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「分離プラン」への期待と不安要素モバイルフォーラム2019(1/3 ページ)

MVNO委員会は、3月8日、「モバイルフォーラム2019 〜2030年を見据えた新たな競争ルールとMVNOの果たすべき役割〜」を開催。総務省の担当者や「モバイル研究会」の有識者、ジャーナリストが講演し、分離プラン導入についてそれぞれの意見を述べた。

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 テレコムサービス協会のMVNO委員会は3月8日、「モバイルフォーラム2019 〜2030年を見据えた新たな競争ルールとMVNOの果たすべき役割〜」を開催。世界的に5GやIoTによる変革を控える一方、日本では競争ルールの見直しや消費者保護に関する議論が進んでいる。2030年の電気通信市場を見据え、MVNOが今後果たすべき役割などについて、総務省の担当者や「モバイル研究会」の有識者、ジャーナリストが講演した。

分離プラン導入で「MVNOの振興が実現できる」

 野村総合研究所のパートナー(テレコム・メディア担当)で、「モバイル市場の競争環境に関する研究会(モバイル研究会)」に有識者の1人として参加している北俊一氏は「完全分離時代におけるMVNO振興のための課題」と題して講演。完全分離プラン導入がMVNOに与える影響について語った。

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野村総合研究所のパートナー 北 俊一氏

 北氏は完全分離プランを「ライフラインである携帯電話サービスの料金の低廉化、健全化のため」に導入したと説明。2000年くらいから取り組み始め、2007年に一度分離プランが導入されたが形骸化。その後、行き過ぎたキャッシュバックを抑えるためにガイドラインも作ったが、「最後の手段」ということで今回の完全分離に至ったと経緯を振り返った。

 北氏は「キャッシュバックはMNOがユーザーを取り合うキャリア間の競争の産物」としながらも、体力のないMVNOは「ユーザー奪い合い競争の蚊帳の外」だったと指摘した。

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現在進められている「モバイル研究会」第1回でプレゼンした資料。2007年に分離プランが導入されたが形骸化し、キャッシュバックのエスカレート。安部首相の携帯電話料金の負担軽減の指示や菅官房長官の「4割値下げ余地」発言から完全分離に至る流れを振り返っている

 次に、総務省のモバイル研究会と消費者保護ルールのワーキンググループが合同で出した緊急提言について説明。その提言の1つが端末代金と通信料金の完全分離だが、北氏は「『完全分離』という言葉の意味は、誰も分からない状態となっている。言葉が一人歩きしていて、端末値引きが全然できなくなるんじゃないかというイメージが先行している」と注意喚起した。

 割引が一切なくなると報道されることもあるが「そういうことでは決してない」と同氏。通信契約の利用を条件としなければ、端末はいくらで売られてもいいという。例えば家電製品が最初は高額で、型落ちになるにつれでだんだん安くなっていくのと同じだ。「メーカーさん、キャリアさん、代理店さんの関係の中で、適正な調達をして、適正な販売をし、適正な値付けをして、適切に在庫を管理していってもらえればいい」(北氏)。

 ただ、分離プランの導入で特に販売代理店が厳しい立場になるという指摘もある。北氏はその通りだとし、「今回の分離は業界の改革。痛みを伴わない改革はない」と断言した。

 「端末補助をじゃぶじゃぶ付けて、ユーザーを取り合う状況が世界的に見ても異常で、正常化することなのだと捉えてもらいたい。分離するとさまざまな良いことがあるが、当然、端末メーカーや代理店の経営に影響が出てくる。しかし、この新しい環境に適用できたところが生き残っていくことになる」(北氏)

 MVNOについては、分離プラン導入でキャリア間のスイッチングコストが低くなり、「MVNOの振興が実現できる」と期待する。また、ユーザーは自分の払っている料金を認識し、自分に合った端末、場合によっては中古端末も選べるようになるとメリットを挙げた。

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分離プランのメリットとデメリット

 その一方で不安材料も指摘した。それはMNOが料金を下げることだ。ドコモが「2割から4割の値下げ」を行い、10月には楽天が低料金を携えてMNOとして携帯電話事業に参入する。それらに対抗するためにMVNOにはさらなる努力が求められるが、接続料の算定方式にも問題があるとした。実際「将来原価方式」にするかどうか検討が進んでいるが、北氏は「接続料算定方式は抜本的な改革が必要」との立場を取る。

 また、端末と通信のひも付けが禁止された分、光回線や電気、ガス、動画配信サービスなどと一緒に契約するバンドル化が進むと予想。今後の課題になってくると指摘した。

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接続料算定や他サービスとのバンドル割引などが今後の課題

 中古端末については、「日本人は中古端末を嫌う傾向があるが、新品同様に再生したリファービッシュ端末を実際に見せると抵抗感がなくなるので、もっと周知、啓もうの必要がある」という考え。中古端末を流通させるための環境を整え、中古端末を望む人が選択肢にできる状況にする必要があると語った。

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