総務省の「端末割引2万円まで」が業界に与える影響は? 残債免除プログラムとの整合性を考える:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
電気通信事業法の改正を受け、端末割引の上限を2万円までに定めた新制度案を総務省が公表した。割引の上限はドコモが3万円という水準を提案していたが、総務省案では根拠が不明瞭なまま、1万円引き下げられている。3キャリアが提供している残債免除プログラムは、一部見直しを迫られそうだ。
端末割引の制限と違約金の引き下げで、本当に競争は活性化するのか?
この方法で補助の金額を計算するのは、もう1つ別の問題もはらんでいる。上限が2万円に定められた上で、人気の端末ほど中古買い取り価格は高くなるため、人気のある端末ほど、補助の「枠」が増えるということだ。ここまで見てきた通り、iPhoneの場合は残債免除プログラムを利用する方がユーザーにとって損をすることになるケースもある。そのため、プログラムと別の形で2万円までの還元ができてしまうことになる。
本来であれば、割引は売れ行きの鈍い端末につけたいところだが、この仕組みの場合、人気の端末ほど、安く売ってもいいことになりかねない。メーカー同士の競争という観点で見ると、それが果たして本当に公平なのかは疑問が残るところだ。
また、端末価格にここまで厳しく制限がつくと、本当に競争が促進されるのかも、検証が必要になる。MNPでの大幅なキャッシュバックが禁止されて以降、キャリア間の流動性は徐々に低下してきた。分離プランの導入に加え、契約にひも付かない割引がここまで制限されると、キャリアの取れる戦術も限られてくる。2年契約の解除料を引き下げるのは、その緩和策ではあるものの、両者を差し引きして、流動性が本当に高まるかどうかの検証は、ここまで一切行われていない。
仮に、端末価格の上昇による流動性の低下の方が強い要因になるとすれば、キャリアを移るユーザーはさらに減ってしまうだろう。実際、総務省の取った乗り換え意向のアンケートでは、違約金や手数料などを考慮せず、積極的にキャリアを移りたいと考えているユーザーの割合は、わずか9.9%に止まっていた。「検討してもよい」まで含めると、47.5%に増えるが、別のアンケート結果を見ると、こうしたユーザーの半数以上が、MNPによって2000円以上、料金が下がることを想定している様子が分かる。
ただ、MNO同士の料金を比べると、2000円以上金額が下がるケースはまれだ。新規参入する楽天モバイルが打ち出す料金が安かったとしても、大手3社に比べてエリアに対する不安があるため、総務省が想定しているように、流動性が上がり、競争が活発化するのかは不透明な部分が多い。MVNOに移るにしても、速度やサポートなど料金以外の要素でMNOと単純比較できない面がある。この政策を実行した結果、モバイル市場の競争が本当に活性化されたのかどうかは、数年後、きちんと検証する必要がありそうだ。
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