ミッドレンジとハイエンドを“再定義” シャープに聞く、2019年秋冬モデルの狙い:開発陣に聞く(1/3 ページ)
シャープは電気通信事業法の改正法「なんとなくハイエンドスマホを選ぶ文化の終焉」と捉え、AQUOS senseシリーズを強化。メーカーの“顔”となるハイエンドスマートフォンにも、従来以上の明確な売りを作った。そんな同社の新戦略と、その下で生み出された各機種の特徴をインタビューで深掘りした。
10月1日の電気通信事業法改正を受け、メーカー各社とも、戦略の見直しを余儀なくされている。ハイエンドスマートフォン一辺倒だったメーカーも、ミドルレンジ以下の端末を拡充するなど、端末購入補助の削減を意識したラインアップを取りそろえるようになった。ミドルレンジのAQUOS senseシリーズに力を入れてきたシャープも、その1社だ。
同社は電気通信事業法の改正を「なんとなくハイエンドスマホを選ぶ文化の終焉」と捉え、AQUOS senseシリーズを強化。一方で、メーカーの“顔”となるハイエンドスマートフォンにも、従来以上の明確な売りを作り、こだわりの強いユーザーを狙う。この戦略の下で生み出されたのが、「AQUOS sense3」「AQUOS sense3 plus」と、「AQUOS zero2」の3機種になる。
シャープの2019年秋冬モデル。左の女性が手にしているのが左から「AQUOS sense3 plus」「AQUOS zero2」、右の女性が手にしているのが左から「AQUOS sense3」「AQUOS zero2」
【訂正:2019年11月1日12時6分 初出時に、キャプションの製品名に誤りがありました。おわびして訂正致します。】
そんな同社の新戦略と、その下で生み出された各機種の特徴をインタビューで深掘りした。インタビューに答えたのは、シャープ通信事業本部 パーソナル通信事業部長の小林繁氏と、AQUOS sense3を担当した商品企画部 主任の平嶋侑也氏、AQUOS zero2を担当した商品企画部の篠宮大樹氏。その一問一答は、以下の通りだ。
ユーザーがどこに行くべきか分からなくなった
―― 記者会見で、「なんとなくハイエンドスマホを選ぶ文化の終焉」と銘打ったことが話題になりました。最初に、この発言の真意を、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか。
小林氏 これまでは、なんとなくハイエンド、なんとなくいいものを買うという風習が、世間には強く存在していました。これが明らかに終わろうとしています。メーカーとしては、商品化をかなり身構えています。大きな変化があるときは、1カ所にたくさんいたお客さまの選ぶ基準がとたんになくなってしまい、どこに行かれるのかが分からないからです。そのため、できるだけ選びやすい環境をご提供することにしました。
昨年(2018年)は「AQUOS R2 compact」や「AQUOS zero」などが、一部のオペレーターにしかご提供できませんでした。お届け先が限られてしまったことで、選ぼうと思っても選べない状況があった。これに対し、今年(2019年)は現時点で発表されている限りでも、昨年と比べ、たくさんのオペレーターに採用していただけています。より多くのお客さまにお届けできる準備が整いました。
今年は、中国メーカーや韓国メーカーからも安いものが出てきて、グローバルベースでの競争になっています。グローバルベースの競争では、甘えが一切なく、コストパフォーマンスも含め、価格対性能が純粋に比較されます。ここにはきっちりキャッチアップしていくつもりで、AQOUS zero2の画面内指紋センサーやストレージの容量(256GB)にもつながっています。
お客さまがどこに行くのか分からないという意味では、AQUOS sense3 plusも象徴的な存在です。「AQUOS ZETA」や「AUQOS SERIE」「AQUOS Xx」など、キャリアごとにブランドが異なっていたころのお客さまが機種変更する際に、(AQUOS zero2やAQUOS sense3だけだと)行き場がない。メモリ(RAM)が3GB、ストレージ(ROM)が32GBぐらいで、CPU性能もそれなりに高かったですからね。
これまでは、高いモデルと安いモデルの二極化が進んでいました。高い方にはサブシディ(販売奨励金)が付いて、安く見える。安いものはそのまま安い。結果として、間がつぶれていました。今回の変化で値段が見えるようになると、その真ん中のゾーンが見えるようになってきます。10万円は高すぎるという方に向け、「これでいい」と選べるよう、AQUOS sense3 plusを企画しています。カメラも電池もよくして、チップセットもSnapdragonの600番台。たいていのお客さまが、これを選べば安心というものにしています。
AQUOS sense3のカメラは“なんちゃってデュアルカメラ”ではない
―― では、AQUOS sense3がどのような機種なのかを改めてご紹介いただけないでしょうか。
平嶋氏 もともとAQUOS senseシリーズは、必要十分を突き詰めた端末でした。Androidのスタンダードを目指したい。なんとなくハイエンドから脱却し、さまよわれる方のための選択肢として、これさえ選んでいれば十分という状況を作り上げていきたいと考えていました。AQUOS sense3は、2019年の必要十分を再定義するというのが、開発ポリシーです。
では、2019年に何が求められるのか。主なところでは、電池の持ちがあります。もう1つが、メモリ(RAM)、ストレージ(ROM)、CPUといった基本性能です。ストレージは64GBに向上させ、2年、3年、4年と長く使う上でも必要十分になるようにしました。トレンドにキャッチアップするという意味では、カメラもデュアルカメラにしています。
世の中には“なんちゃってデュアルカメラ”もありますが、それは本当に必要十分なのかを考え、2眼目は広角にし、メインカメラと同じセンサーを搭載しています。
―― なんちゃってデュアルカメラ(笑)。確かに、200万画素程度の深度測定用カメラを搭載するミドルレンジモデルは多いですが、あれはマーケティング的な色合いが濃いような気もしています。
平嶋氏 誤解を恐れずいえば、必要十分ではなく、余分だと思っています。AQUOS sense3の2眼目は、121度の超広角カメラですが、それで新しい見え方を提供したいという思いがありました。このように、とにかく必要十分なものは何かを、今の価格帯で突き詰めたのがAQUOS sense3になります。
これに対し、1段上の端末として、AQUOS sense3 plusがあります。よりエンタメ寄りで、よりリテラシーが高く、自分の使い方をしっかり理解している方が、「これぐらいがちょうどいい」と選ばれるものを目指しました。Dolby Atmosにも対応し、しっかりとした機能を付与した1つ上のラインとしてご提供しています。
AQUOS sense3(右)とAQUOS sense3 plus(左)。AQUOS sense3で必要十分を追求しながら、sense3 plusでは従来のハイエンド機ユーザーの受け皿になることを狙う
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