中古端末の不安解消へ 「リユースモバイルガイドライン」改定、事業者認証制度も
リユースモバイルガイドライン検討会が、携帯電話の買い取りに関する自主基準「リユースモバイルガイドライン」を改正。バッテリー状態表示の推奨、ネットワーク利用制限に対する保証の推奨などを追加した。安心できる中古業者であることを証明する「リユースモバイル事業者認証制度」も始める。
リユースモバイルガイドライン検討会が、携帯電話の買い取りに関する自主基準「リユースモバイルガイドライン」を改正した。同ガイドラインは、中古携帯の格付け基準や中古端末のデータ処理方法を規定しており、中古携帯に対するユーザーの不安を払拭(ふっしょく)することを目的としている。同検討会は、中古端末業者14社(2019年11月時点)が参画しているリユースモバイル・ジャパン(RMJ)と、携帯端末登録修理評議会が2018年に立ち上げた。
今回、2019年10月1日から施行された改正電気通信事業法の内容を受け、ガイドラインを改定した。
新ガイドラインではバッテリー状態の表示、赤ロムへの保証を推奨
改定したポイントは主に4つ。1つが、バッテリー状態の確認と評価結果の表示を推奨すること。これは、中古端末を利用したくないと考える理由で、「バッテリーの持ちが悪そう」と答えたユーザーがいまだに多いため。iPhoneやAndroid端末が備えている、バッテリーの状態を確認する機能を使い、その性能を販売時に表示することを推奨する。
2つ目が、ネットワーク利用制限に対する保証を推奨すること。以前使っていたユーザーが分割払いを踏み倒す(債務不履行になる)と、端末に制限がかかってしまうため、中古端末として購入しても通信できなくなる。通称「赤ロム」と呼ばれる状態だ。改正ガイドラインでは、購入した端末が赤ロムだった場合、動作保証とは別に保証を付けることを推奨する。
3つ目が、リファービッシュ品(メーカー整備済製品)の概要を解説し、メーカーによる保証の確認、表示を推奨すること。国内でも、MVNOを中心にリファービッシュ品を取り扱う事業者が増えているが、その定義がユーザーにしっかり伝わっていない恐れもある。そこで、中古端末業者がリファービッシュ品を扱う場合、技適マークの有無を確認すること、メーカーや認定修理業者が整備したことや保証内容を明示することを推奨する。
4つ目が、中古端末を評価する際に、事業者間取引に11段階の基準を策定すること。ガイドラインでは中古端末の格付けを「S」「A」「B」「C」「J」の5段階に定めているが、仲介事業者や修理事業者との取引は、現物確認なしで大量に行うため、より詳細な外装評価基準が必要と判断。11段階の評価基準を設けた。リユースモバイル関連ガイドライン検討会座長の粟津浜一氏は「RMJ、仲介事業者、修理事業者で格付けの基準が違うと、トラブルが起こる可能性がある」とも話す。
現在、キャリアが買い取った中古端末は、仲介事業者を経由して国内外へ流通しているが、そのうち「約30%が海外市場へ流れているといわれている」と粟津氏。改定したガイドラインを仲介事業者に追加適用し、RMJと同じ基準で格付けを行うことで、国内市場に中古端末が流通することを粟津氏は期待する。
仲介事業者が国内に中古端末を流通させるメリットについて、RMJで端末の格付けを担当する、日本テレホン取締役の有馬知英氏は「日本ではSIMロック即時解除が求められており、ロックのありなしで3000円~1万円以上の差が出る。中古でもロック解除すべきという方針があるので、国内に売っても収支が合うと考えている」と答えた。より価値の高いSIMロック解除済み端末の買い取りが増えれば、国内に流通させるメリットが大きくなるというわけだ。
リユースモバイル事業者認証制度を開始
RMJは、ユーザーがより安心して、安全な中古端末を購入、売却できるよう、「リユースモバイル事業者認証制度」を開始する。この制度では、中古端末事業者がリユースモバイルガイドラインを順守しているか、経営状況や社内統制に問題がないかを審査。審査は本社、直営店、代表FC店それぞれで行う。
公正、中立の立場から審査すべく、総務省の研究会に参加している有識者を審査委員会に起用し、総務省がオブザーバーを務める。審査は有償で行い、有効期限は2年。
認証された事業者にはロゴマークが送られ、店頭や広告などで使用することで、安心できる事業者であることを訴求できる。ユーザーにとっては、より安心して中古端末の売買ができる店鋪であることが分かる。
バッテリーや動作に対する不安をどう解消するか
粟津氏は直近の中古端末市場についても言及。2019年3月時点での、RMJの会員店舗数、年間の売り上げや販売数は前年比で伸びており、中古市場の成長ぶりがうかがえる。総務省が2018年度に実施した調査によると、前年度比で、中古端末の利用経験のある人は3.1%増加し、利用意向のあるユーザーは30%に迫った。また下取り経験のある人は0.4%増加した。
同じ調査で、中古端末を買う理由として「端末を安く買える」ことが上位に挙がっており、分離プランの義務化で端末割引が抑えられることにより、中古市場の活性化が期待される。
一方で、「バッテリーの持ちが悪そう」「きちんと動作するか分からない」「故障時の保証がなさそう」という、中古端末に対する不安の声も同調査では多く挙がっている。ガイドラインの改正や認定制度により、こうした不安をどれだけ払拭(ふっしょく)できるかが注目される。
関連記事
中古携帯電話業者が「買い取り・販売ガイドライン」を策定 その背景は?
中古携帯電話業者と携帯電話修理業者の有志が、中古携帯電話の買い取りや販売に関わるガイドライン(自主基準)を策定した。その背景には何があるのだろうか。「大手キャリアの下取り価格を疑問視している」――中古携帯の業界団体「RMJ」が誕生
中古携帯の普及を目指す業界団体「リユースモバイル・ジャパン(RMJ)」が誕生。中古携帯のニーズは上がっているが、「行政への情報発信ができていない」「一般ユーザーの認知拡大が進んでいない」などの課題が残っている。こうした課題を解決するのが狙い。中古端末の「SIMロック解除」 なぜauとソフトバンクは「来店」のみ?
大手キャリアが中古端末や他者から譲り受けた端末の「SIMロック解除」に応じ始めました。しかし、Webでの手続きが可能なのはNTTドコモだけ。auとソフトバンク/Y!mobileは来店手続きのみ受け付けています。なぜ、このような違いが出るのでしょうか……?中古端末でもWebから手続き可能に――ドコモが「SIMロック解除」条件を一部変更 2月20日から
総務省の研究会資料から明らかとなった、NTTドコモの「SIMロック解除」条件の緩和。その実施期日が2月20日に決まった。端末購入者(契約者)以外でもSIMロック解除できるようになるが、詳細な条件や対象機種はまだ公開されていない。中古端末意識調査 男性の半数が端末を売ることへ「抵抗なし」
MMD研究所は、12月13日に「2018年中古端末に関する意識調査」の結果を発表した。男性の半数以上が端末を売ること、3割以上が買うことに「抵抗がない」と回答。中古端末への抵抗の理由上位は「バッテリーの持ちが心配」「誰が持っていたかわからない」「性能の劣化が心配」となった。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.