「分離プラン」への期待と不安要素:モバイルフォーラム2019(2/3 ページ)
MVNO委員会は、3月8日、「モバイルフォーラム2019 〜2030年を見据えた新たな競争ルールとMVNOの果たすべき役割〜」を開催。総務省の担当者や「モバイル研究会」の有識者、ジャーナリストが講演し、分離プラン導入についてそれぞれの意見を述べた。
分離プラン導入には多くの不安要素がある
続いて、ジャーナリストの石川温氏が「『モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言』の不安要素」と題し、モバイル研究会が出した緊急提言に対して5つの疑問点を指摘した。
石川氏は、「完全分離プランが導入されても値下げを実感できないのではないか」と懸念する。分離プランを導入済みとしているKDDIやソフトバンクの料金は、キャンペーンの割引が含まれていたり、光回線契約や家族の回線をまとめたりすることで安くなっているだけだと指摘した。
「KDDIは3800億円規模の顧客還元を実施し、実際、ピタットプラン/フラットプランを導入したことによって、3割程度、請求金額が安くなってモバイル関連収入が下がっている。しかし決算会見で、(高橋誠社長は)キャンペーンが一段落する第4四半期には反転してくるだろうと言っていた」(石川氏)
ドコモの「2割から4割の値下げ」についても、吉澤社長は「(料金が下がるのは)人による。全員が2割から4割下がることはあり得ない」と答えたという。なお、料金プランが分かりにくいと指摘されていることから、吉澤社長はシェアプランからの脱却も考えているようだと紹介した。
石川氏は、分離プランの導入で3キャリア、さらにはMNOとMVNOの料金プランが画一化し、MVNOはさらに安い料金プランが求められて苦しい立場に置かれると予想。KDDI高橋社長の「楽天やMVNOは、今後厳しくなるのでは」と語ったというエピソードでも後押しした。
2つ目の不安要素は、完全分離プランで再び官製不況になるのではということだ。割引がなくなるのでハイエンドスマホが売れなくなる傾向となり、メーカーはミドルレンジ端末にシフト。Appleは日本でも型落ちモデルで台数を稼ぐビジネスモデルにシフトしていくだろうと語った。
問題は、2020年に商用サービスが始まる「5G」に対応するスマホが普及するかということだ。完全分離プランで割引がなくなると、メーカーは5Gスマホを日本で展開するのが難しくなる。「5Gのイノベーションを起こそうと思ったら端末の普及が大事。販促費なり割引なり、何かしらのサポートが必要」と石川氏は指摘した。
ちなみに、分離プランの導入でdocomo withの新規受付が停止されそうだ。毎月の利用料が1500円割引されるdocomo withも、端末購入に関わる通信料金の値引きと考えられ、総務省の考え方からするとアウト。新しい仕組みによって、こうした安いプランもなくなることを石川氏は「もったいない」と残念がった。
「今のドコモのプランは、端末のスペックは気にしないけれど月々の料金を安くしたい人向けのdocomo withと、高スペックの端末を手軽に買いたいという人向けの2つの選択肢があった。完全分離プランを導入するとプランの多様性がなくなり、ユーザーにとって不利益になるのでは」(石川氏)
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