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ロボットが自分で荷物を運ぶ エレベーターも呼ぶ――Wireless City Planningが実証実験

総務省からの委託を受けて、ソフトバンク子会社のWireless City Planningが「自律走行ロボットエレベーター連携実証事業」を行っている。先日、報道関係者を対象にデモンストレーションが行われたので、その模様をお伝えする。

 Wireless City Planning(WCP)は1月8日、総務省から受託して進めている「自律走行ロボットエレベーター連携実証事業」のデモンストレーションを都内のビルで実施した。


事業の概要

 この事業では、LTE、Wi-Fi、LPWA(※1)など複数の無線通信規格に対応し、複数のカメラやセンサーを備える自律走行ロボットを用いて、ビルの監視を行ったり荷物を運搬したりする実験が行っている。自立走行ロボットは、WCPの親会社であるソフトバンクが法人向けに販売している「Cuboidくん)を利用。ロボット自体の制御はインターネット上のサーバを介して行っている。

(※1)「省電力・広範囲通信」の略

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Cuboidくん(巡回と見守りバージョン)

Cuboidくん(荷物運搬バージョン)

 ロボットとエレベーターとの連携は、WCPがビル内に設置設置したローカルサーバが三菱電機ビルテクノサービス(※2)のインタフェース装置を制御することで実現している。

 Cuboidくんがエレベーターの前に来ると、エレベーターが呼び出される。エレベーターが到着すると乗り込み、指定の階へと移動。ドアが開くとエレベーターを降りてドアをクローズ。その後、目的地まで移動する――この一連の動きが全自動で行われる。

(※2)実証事業のパートナーで、エレベーターの製造元である三菱電機の子会社。三菱電機製エレベーターの保守・管理を担当している


実証システムの概要

 今回のデモンストレーションでは「巡回と見守り」「荷物運搬」の2つのシーンが用意された。

 巡回と見守りのシーンでは、あらかじめ指定したポイントにCuboidくんが立ち寄り、そこに人がいるかどうかを検知し、履歴を残していく。人感センサーはイスラエルのVayyar Imaging製の「vCubeJP」を用いており、呼吸を始めとする動きで人を検知する仕組みを取っている。

 この人感センサー付きCuboidくんをエレベーター制御と組み合わせれば、複数階ある介護施設で人を見守るといった使い方もできるという。


今回のデモンストレーションでは、同一フロア内の7箇所を定点巡回するように設定された

人がいることを検知した場所は、緑のドットで表される。過去の履歴も取得可能だ

 荷物運搬のシーンでは、地下3階で待機しているCuboidくんに荷物を載せた後、地上2階までそれを運ぶように指示を与え、エレベーターの呼び出しや移動階の指示、ドアの開閉制御などを行った。

 エレベーター前に到着すると、ローカルサーバを介してエレベーターを呼び出す。エレベーターの到着を確認すると、自動で乗り込む。乗り込むまで、ドアは開けたままとなる。


荷物を置いて……

タブレット(Webベースのインタフェース)で行き先を選択すると……

自動でエレベーターへと向かい……

エレベーターを待ち……

乗り込む!

 乗り込むと移動先の階数を指定してドアを閉める。指定階に到着したら、自動でエレベーターを降りる。エレベーターのドアはすぐに閉まるわけではなく、確実に降りたことを確認してから閉まるようになっている。

 その後、Cuboidくんは目的地まで向かい荷物を届ける。通り道に人がいる場合は、音声を流して道を空けるように促すようになっている。

 届け先まで荷物を持ってくると、音声などでその旨を伝える。届け先の人が荷物を受け取り、Cuboidくんの確認ボタンを押すと、Cuboidくんは地下3階の基地まで来た道を戻る。


エレベーターから降りて……

エレベーターを閉めつつ目的地に向かい始め……

目的地まで荷物を届けてくれる

先述の巡回・見守りシナリオもそうだが、

 今回デモンストレーションされた内容については、あくまで「実証」目的であって、具体的な商用化の予定は今の所ないという。

 2020年春以降に日本でも5G(第5世代移動通信システム)が商用化される。その特徴の1つである「超多接続」が実用化される頃には、もっと具体的かつ現実的なソリューションとして巡回や見守り、荷物運搬を自動で行うロボットが出てくることを期待したい。

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