず、KDDIのプレスリリースには大量通信や動画視聴において速度を制限する可能性が記述されていた。
これらの制限について、5月13日の発表会時点では「ネットワークの状況を見ながら制限をかけていく」との説明にとどまっていたのに対し、高橋氏は質疑応答において、一定期間の大量通信は「3日間で6GBよりは緩い制限になる」、動画視聴は「HD動画を見続けられる程度」との目安を示した。
いずれにしてもテザリングやデータシェア、国際ローミングの利用時にはスマホ利用とは別枠で20GBの制限があり、超過した際には128kbpsに速度が制限される。パケットの追加購入は従来と同じ仕組みでできるとはいえ、固定回線を置き換えるような用途には難しいかもしれない。
興味深いのはauが無制限プランの導入を「前倒し」したとの説明だ。「3Gの定額制ではauがトップバッターだった。料金ではパイオニア的な存在だ。無制限のプランは5Gや楽天参入のタイミングと予想されていたが、現場に無理を言って入れてもらった」(高橋氏)と思いを語った。
2020年3月末までに「5G端末」を販売開始へ
決算説明会の後半で高橋氏は、2022年3月まで3カ年の中期経営計画を明らかにした。5Gのロードマップとして、2019年9月にプレサービスを、2020年3月に正式サービスを開始する。これに伴い、2020年3月末までに5G端末の販売を開始するという。ただし「端末の種別は今後検討する」(高橋氏)として、スマホ以外の可能性も示唆した。
当初は4Gで全国をカバーし、一部を5Gで置き換えるNSA(Non-Standalone)で展開する。5Gの周波数は3.7GHz帯の100MHzを2枠、28GHz帯を400MHz、合計600MHzの割り当てを受けており、「世界各国で利用が見込まれる周波数だ。今後の開発費、端末調達コストを削減できる」(高橋氏)との見通しを示した。
ライフデザイン事業の売上高は、2018年度の9460億円から2021年度には1.5兆円に拡大させる。狙いの1つに、解約率の低減を挙げる。例えば200万契約を突破した「auでんき」の契約者は、au解約率が通常の半分だという。このように通信とライフデザインを組み合わせた「ライフデザイン版スマートバリュー」の推進を掲げた。
個人向けのグローバル事業として、人口増加が著しい東南アジアに進出する。既にミャンマーとモンゴルなどで3300万契約があり、今後は日本と同等以上の契約を獲得。海外市場でも「通信とライフデザインの融合」を展開する構想を示した。
他にも法人向けIoT事業ではリカーリングビジネスの確立により2021年度に売上高1兆円を目指す。パートナー企業との共創、利用者200万人を突破した「au PAY」など金融・決済事業、ビッグデータ活用、持続的成長とSDGsへの取り組みなどを掲げ、「持続的成長と株主還元の両立を目指す」(高橋氏)と締めくくった。
ブランドスローガンを一新
KDDIは、5月15日からブランドスローガンを一新する。KDDIブランドは「Designing The Future」から「Tomorrow, Together」に変更。5GやIoTに代表される先端技術を活用して、未来へ向かって持続的に発展、成長していくという思いを込めた。
auブランドは「あたらしい自由。」から「おもしろいほうの未来へ。」に変更。「通信とライフデザインの融合」によってユーザーの生活に楽しい変化を生み出し、ワクワクする体験価値を提案し続けていくという思いを込めた。
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