シャープが考える“5Gスマホのあるべき姿”とは? 開発陣に聞く「AQUOS R5G」(3/4 ページ)
3キャリアの5Gスマホとしてシャープの「AQUOS R5G」が発売された。背面にはToFカメラを含んだ4眼カメラを搭載し、超広角カメラは動画用として、8Kでの撮影に対応した。このカメラをはじめ、ディスプレイ、パフォーマンスなどの特徴を開発陣に聞いた。
モバイル視聴に特化したディスプレイを目指した
―― 次にディスプレイについてお話を伺えればと思います。
田中氏 5G時代のディスプレイにどういったものが求められるかを、突き詰めて考えました。5Gが世の中に普及したとき、生活スタイルにどういう変化が出てくるのか。まず、数と種類が爆発的に増えることになります。モバイルネットワーク環境がそろうと、Wi-Fiでしかできなかったことを意識せずに外でできるようにもなります。使われる場所の幅も広がる。ただ、どんどんコンテンツを見たり使ったりすると、電池持ちに対する懸念も出てきます。
目指したのは、モバイルでの視聴に最適なディスプレイです。モバイル視聴に特化した最高のディスプレイを作るという思想のもと、商品を検討しました。モバイル性能を考えるとき、省電力性能やパフォーマンスはしっかり押さえておく必要があります。これは、Pro IGZOが得意としているところです。
さまざまな環境で、さまざまな視聴のされ方をするというのは、外的な変化がどんどん増えるとういうことです。この環境を制御する考え方を、新しい視点として盛り込みました。表示するコンテンツの種類や数も増えるので、2つ目のエッセンスとして、コンテンツの制御も加えています。賢く画質をコントロールして、モバイルの視聴に最もふさわしい画質を作るというのが企画のスタートラインになります。
関氏 ファーストスクリーンにふさわしいディスプレイをどう実現するのか。画質と見やすさ、省エネの3要素が重要だと考えました。まず、映画やドラマといったリッチコンテンツを楽しむには、高品位な画質が必須です。モバイル端末ということで、どんな環境でもコンテンツを楽しんでいたけることも重視しました。AQUOS Rシリーズは、明るさにこだわり、AQUOS R3ではPro IGZOを採用して、従来の約2倍の輝度を実現しましたが、今回はそれをさらに持ち上げ、1000カンデラのパネルを搭載しました。アウトドアビューも搭載し、外での見やすさもサポートしています。
Pro IGZOと言っても、要は液晶です。なぜ有機ELではないのかと言われるかもしれませんが、画質と見やすさと省エネのために液晶にしています。明るいディスプレイは、液晶の方が実現しやすい。色の正確性がコントロールしやすく、省エネに関しても、省電力バックライトやアイドリングストップといったものは、全て液晶の技術です。有機ELには有機ELで、発色性やコントラスト、軽さという利点がありますが、バランスを考えた上で今回は液晶を採用しています。
―― 有機ELの強みというと、薄さもでしょうか。
関氏 はい。軽さ、薄さという点では有機ELが強いですね。
―― 環境の応じてというのは、どのようなことをやっているのでしょうか。
関氏 画質に関しては、一定の品位を得られているので、次に手をつけるのはどこかということで搭載したのが、スマートカラーマッチングになります。人間の目は、環境に順応する特性があります。いる場所に目が慣れてしまうんですね。目が慣れると、同じ画面を見たときに、見え方の差が生まれてきます。これまでもバックライトを調整するようなことはしてきましたが、スマートカラーマッチングでは、色味を合わせることをやっています。
色温度が低くなると、目が低い環境に慣れ、黄色っぽい白が白に見えてきます。その状態で画面を見ると、人の顔色が逆に青白っぽく見えてしまう。これを、室内で見たときと同じように補正をかけています。
―― ただ、それが急激だと、不自然にディスプレイの色温度が変わったように見えてしまうことがあります。
関氏 確かに、急激に変わると違和感があります。そのため、変化する時間はごくごくゆっくりにして、30秒ぐらいで変わるようにしています。それによって、違和感がないようにしています。こだわったのは本来見せたい画質で、その画質で常に見ていただくよう調整をしています。
―― 省電力に関しては、どのようなことをやっているのでしょうか。
関氏 絵の内容に応じてバックライトを下げ、そのぶん画像を持ち上げることで、バックライトの電力を落とすことができます。少し前からある技術ですが、1000カンデラのパネルを採用すると無駄も多くなるため、省電力バックライトの採用を決めました。コンテンツによって効果は違ってきますが、アルゴリズムやパラメーターを見直すことで、最適な調整を心掛けています。特にHDRなどのコンテンツにおいては、非常に大きな差が出ます。従来のアルゴリズムだと、表現力が落ちてしまうのですが、HDRエンハンサーで、コンテンツに合わせてトーンカーブとバックライトを制御するようにしました。
ハイスピードIGZOとアイドリングストップも、省電力を実現した技術です。高速表示自体はずっと前からやっていましたが、最近はそのような端末が他社からも出てきています。それはうれしい反面、弊社の120Hzはちょっと違う。一般的な高速表示とは異なり、コンテンツに合わせてリフレッシュレートを1Hzから120Hzの間で制御しています。
関連記事
“5Gにふさわしい”カメラとディスプレイを追求した「AQUOS R5G」 シャープの5G戦略を解説する
シャープが5Gに対応したスマートフォン「AQUOS R5G」と、「5Gモバイルルーター」を今春に発売する。AQUOS R5Gは「8Kワイドカメラ」、ルーターは「5Gのシェア」を特徴に掲げる。2021年度にスマートフォンAQUOSを全て5Gに対応させるという。シャープの5Gスマホ「AQUOS R5G」登場 8Kワイドカメラや6.5型Pro IGZO搭載
シャープが2月17日、5G通信に対応したスマートフォン「AQUOS R5G」を発表した。2020年春の5G商用サービスの開始に合わせて発売される見込み。スマートフォンAQUOSとして初となる8Kワイドカメラを搭載している。広角カメラや望遠カメラも備える。ドコモが「AQUOS R5G」を3月25日に発売 4眼カメラ搭載で8K動画の撮影が可能【写真追加】
ドコモがシャープの5Gスマートフォン「AQUOS R5G」を3月25日に発売する。5Gに対応したことに加え、約6.5型の大型ディスプレイと8Kワイドカメラを搭載している。8Kで撮影した動画から、AIによって人物や動物を自動で認識してズーム再生する「フォーカス再生」機能も用意した。ドコモの5Gスマホ「AQUOS R5G」に乗り換え 契約時の注意点は? 通信速度はどれくらい?
いよいよ3キャリアの5Gサービスが開始した。いち早く5Gを体験すべく、NTTドコモの「AQUOS R5G」を購入した。ここでは購入時の手続きと、短時間ながら試せた5G通信に関するレポートをお届けしたい。ミッドレンジとハイエンドを“再定義” シャープに聞く、2019年秋冬モデルの狙い
シャープは電気通信事業法の改正法「なんとなくハイエンドスマホを選ぶ文化の終焉」と捉え、AQUOS senseシリーズを強化。メーカーの“顔”となるハイエンドスマートフォンにも、従来以上の明確な売りを作った。そんな同社の新戦略と、その下で生み出された各機種の特徴をインタビューで深掘りした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.