法改正で100万契約以上のMVNOにも規制適用——MVNO市場の成長にブレーキも:石川温のスマホ業界新聞
電気通信事業法の改正に合わせて改定される携帯電話サービスに関するガイドラインでは、MNOだけではなく契約数が100万件を超えるMVNOも規制の対象となる。この規制は、総務省の狙いとは裏腹にMVNO市場の停滞を招いてしまう可能性がある。
10月からの改正電気通信事業法により、端末割引の上限が2万円になったり、長期契約に対する割引や2年間の契約拘束に対して規制が入ろうとしている。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年7月20日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
この対象となるのは、大手キャリアとサブブランドだけではない。MVNOも100万契約を超えるところは規制対象となる見込みだ。現状、100万契約を超えるのは、インターネットイニシアティブと、mineoブランドを掲げるオプテージの2社となる。
両社とも長期契約に対しては特典を設けていることもあり、こちらは見事に規制の対象となってしまうようだ。
本来、総務省としては、大手キャリアやサブブランドに対して、規制を設ける一方で、料金値下げを促進する立場として、MVNOには競争力をつけてもらうというのが筋ではないか。しかし、今回の改正電気通信事業法では、そのMVNOにも足かせがつけられようとしている。
先日、DMMのMVNO事業が売却され、楽天が買収するという話があった。今後、MVNOでもさらに撤退や再編話が出てくることだろう。
その際、中小のMVNOが合併し、一緒になろうとした際、「100万契約を超えてしまう」となれば、規制の対象となってしまうため、合併を断念することもありえる。
また、現在、100万に満たないMVNOが独自のサービスや料金体系で一気にユーザーを集めるようなことがあっても、100万契約を目前にしたところで、一気にブレーキを踏むということも考えられる。
もちろん、すでに100万を超えているIIJやmineoにとっても、長期契約の優遇がなくなることで、ユーザーが離れてしまうことだってありえるだろう。
つまり、この100万契約の規制は、MVNO事業者たちの経営意欲を削ぎ、市場を停滞させる恐れがあるのだ。
そんなわかりきったことをなぜ総務省は導入しようとするのか。
今後、中小MVNOが撤退を考えたときに、引取先としての候補としてはIIJやオプテージが理想だったりする。しかし、IIJやオプテージが引き取れなければ、結局、楽天や3キャリアが買収することになるだろう。
そうなれば、結局、MVNOのユーザーは、大手キャリアに逆戻りとなってしまう。
総務省の規制によって、MVNO市場が崩壊することだけは避けなくてはならない。今からでも遅くない。100万契約の規制は見直す必要があるのではないだろうか。
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