シャープが考える“5Gスマホのあるべき姿”とは? 開発陣に聞く「AQUOS R5G」(4/4 ページ)
3キャリアの5Gスマホとしてシャープの「AQUOS R5G」が発売された。背面にはToFカメラを含んだ4眼カメラを搭載し、超広角カメラは動画用として、8Kでの撮影に対応した。このカメラをはじめ、ディスプレイ、パフォーマンスなどの特徴を開発陣に聞いた。
5Gスマホならではの発熱対策
―― パフォーマンス面でのお話もありましたが、最後にここを詳しくお聞かせください。
田邊氏 これまでの取り組みとして、AQUOS Rシリーズでは、初代から性能を出すためには放熱にこだわらなければいけないということで、改善を加えてきました。AQUOS R5Gは新たに5Gに対応するので、改めてどのぐらいの電力を消費するのかの見積もりを行いました。重要なのは4Gか5Gかではなく、実際にどのぐらいのスループットが出ているかです。4Gの場合、規格上も2Gbps弱しか出ませんが、AQUOS R5は、sub-6で4Gbpsまで出すことができます。これは、2GBの映画を計算上、4秒でダウンロードできる速度です。
発生する電力は、通信速度に応じてリニアに上っていきます。1Gbpsでダウンロードするより、4Gbpsでのダウンロードは電力が4倍かかるということです。従来と同じ放熱構造だと、CPUやモデムからの熱の抜け方が十分ではなくなってしまいます。これだと、せっかく5Gに対応しても、温度制限で止まってしまうことになります。そこで、新しい放熱構造に取り組みました。
まず、CPUとGPUをリアカバー側に実装して、その裏側に銅ブロックを置きました。AQUOS Rから脈々と改善してきた放熱構造は、CPUの上にメモリがあり、その上に熱伝導シートを置き、その上に置いた金属板から熱を逃がすというものでした。ただ、この構造だと、いろいろなものを介して、熱が金属板に伝わってしまいます。周辺は樹脂でモールドされているので、熱伝導率が低くなるのも課題でした。そこで今回は、思い切ってCPU、メモリをリアカバー側に実装し、銅ブロックを通じてそのまま熱を逃がすようにしました。これは、スマホ以外の商品での経験からきています。その商品は想定10Wを超える大きなチップだったため、CPUの上から熱を抜く構造ではまったく足りませんでした。
例えば4Wの負荷をかけ続けた場合、内部温度が上がる速度がまったく違います。以前とは、20度以上の差がつきました。これで、CPUの温度が上がり過ぎて、パフォーマンスが制限されることはほぼほぼなくなりました。
ただし、リアカバーに熱源が近づいてしまう問題があり、そこを抑える必要がありました。ここに使ったのが、銅シールドです。CPUの熱がいったん基板に伝わり、銅シールドを通じて全体に広がり、リアカバー全体で放熱するようにしています。
―― Snapdragon Elite Gamingにも対応しています。これはどのようなものなのでしょうか。
渡邉氏 AQUOS zeroシリーズとは違い、ゲームにフォーカスした端末ではありませんが、パフォーマンスを測る指標として、フレームレートにこだわりました。Snapdragon Elite Gamingは、昨年12月にQualcommが大々的に発表したブランドで、AQUOSスマホとしては初の対応になります。Qualcommの提供する、ゲーム体験を向上するための機能にも対応し、コマ落ちのないスムーズな動作や高速なレスポンスが提供されます。
特に意味があったと思っているのは、ゲームスムーザーという機能で、これをメジャーなゲームに対して有効にすると、もとから発生していたカクツキが95%も抑えられます。われわれも確認しましたが、確かにスムーズになっていました。また、AQUOS zero2で搭載した、専用メニューも採用しました。今回は解像度がWQHD+なので、解像度を変えて精細感と動作のどちらを優先するのかを決めることもできます。
取材を終えて:他社にはない特徴が豊富だが、気になる点も
高い機能を持ちながら、親しみやすい端末として誕生したAQUOS Rシリーズは、これで4世代目になった。超広角での撮影や、倍速表示のディスプレイなどは、同シリーズがグローバルメーカーの端末に先駆けていた点だ。AQUOS R5Gでも、8Kワイド動画撮影やフォーカス再生という、他社にない特徴を打ち出すことができた。
親しみやすいハイエンドというポジショニングは変っていないというが、5G対応第1号機ということもあり、性能も大きく進化した格好だ。一方で、液晶を採用したことでベゼルの幅や厚みが、有機ELを採用した他の端末よりやや目立っているのも事実。この点が、ユーザーからどう評価されるのかは気になるポイントといえる。
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