端末割引はOK、docomo withはNG 「完全分離プラン」の中身を整理する:法改正で義務化へ
総務省は、3月5日に「電気通信事業法の一部を改正する法律案」の閣議決定を行った。この法改正が国会で可決されれば、分離プランは法律で義務化される。そもそも分離プランとは何か。義務化で何が変わるのか。
総務省は、3月5日に「電気通信事業法の一部を改正する法律案」の閣議決定を行った。これは同省が2018年11月に行った「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」にもとづくもので、「シンプルで分かりやすい携帯電話に関わる料金プランの実現」と「販売代理店の業務の適正性の確保」の2つが主な内容。
中でも注目したいのが、前者の料金プランについて。総務省は、通信料金と端末代金を完全分離させた、いわゆる「分離プラン」の徹底を要請。これまでは通信料金と端末代金が一体となっていたために料金プランが分かりにくいという声があったが、これを解消するのが狙い。今回の法改正が国会で可決されれば、分離プランは法律で義務化される。
分離プランのポイントは大きく2つある。1つは、「端末の購入を条件とする通信料金の割引禁止」。これは現在3キャリアが提供している端末購入補助「月々サポート」「毎月割」「月月割」を指す。購入補助は24カ月にわたって適用され、額は端末によって異なる。この24回分の割引額を端末代金から引いた額を「実質負担額」と呼ぶが、法改正によってこの仕組みは消滅する。つまりユーザーは基本的に端末を定価で購入する形となる。
2つ目のポイントは「通信契約の一定期間の継続利用を条件とした、端末代金の割引禁止」。これはドコモの「端末購入サポート」が該当する。端末購入サポートでは、端末代金から一定額を割り引く代わりに、12カ月以内に機種変更や解約などをすると、解除料が発生する。いずれも1〜2年の拘束期間が発生するため、過度な囲い込みになると判断したのだろう。
さて、ここで改めて強調しておきたいのが、この緊急提言や法改正では端末の割引自体は禁止していないこと。分離プランによって端末代金の割引ができなくなり、高額な端末は売れなくなるのでは……といわれているが、通信サービスの利用継続を条件にしなければ、端末代を割り引くこと自体は問題ないのだ。
ハイエンド端末だけ、キャリアがあからさまに高額の割引を行うことは、公平性の観点から難しいかもしれないが、店舗の独自施策として割引がエスカレートする可能性は高い。その店舗について、総務省は販売代理店に対して存在を直接把握できるよう届出制を導入するが、店舗の過度な割引施策に対してどう向き合うのかは気になるところだ。
もう1つ言及しておきたいのが、ドコモが提供している「docomo with」だ。docomo withでは、対象機種を購入すると、次に機種変更するまでは毎月1500円が割り引かれる。この1500円の割引は「端末購入補助ではない」との考えから、分離プランとしていたが、docomo withは「端末の購入を条件とする通信料金の割引」に該当するため、改正法案に抵触する。
総務省の総合通信基盤局電気通信事業部料金サービス課にも「法律が改正されたら、docomo withは提供できなくなるのか」と聞いたところ、「そうなる」との答えが返ってきた。ドコモの吉澤和弘社長もdocomo withを見直すことを予告しているが、ドコモが2019年4月以降に発表する予定の新料金プランでは、docomo withに関しても何らかのアナウンスがありそうだ。
3月8日の「モバイルフォーラム」で登壇した、総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部長の秋本芳徳氏は「“完全”分離プラン」という言葉を使っていたが、「完全分離」には、「契約継続や端末購入に伴う割引を行わない」という意味が込められている。「現在は行きすぎた囲い込みが見られ、期間拘束のあるプランで通信契約が結ばれている。セット販売がダメだと言っているわけではない。端末の購入を条件として割り引くのがダメ。分離することで、端末市場のメカニズムが回復することも期待している」と同氏は話した。
気になる法改正の時期だが、総務省の担当者は「例年、3月は他の議題で立て込んでいるため、4月以降に議論をして、5月に可決されたとする。そこから総務省令の策定に入り、3カ月ほどかかる。どんなに早くても8〜9月になるのでは」とのことだった。ドコモは2019年度第1四半期に新料金プランを提供予定なので、スケジュール上は問題ない。まずはドコモの発表を注視したい。
関連記事
- シェアパック、docomo withの廃止を匂わす吉澤ドコモ社長――高橋KDDI社長「ドコモの分離プランで世の中が変わる」
5G一色だった「MWC19 Barcelona」。5Gといえばやはり気になるのは“通信料金”。すでに安価に使える選択肢があるのに5G普及期に「完全分離プランを導入せよ」という総務省は果たして「正しい」のだろうか? - 分離プランが主軸になっても「端末購入補助なしはあり得ない」 ドコモ吉澤社長
ドコモの決算説明会では、2019年4月以降に提供を予定している新料金プランに質問が集中。吉澤社長は、分離プランになっても「端末購入補助がなくなることはあり得ない」と発言。一方、今後はミッドレンジの端末を拡充していく方針も明らかにした。 - 総務省が緊急提言 通信料と端末代の完全分離を要請 代理店の在り方にもメス
総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」と「ICTサービス安心・安全研究会」が、携帯電話料金と携帯電話を含む通信サービスの販売代理店に関する“緊急提言”の案を作成した。取りまとめを前に、この案に関する意見募集も行う。 - ドコモが2019年に料金を2〜4割値下げへ 吉澤社長「分離プランを軸に検討」
NTTドコモが10月31日、2018年度第2四半期の決算説明会で、中期経営計画を発表。その中で、現行の料金プランを見直すことを予告。2019年度第1四半期に、現行プランよりも2〜4割程度値下げした新料金プランを提供する。 - Y!mobileは2019年度上半期に分離プラン対応へ ソフトバンク宮内社長が言及
ソフトバンクが上場後初となる決算説明会を開催。同社の宮内謙社長が、ソフトバンクとY!mobileの両ブランドにおける「分離プラン」について言及した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.