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総務省の「端末割引2万円まで」が業界に与える影響は? 残債免除プログラムとの整合性を考える石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

電気通信事業法の改正を受け、端末割引の上限を2万円までに定めた新制度案を総務省が公表した。割引の上限はドコモが3万円という水準を提案していたが、総務省案では根拠が不明瞭なまま、1万円引き下げられている。3キャリアが提供している残債免除プログラムは、一部見直しを迫られそうだ。

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スマホおかえしプログラムも、一部で2万円を超える可能性が

 では、免除される金額が小さいドコモの場合はどうか。まず、当たり前だがiPhoneは差分があるどころか、むしろ中古業者の下取りに出した方が、お得になるケースも多い。先に挙げたiPhone 7(256GB)で計算すると、免除される3分の1は3万5208円で、中古業者の買い取り価格である3万9500円を下回っている。補助の考え方を当てはめると、スマホおかえしプログラムが補助になるどこか、むしろユーザーからドコモが補助を受けているともいえる。この場合、割引していることにはならず、回線契約とひも付けることもできそうだ。

 Androidも、免除額が3分の1であれば、上限の2万円を超えないケースがほとんどだ。先に挙げた、Xperia X Performanceの場合は、3万24円が免除され、中古の買い取り価格相場との差分は1万1324円で、2万円の上限はクリアできている。より条件がいいGalaxy S7 edgeも同じだ。総務省の資料に載っている他の端末も、全て基準は満たしていることになる。

本体価格 残債免除額 2年経過時の市場買い取り額 差し引き
Xperia X Performance 9万72円 3万24円 1万8700円 1万1324円
Galaxy S7 edge 9万3960円 3万1320円 2万3740円 7580円
iPhone 7(256GB版) 10万5624円 3万5208円 3万9500円 ▲4292円
ドコモの場合、免除される額が小さいため、参考資料にあったケースでは、2万円を超えることはなかった

 ただ、ここに掲載されている端末は、あくまで一例でしかない。例えばHuawei端末の場合、米中貿易摩擦の影響を受けたあおりで、「P20 Pro」の買い取り価格は平均より下落している上に、一部の中古業者は買い取りを停止している。上記資料にあった中古業者のうち、買い取り価格が確認できた3社の平均を取ると、P20 Proは1年経過時点での買い取り価格が2万1066円。24カ月経過時点では、ここから最大で10%程度価格が下落することを踏まえると、1万円前後になる可能性がある。

HUAWEI P20 Pro
米中貿易摩擦のあおりを受け、P20 Proは買い取り価格が落ちている。買い取りを受け付けていない中古業者も

 発売時の本体価格は10万3680円のため、3分の1が免除されると3万4560円になり、買い取り価格との差が2万円を超えてしまう。冒頭に引用した関係者のコメントの通り、例外もあるというわけだ。米国の制裁を受けたあおりもあるため、あくまでレアケースかもしれないが、一般化すると「価格の高いハイエンドモデルで、極端に不人気の端末」は、基準を超えてしまう恐れがある。中古価格の相場をどう予測するかにもよるため、一概にはいえないが、スマホおかえしプログラムにも、例外規定を設ける必要が出てくるかもしれない。

本体価格 残債免除額 2年経過時の市場買い取り額(筆者予想) 差し引き
P20 Pro 10万3680円 3万4560円 1万円前後 2万4560円
筆者が算出したP20 Proの予測値を当てはめると、2万円を超えてしまった

 前回の連載でも触れたが、もともとドコモは割引の上限を3万円にすることを提案していた。3万円の根拠は冒頭で挙げた通りだが、補助の考え方がこうなることを予測していた節もある。3万円であれば、スマホおかえしプログラムを支障なく運用できたというわけだ。上限が1万円引き下げられ、バッファーがなくなってしまったのは、ドコモにとっても誤算だったかもしれない。

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