「大手キャリアの下取り価格を疑問視している」――中古携帯の業界団体「RMJ」が誕生
中古携帯の普及を目指す業界団体「リユースモバイル・ジャパン(RMJ)」が誕生。中古携帯のニーズは上がっているが、「行政への情報発信ができていない」「一般ユーザーの認知拡大が進んでいない」などの課題が残っている。こうした課題を解決するのが狙い。
携帯市場、ゲオ、TSUTAYA、ブックオフコーポレーション、エコケー、日本テレホン、ネオリア、パシフィックネットの8社が発起人となり、中古携帯の普及を目指す業界団体「リユースモバイル・ジャパン(RMJ)」を3月14日に設立した。携帯市場の代表取締役 粟津浜一氏が理事長を務める。中古携帯事業の認知向上を目指す啓もう活動、中古携帯に関する関連省庁やMNO(キャリア)、MVNOとの連携、データ管理・不正端末流通防止等に関するガイドライン策定などを行う。
高まる中古携帯へのニーズ
理事長の粟津氏は、中古携帯のニーズが増していること、市場規模も成長していること、総務省がMVNO政策を推進する一環で中古携帯が注目されたことなどを、RMJ設立の背景として説明する。
中古携帯のニーズについて、粟津氏は「格安SIMとセットで、または2台目として中古スマートフォンを使うケースが増えている。2台目としてWi-Fiでインターネットをしたり、ゲーム、カメラ、音楽などの機能を(単体で)使ったりすることが増えている」と説明する。キャリアが販売するスマートフォンや、MVNO・メーカーが販売するSIMロックフリースマホだと、「端末価格が高い、2年縛りなどのデメリットがあるが、中古なら一括で安く、2年縛りがない。自分の好きなタイミングで買える」という点を中古携帯のメリットに挙げる。
ガラケー(従来型のケータイ)も、中古ショップなら豊富なラインアップをそろえていることを粟津氏は強調する。「キャリアショップでは、ガラケーは数機種に限られているので、私たちのお店にガラケーを求めて来る方が多い。約3000万のガラケーユーザーにとって、われわれのお店が駆け込み寺になっている」(同氏)。
MM総研の予測では、2018年度までに中古携帯の市場は大きく伸びることが発表されている。「日本国内にはいろいろなマーケットがあるが、10年間にわたり継続的に成長を続ける市場はなかなかない」と粟津氏。総務省のタスクフォースや公正取引委員会の提言なども、中古携帯の成長を後押しをするとしている。
中古携帯市場の課題
一方で粟津氏は、中古携帯には多くの課題があると指摘する。1つは、各省庁と中古携帯事業者の接点がないために、行政への情報発信が不足していること。省庁も中古マーケットについての情報を求めているが、どこに聞くべきかが分からない状況となっている。
2つ目が、中古端末の流通が不足していること。古い携帯が貴重な資源であるというユーザーの認識が薄く、買い取りに出すという行為も定着していない。また個人情報の塊である携帯を販売することを不安視する声もある。
「品質が悪い端末を流通させる、ネットワーク制限のかかっている端末を海外に出している事業者がいるために、消費者の心証が悪い」(粟津氏)という問題もある。大手キャリアは中古業者よりも高く端末(主にiPhone)を買い取っていることも問題に挙げ、買い取った端末が国内で流通していない(といわれている)ことも、流通不足の一因となっている。
これらの課題を解決するために、中古業界に携わる企業が集結し、RMJが誕生した。「各社と情報交換をする中で、1社ではなかなか課題を解決できないという悩みを持っていた。皆でやった方が情報解決になるのでは」と粟津氏は振り返る。RMJでは、行政と継続的に意見交換を行っていくほか、4月から加盟8社が取り扱うiPhoneやAndroid端末の「平均買い取り価格」を、公式サイトで毎月公表していく。ただ、ユーザー目線では平均値ではなく、各事業者の買い取り価格を一覧で公表してくれた方が利便性が高いと思うが、表示方法については「検討したい」(粟津氏)とのことだった。
大手キャリアの下取り価格はなぜ高い?
粟津氏が問題視する、大手キャリアの方が中古事業者よりも高く端末を買い取っている点については、iPhoneを例に出して説明。特にiPhone 5sと6で、大手キャリアと中古事業者の間で大きな差が生じている。iPhone 5sの買い取り価格は大手3キャリアが1万5000円前後だが、RMJの平均値は6000円強。iPhone 6の買い取り価格は大手3キャリアが2万円台前半だが、RMJの平均値は1万2000円強。「なぜこれだけのギャップがあるのか、非常に疑問を感じている。われわれの販売金額相当がキャリアの下取り価格になっている。(関係省庁やキャリアと)意見交換を行っていきたい」(粟津氏)
今回、RMJに加盟したのは8社だが、全ての中古携帯事業者が加盟したわけではない。大手でいうと、例えばドスパラやソフマップなどは加わっていない。「志が一致した企業と一緒にやっていきたい」とのことで、加盟企業の拡大も期待される。
既に中古携帯を買ったり、販売したりしているユーザーにとって、RMJの設立で「すぐに何かが変わる」わけではないだろう。中古携帯の認知拡大や健全なサービス提供が狙いであるため、長い目で見て、中古携帯市場の成長に貢献する動きが求められる。
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