ドコモショップの「一部サポート有料化」 販売現場への影響は?:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(1/2 ページ)
NTTドコモが2019年12月から初期設定サポートの一部を有償化しました。販売現場にはどのような影響が出ているのか、量販店とドコモショップの店員から話しを聞きました。
2019年10月末、NTTドコモが「ドコモショップでの初期設定サポートの一部有料化」を打ち出しました。
発表から数日間、SNSでは「アカウントの設定など面倒事は多いし、有料化するのは正しい判断だ」という肯定的な意見もあれば、「格安SIMよりも高い通信料を支払っているのにサポートを有料化するのはおかしい」という否定的な意見もありました。
ケータイ(フィーチャーフォン)の初期設定は、「電話帳の移行」「メールの初期設定」といった比較的簡単かつ時間を取られないものが中心です。それに対し、スマートフォンの初期設定は、ユーザーのリテラシー(知識)にもよりますが、「アカウント取得」「アプリのダウンロードと設定」など、場合によっては簡単ではなく、かつ時間を取られるものが多いです。
スマホの初期設定サポートは、店舗(店員)の業務効率を悪化させる要素の1つで、手続きまでの待ち時間を増やす一因にもなっています。ケータイ時代から端末ラインアップがスマホ主流になるまで携帯電話販売店の現場にいた筆者としては、「携帯電話の販売につながらないサポートは有料化するべき」という意見にも一理あると思っています。
もちろん、これはあくまでも筆者が「元販売員」として思うことであり、今現在販売現場に立つスタッフが同じ考えだとは限りません。
「初期設定の有料化」で、ドコモショップを含む販売現場に何か変化はあったのでしょうか。少し前置きが長くなりましたが、今回は複数の店舗の現役スタッフに話を聞いてみます。
量販店スタッフ目線では「メリットが大きい」
まず、東京都内にある量販店の旗艦店で、ドコモ携帯電話の販売に携わるスタッフに話を聞いてみました。
量販店の旗艦店では、1カ月間におおむね数百~数千台の携帯電話が売れます。一方、量販店は原則としてキャリアショップの機能は持たないため、いわゆる「アフターサービス」はほとんど行われていません。ごく一部、キャリアショップ機能を備える店舗や、「料金の支払い」「プラン変更」「故障修理」のみ受け付ける窓口を備える店舗もありますが、ユーザーのほとんどは「機種購入」を目当てにやってきます。
そんな店舗で働くスタッフに、初期設定の有料化について尋ねた所、こんな答えが返ってきました。
(キャリアショップ以外で購入した端末の)初期サポートの有料化を理由として、(スマホを)買わないお客さまが増えたということはないです。
さらに、その理由を聞いてみると、こう言います。
元々、量販店はショップよりも「頭金」が安価な設定です。もし、私たちの店で買われたお客さまがドコモショップで初期設定を(有料で)お願いしても、そのショップで端末を買うよりも総額では安くなります。
自分に限らず、他のスタッフも近隣のショップとの価格差は把握していますから、「有料でサポートを受けたとしても、総額では安くなります」と説明すれば、お客さまは納得してくださるので、影響が出ていないのだと思います。
さらに、こうも言います。
スマートフォンの登場初期から、私たちの店舗では初期設定やデータ移行の有料サービスを独自に実施しています。
ドコモの取り組みのおかげで、今までは「タダでやってもらえる」と思われていたサービス(の提供)がどれだけ大変で、だからこそ(ドコモショップでも)有料になったのだと説明しやすくなりました。
私たちの店舗の有料サービスを使うお客さまも増えて、店舗目線では助かってもいます。
筆者は日常的にいくつかの店舗を巡回して、記事のネタになりそうな話を聞いて回っています。その際に端末価格もチェックしていますが、ドコモショップと比べると家電量販店の方が3000~5000円、場合によっては1万円ほど「頭金」を安く設定しています。
ドコモショップにおける初期設定サポートの手数料は3000円なので、近隣の競合店との差額さえ分かっていれば、ユーザー視点でも「得」であるとアピールはできます。
こんな意見も聞けました。
ドコモショップでの初期設定が有料化したことを知らず、購入後にショップへ行って「初期設定が有料」と案内されたお客さまがいました。
そのお客さまが(購入元である)当店に「タダで設定をしろ」とクレームになったこともありましたが、販売価格の違いをご説明することでご納得いただけました。
初期設定費用を「頭金」に含んで販売しているかいないかの違いは、量販店とドコモショップの価格差につながっている、という言い方ができるかもしれません。
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