ソニーモバイルとシャープの5G戦略を読み解く スマホは共通点が多いが、法人向けに違い:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
ソニーモバイルやシャープが、相次いで5G対応スマートフォンやルーターを発表した。どちらもスマートフォンは、従来以上に写真や動画といったビジュアルコミュニケーションを強化したのが特徴だ。一方で、ミリ波対応の法人端末は方向性が分かれた。
大容量の8K動画と5Gを掛け合わせたシャープの「AQUOS R5G」
これに対し、シャープは「AQUOS R5G」で、全面的に8K動画を打ち出した。同社の信事業本部長の中野吉朗氏は、「8Kと5Gを融合させ、簡単に撮影、編集、共有ができるエコシステムの構築に取り組んでいる」と語る。その第1弾として送り出すAQUOS R5Gは、超広角、広角、望遠のトリプルカメラを搭載した。特徴的なのが、一般的なスマートフォンでは二の次になりがちな、19mmの超広角カメラが4800万画素で、8K動画の撮影に使えることだ。
8Kの動画は、HDの16枚分に相当するため、データのサイズが非常に大きくなる。そのデータ量は1分間で数百MBに及ぶため、4Gの環境では扱いづらい。先に発表されたサムスン電子の「Galaxy S20」シリーズも8K動画の撮影に対応していたが、この解像度になると5Gの必要性が増してくる。メモリを12GB、ストレージを256GBと、大容量の映像を扱うため、ベースとなるスペックも先代の「AQUOS R3」から大幅に向上させた。
一方でディスプレイはクアッドHD+(1440×3168ピクセル)で、8Kの動画を撮ってもそのままの解像度では再生できない。そこでシャープは、「フォーカス再生」機能を搭載。動画の中に登場する人物を検出し、自動でズームすることで高精細な映像を生かせるようにした。取りあえず超広角のカメラで引きの映像を撮っておけば、編集などは考える必要なく、再生する際に、自動で人物に焦点を合わせた映像を楽しめるというわけだ。AQUOS R5Gの開発を率いたシャープの通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長 小林繁氏によると、これは「人間の視覚や認知と同じことをしている」という。
映像やゲームのニーズが高まること受け、ディスプレイ性能も強化した。リフレッシュレートを120Hzに上げ、滑らかさを向上させた一方で、Pro IGZOの特徴を生かしたアイドリングストップを行い、書き換えがないときの消費電力を大幅に低減させている。Pro IGZOディスプレイは10億色で明るさも1000カンデラと性能が高く、環境光に合わせて色彩を調整する「スマートカラーマッチング」にも対応する。
5G時代に合わせたフラグシップモデルを投入するソニーモバイルとシャープだが、Xperia 1 IIとAQUOS R5Gはどちらも、6GHz帯以下の周波数を使うSub-6のみの対応。28GHz帯などのより高い周波数で、帯域幅が広いミリ波の採用は見送った。その理由を、シャープの小林氏は「できないというより、しなかった」と語る。モデムはQualcommの「Snapdragon X55」のため、「対応しようと思えば可能だったが、商品性とのバランスを見て見送った」という。
ソニーモバイルも非対応の理由として、コンシューマー向けという商品特性や、電波環境を挙げていた。開始当初の5Gは、NSA(ノン・スタンドアロン)方式で、スペック的にも4Gの延長線上にある。オマケとして中途半端にミリ波に対応しても、電波がしっかりつかめず、十分な速度が出なければ本末転倒だ。ごく一部の場所に限定されるミリ波に対応し、本体の素材を見直したり、サイズを大型化させたりするよりも、スマートフォンとしての完成度を優先したといえる。
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