秋冬商戦を「ゲーム」と「コスパ」で攻めるシャープ スマホ市場が変化する中で勝算は?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
電気通信事業法の改正で端末値引きが規制されることで、メーカーに与える影響は大きくなる。Androidスマートフォンで国内シェア1位を誇るシャープも例外ではない。発表したばかりの「AQUOS zero2」「AQUOS sense3」「AQUOS sense3 plus」の勝算はあるのか。
10月1日から、改正・電気通信事業法が施行される。これによって分離プランが義務化され、モバイル業界の各プレイヤーに大きな影響を与えることが予想される。特に、割引の上限が2万円になったことは、キャリアのみならず、そこに端末を納入するメーカーへのインパクトも大きい。売れ筋のモデルが変わる可能性があるのはもちろん、販売台数の減少に見舞われてしまう恐れもある。キャリアの影響力が落ちた分を、オープンマーケットで補う動きも活発になるかもしれない。
Androidスマートフォンのメーカーとして、国内シェア1位を誇るシャープも、冬商戦に向けた新モデルでは、この市場動向を意識した。目指したのは、「なんとなくハイエンドスマートフォンを選ぶ流れ」(シャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏)からの脱却だ。この戦略に基づき、同社は「AQUOS zero2」「AQUOS sense3」「AQUOS sense3 plus」を発表した。ここでは、その詳細を解説していきたい。
販売好調のシャープが繰り出した次の一手は、二極化への対応
早くからスマートフォン市場に取り組んできたシャープだが、ブランド力の弱さや、トレンドへのキャッチアップが遅れたことで、シェアはじりじりと低下していた。この流れを変えたのが、約2年半前に行ったブランドの刷新だ。これまで、キャリア別に分かれていたフラグシップモデルのブランドを「AQUOS R」に統一。同時に、ミドルレンジのスマートフォンにも注力し、「AQUOS sense」シリーズを生み出した。
こうした取り組みが評価され、シャープのシェアは急速に回復。「AQUOS zero」を加えた「3つのシリーズをご評価いただき、順調に販売を伸ばすことができた。2019年上半期も、Androidスマートフォンでシェアナンバー1になった」(通信事業本部 本部長 中野吉朗氏)という。特に、台数ベースでは大手キャリアだけでなく、MVNOや家電量販店に直接販売したAQUOS senseシリーズの売れ行きがよく、初代は、派生モデルも含めたシリーズ累計の販売台数が200万台を突破している。
ハイエンドモデルのブランド力強化や、ミドルレンジモデルの拡大といった戦略は、ここ数年のトレンドに沿ったものだが、冒頭述べた通り、10月1日からはその流れがさらに加速する可能性がある。先の小林氏は、ユーザーの二極化が進むと予想しながら、次のように語る。
「1つ目が、強い意志を持ち、明確な目的を持ってフラグシップモデルを選ぶ人。もう1つが、間違いない賢い選択をしたい、価値あるパフォーマンスを選びたいと思っている人。多くのものから比較、吟味して効果的なものを選ぶようになる」
今まで以上にハイエンドモデルには明確な個性やブランドが、ミドルレンジモデルにはコストパフォーマンスのよさが求められるようになるというわけだ。この戦略に従い、自社製の有機ELディスプレイを搭載したAQUOS zero2は、持ち前の個性をさらに強化。ユーザー層も初代AQUOS zeroより明確化した。対するAQUOS sense3、sense3 plusは、歴代最高とするコストパフォーマンスを打ち出している。
関連記事
- “何となくハイエンド”は終わり 分離プラン時代に投入する「AQUOS zero2」「AQUOS sense3」の狙い
シャープが新フラグシップスマホ「AQUOS zero2」を発表。ディスプレイの駆動速度や本体の軽さにこだわり、ゲーマーを強く意識した。より幅広いユーザーに向けた「AQUOS sense3」は、大容量バッテリーや必要十分な機能を特徴に打ち出している。 - シャープが「AQUOS zero2」発表 高速240Hz駆動に対応した新有機ELを搭載
シャープが新たなフラグシップスマホ「AQUOS zero2」を今冬に発売する。AQUOS zeroの4倍となる、毎秒240回(240Hz)の高速表示が可能になり、ゲームをより快適にプレイできるという。スマートフォンAQUOSでは初となる、ディスプレイ内蔵の指紋センサーも採用した。 - シャープの新ミッドレンジ「AQUOS sense3」「AQUOS sense3 plus」登場 デュアルカメラや4000mAhバッテリー搭載
シャープが9月25日、ミッドレンジスマホの新機種として「AQUOS sense3」と「AQUOS sense3 plus」を発表。AQUOS sense3は2019年秋以降、AQUOS sense3 plusは2019年冬以降に発売する。スマートフォンAQUOSで最大容量をうたう、4000mAhのバッテリーを搭載している。 - “没頭する人”に向けて追求した軽量化 有機ELはシャープ流にアレンジ 開発陣に聞く「AQUOS zero」
シャープの「AQUOS zero」は、同社製のスマートフォンとして初めて有機ELを採用したモデル。なぜこのタイミングで有機ELの採用に踏み切ったのか。キーワードは「軽量化」と「没頭」だ。 - シャープはなぜ有機ELスマホを投入するのか? “攻撃的”「AQUOS zero」の狙い
シャープがスマートフォンAQUOSの新製品「AQUOS zero」を2018年冬に投入する。最大の特徴は、シャープのスマートフォンとして初めて有機ELディスプレイを搭載したこと。IGZOディスプレイを搭載した従来機種とは何が違うのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.